所有権移転登記の費用はいくら?計算方法や司法書士費用の相場を解説!
- 所有権移転登記の費用はいくらかかるの?
- 所有権移転登記費用を安くする方法はある?
- 所有権移転登記はどういうときにするの?
不動産の購入や相続をおこなった場合、所有権移転登記が必要です。
この記事では、所有権移転登記の費用や計算方法を徹底解説します。所有権移転登記が必要な方は必見です。
所有権移転登記に必要な書類や流れも紹介するため、最後までお読みください。
所有権移転登記は不動産の所有者を変えるために必要
所有権移転登記とは、不動産の所有者が変わった際に、登記事項証明書の権利部を書き換える手続きです。所有権移転登記は、法律上の義務ではありません。しかし、登記があることで所有権を第三者に主張する(対抗する)ことができます。
登記事項証明書は、表題部と権利部に分かれています。権利部には所有者の状況を表す「甲区」と抵当権を表す「乙区」があり、所有権移転登記をすることで甲区が書き変わります。
表題部 | 不動産の種類、面積、登記の状態 |
---|---|
権利部(甲区) | 所有者の氏名・住所など、共有者が存在すればそれぞれの持分 |
権利部(乙区) | 住宅ローンなどに伴う抵当権 |
登記については、こちらの記事で詳しく解説しています。
所有権移転登記が必要な理由
2023年2月現在、登記事項証明書の権利部の登記は義務化されていません。義務化されていないからと所有権移転登記の手続きをしないでいると、売主が不動産の所有権を持ったままとなります。
悪意を持った売主が第三者に二重譲渡し、先に登記されてしまうと、登記上の不動産所有者は第三者となります。
不動産登記や民法においては、登記した者が所有権を主張できます。先に購入した場合でも、登記した者に対しては不動産の所有権が主張できなくなります。
第三者に対して所有権を主張するためにも、不動産を取得した後はすみやかな所有権移転登記をするべきといえるでしょう。
所有権移転登記が必要な4つの事例
所有権移転登記は、所有権移転の原因によって費用が変わります。所有権移転登記が必要な事例を4つ紹介します。
- 不動産の売買契約が成立した場合
- 相続した場合
- 生前贈与などで取得した場合
- 財産分与で譲渡・名義変更する場合
1. 不動産の売買契約が成立した場合
不動産の売買契約が成立した場合は、売主と買主が共同で所有権移転登記を行う必要があります。登記のタイミングは「売買契約締結から1カ月後の引き渡し日」が一般的です。
不動産の売買契約が成立した場合は、不動産の引き渡しをするときに司法書士が立ち合い、代理で所有権移転登記まで実施するケースがほとんどです。
2. 相続した場合
不動産を相続した場合も、所有権移転登記が必要です。所有権移転登記をしないことにより、所有者不明の土地が増加する社会問題が発生しました。この問題を解決するため、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。
2024年4月1日からは、不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。申請漏れがあると、過料の罰則が科せられます。相続で不動産を取得した場合は、必ず所有権移転登記をしましょう。
参照:所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し【民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要】|法務省
3. 生前贈与などで取得した場合
両親や祖父母が健在のときに不動産を譲り受ける「生前贈与」のケースでも、所有権移転登記が必要になります。生前贈与では、不動産を贈った両親や祖父母を「贈与者」と呼び、受け取った方を「受贈者」と呼びます。
生前贈与を受けたときは、贈与者が健在の間に所有権移転登記を済ませましょう。所有権移転登記の前に贈与者が亡くなってしまうと、受贈者が不動産の所有者であることが証明できません。
結果、別の親族に遺産が相続され、生前贈与の対象となる不動産が受け取れなくなることもあります。
4. 財産分与で譲渡・名義変更する場合
財産分与で譲渡・名義変更する場合も、所有権移転登記が必要です。元々の持ち分が共有だった場合は「所有権移転登記」ではなく「持分移転登記」となります。
持分移転登記とは、AとBの2名で共有財産を持っていた場合に、A所有部分をBに移転する登記です。持分移転登記をすることで、Bの所有財産が増えることになります。持分移転登記の必要書類や流れは、所有権移転登記と同じです。
