ソフトウェア開発契約書について！書き方の注意点やテンプレートなど

ソフトウェア開発契約書の役割や目的

ソフトウェア開発契約書とは、厳密