所有権移転登記にかかる費用
所有権移転登記は、次の3つの費用がかかります。
- 登録免許税
- 書類収集の手数料・諸経費
- 司法書士報酬
所有権移転登記費用の大部分は、登録免許税です。司法書士報酬は、事務所によって金額が変化します。近い評価額であったとしても、事務所によって差が出る部分です。
1. 登録免許税
所有権移転登記をする際「登録免許税」が課せられます。登録免許税は土地と建物それぞれに課税され、不動産の評価額や取得方法によって納税額が大きく変動するのが特徴です。
登録免許税の計算方法
登録免許税は、取得した不動産の評価額に税率をかけて計算します。不動産の評価額を調べる方法は、次の2種類です。
- 固定資産税の納税通知書を確認する
- 固定資産税評価証明書を取得して確認する
不動産の取得方法に応じた登録免許税率は以下のとおりです。
登録免許税率 | |
---|---|
売買 | 評価額の1,000分の20 |
相続 | 評価額の1,000分の4 |
贈与 | 評価額の1,000分の20 |
令和7年3月31日までに相続による所有権移転登記をする場合、不動産の評価額が100万円以下であれば登録免許税が免除される特例措置があります。
2. 書類収集の手数料・諸経費
所有権移転登記を申請するためには、さまざまな書類が必要です。必要書類の収集にかかる手数料や交通費も、所有権移転登記手続に必要な費用となります。書類収集の手数料や諸経費の相場は、数千円〜20,000円程度です。
登記情報の確認費
所有権移転登記をする前に、依頼時点での登記情報が登記事項証明書の内容と同じか確認する作業が必要となります。登記情報の確認方法は3種類です。引き渡し日当日にも、登記内容に変わりがないか確認します。
- 登記情報提供サービスでの情報閲覧
- 登記事項要約書の取得
- 登記事項証明書の取得
所有権移転登記後は、買主に渡すために登記事項証明書の原本が必要です。各物件につき1通ずつ取得し、買主に渡します。抵当権設定登記をする場合は、抵当権者の分も必要です。
登記事項の閲覧などにかかる費用は、次のとおりです。
必要書類 | 1通あたりの費用 |
---|---|
登記情報提供サービスでの情報閲覧 | 334円 |
登記事項要約書の取得 | 450円 |
登記事項証明書の取得(オンライン申請→窓口受取) | 480円 |
登記事項証明書の取得(オンライン申請→郵送受取) | 500円 |
登記事項証明書の取得(窓口申請→窓口受取) | 600円 |
登記事項証明書の取得費用や種類については、こちらの記事をご覧ください。
住宅用家屋証明書取得費
要件を満たした住宅用の家屋を新築・取得した場合、所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置が受けられます。登録免許税の軽減措置を受ける際に、住宅用家屋証明書が必要です。
取得手数料は、1通につき1,300円程度。市区町村役場により費用は異なります。
郵送通信費・交通費
司法書士に所有権移転登記手続を依頼した場合には、郵送通信費・交通費がかかります。
郵送通信費 | ・不動産仲介業者等とやり取りをする際の電話代やファックス代 ・法務局から書類を受け取る際の郵便代 |
---|---|
交通費 | ・決済場所へ行く際の交通費 ・役所や金融機関で書類を受領する際の交通費 |
3. 司法書士報酬
所有権移転登記を司法書士に依頼した場合、司法書士に支払う報酬が発生します。昔は、手続ごとで報酬額が定められていましたが、現在は自由です。
手続の種類に応じて費用が変わることはもちろん、依頼する事務所によっても費用は変動します。
司法書士報酬の費用相場
日本司法書士会連合会が公表している、所有権移転登記の平均報酬は次のとおりです。
取得方法 | 全国の平均値 |
---|---|
贈与 | 41,236円〜54,505円 |
売買(登記済証がある場合) | 42,999円〜64,090円 |
売買(登記済証を紛失した場合) | 71,997円〜94,197円 |
相続 | 60,667円〜78,326円 |
参照:司法書士の報酬アンケート結果(2018年1月実施)|日本司法書士会連合会
司法書士報酬が変動する2つの理由
司法書士の報酬は、同じ内容の手続きでも値段が変動します。変動する理由は、以下の2つです。
- 不動産評価額
- 工程数
不動産評価額
司法書士報酬は、不動産の評価額に比例します。同じ内容の所有権移転登記手続であっても、評価額が上がるにつれて司法書士報酬も高額になる傾向です。
工程数
相続についての所有権移転登記手続きは、司法書士報酬が高額になる傾向にあります。相続の手続では必要書類が多くなることや手続きが難航するケースが多く、工程数が増えることが原因です。
所有権移転登記の費用相場は44万円〜49万円
所有権移転登記の具体的な費用相場を見てみましょう。土地・建物の評価額が合計2,000万円のときの所有権移転登記の費用相場は、下記のようになっています。
取得方法 | 登録免許税 | 司法書士報酬 | 合計 |
---|---|---|---|
不動産売買 | 400,000円 | 40,000〜80,000円 | 440,000〜480,000円 |
不動産売買(全額住宅ローン) | 480,000円 | 70,000〜100,000円 | 550,000〜580,000円 |
相続 | 80,000円 | 80,000〜120,000円 | 160,000〜200,000円 |
不動産贈与 | 400,000円 | 60,000〜90,000円 | 460,000〜490,000円 |
司法書士報酬を抑える3つの方法
司法書士報酬は高額になりがちです。司法書士報酬を抑えるためにできる方法を3つ紹介します。
- 複数の司法書士事務所に見積もりを依頼する
- できるだけ自分で作業を行う
- 法人・投資用用途の場合は経費として計上する
複数の司法書士事務所に見積もりを依頼する
依頼先を選定する際は、複数の司法書士事務所から見積もりを取るのが基本です。同じ依頼内容でも、事務所によって費用が変動します。複数の見積もりを比較して、安い事務所を探しましょう。
できるだけ自分で作業を行う
大変な手続は司法書士に依頼して簡単な作業はできるだけ自分で作業を行うことで、費用が抑えられます。
自分で作業して失敗した場合でも、フォローするのは司法書士です。司法書士の作業が増えてしまうことから、一部を自分で行うことを嫌がる事務所もあるため注意しましょう。
法人・投資用用途の場合は経費として計上する
法人や投資といった非居住用不動産の場合、所有権移転登記の費用を全額経費として計上できます。経費として計上できるのは、次の費用です。
- 登録免許税
- 司法書士報酬
- 役所や法務局への交通費
- 必要書類の発行手数料
- 書類を取得するための郵送料
自分で住む不動産の所有権移転登記費用は、経費とすることができません。経費にできるのは、非居住用不動産の場合のみである点に注意しましょう。
【パターン別】所有権移転登記の必要書類
所有権移転登記の必要書類は、所有権が移転する原因によって違います。売買契約の成立・贈与、相続の場合それぞれに必要な書類を紹介します。
1. 売買契約の成立・贈与の場合
売買契約や贈与が成立した場合、関係者が揃える書類は以下のとおりです。
売主・贈与者 | 買主・授与者 | 入手場所 | |
---|---|---|---|
不動産登記申請書 | ○ | ○ | 法務局(法務局オンライン) |
売買契約書・贈与契約書 | ○ | ○ | 不動産の所有者 |
登記済権利書 | ○ | × | 不動産の所有者 |
印鑑証明 | ○ | × | 市区町村役場 |
固定資産評価証明書 | ○ | × | 市区町村役場 |
身分証明書 | ○ | ○ | 各自 |
住民票 | × | ○ | 市区町村役場 |
戸籍謄本 | ○ | ○ | 市区町村役場 |
売主と買主の共同申請が必要
売買や贈与により不動産を取得した場合の所有権移転登記は売主・贈与者と買主授与者の共同申請が必要です。売買や贈与の場合、売主や贈与者の合意がなければ、手続きを自分で済ませることは難しいでしょう。
住宅ローンを活用する場合は司法書士への依頼が必須
住宅ローンを申し込むと「抵当権」が設定されます。抵当権とは、月々の返済が滞った場合に住宅を差し押さえて返済に充てられる権利です。
抵当権の設定でミスがあった場合は「無担保融資」となるため、自分で抵当権を設定すると受理されないケースがほとんどです。住宅ローンを活用して不動産を取得する場合は、抵当権設定のため第三者である司法書士に入ってもらうことが必須となります。
2. 相続した場合
相続で不動産を取得する場合、次の書類を揃えます。
必要書類 | 入手する機関 |
---|---|
相続人全員分の戸籍謄本 | 市区町村役場 |
相続人全員分の住民票 | 市区町村役場 |
相続人全員分の印鑑証明 | 市区町村役場 |
固定資産評価証明書 | 市区町村役場 |
遺産分割協議書 | 自分で作成 |
相続関係説明図 | 自分で作成 |
登記原因証明情報 | 市区町村役場 |
遺言書 | あれば |
被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍謄本 | 市区町村役場 |
被相続人の死亡時の住所地を証する住民票除票 | 市区町村役場 |
「被相続人」とは、相続で財産を渡す、亡くなった方のことです。
相続登記については、こちらで詳しく説明しています。
所有権移転登記の申請手順
所有権移転登記の申請手順は、次の流れです。
- 書類の準備
- 法務局へ書類提出
- 登記完了証の取得
1. 書類の準備
所有権移転登記をするためには、最初に必要書類を集めます。作成した申請書は、法務局で事前にチェックしてもらえます。自分自身で所有権移転登記を実施する場合は、事前にチェックしてもらいましょう。
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、2023年2月現在、ほとんどの法務局で法律相談を予約制にしています。不動産登記申請書の確認も、予約相談の扱いです。確実に対応してもらうために、事前に最寄りの法務局へ連絡して予約を取りましょう。
2. 法務局へ書類提出
必要書類が揃ったら、記入した不動産登記申請書と必要書類を法務局に提出します。提出は、郵送でもオンラインでもどちらでも大丈夫です。
書類の提出後、法務局で不動産登記申請書と必要書類の審査が実施されます。書類の不備があった場合、訂正や再提出が指示されることも想定しましょう。手続き完了までの時間が長くなるため、極力ミスがないよう書類を準備しましょう。
3. 登記完了証の取得
審査が終了すると、登記完了証が発行されます。登記完了証の発行により、所有権移転登記が完了します。申請してから完了までは1週間〜2週間程度必要です。
所有権移転登記は司法書士に依頼したほうがスムーズ
売買や贈与による所有権移転登記では、当事者の共同申請が必須です。相続の場合は、所有権移転登記申請を自分ひとりでできますが、遺産分割協議書や相続関係説明図など相続の書類作成や手続きはとても大変です。
司法書士に所有権移転登記の手続代行を依頼することで、書類作成を含めて、書類収集から申請までを一気に任せられます。申請にかかる時間を考えると、所有権移転登記は司法書士に依頼したほうがスムーズに進むでしょう。
まとめ
所有権移転登記は自分でもできる反面、必要書類の作成や収集が大変でもあります。司法書士に所有権移転登記を依頼すると、大変な作業を代行してくれるためスムーズに完了します。
日常で司法書士に何かを依頼することはほとんどないため、候補先を絞り込むことさえ難しいと感じる場合があるでしょう。弊社運営の「比較ビズ」なら、必要事項を入力するだけで、司法書士事務所を簡単に探せます。複数の事務所に一括で無料相談をすることも可能です。
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1984年京都市生まれ。不動産・相続・会社の「登記」に必要な手続きを代理する専門家であり、若手ならではのフットワークの軽さと様々な職業経験で培った対応力を持つ法務大臣認定司法書士。自身が法律知識ゼロで資格学習を開始した経験から法律の適用や用語の難しさを理解しており、平易でわかりやすい説明を心がけており評価を得ている。
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所有権移転登記自体は手間と時間をかけるつもりがありさえすれば、申請自体は誰でも行うことができます。ただ、不動産の購入・売却や抵当権設定等の場合はご自身以外の相手方当事者が存在する為、原則として司法書士の介入が不可欠となります。
また、相続人の数が多い相続や不動産の贈与の登記の時なども定型的でない複雑な書類の作成が必要となることも多く、非常に難しい登記になる場合が多々あります。
不動産の所有権となるとその価値はある程度高額になるものです。司法書士に依頼するというのは、その権利を「将来にわたって適切にトラブルを発生させずに保有する」「安心の為やいざという時のために保険に加入する」というイメージだとお考えください。
「費用の節約」「自身で行ってみたいという好奇心」以外にもこういった観点からも専門家に依頼するかどうかの判断材料としていただければと思います。
もちろん費用が安いに越したことはありませんので、複数の司法書士事務所から見積もりをお願いするということはどちらにしても依頼しておいたほうが良いでしょう。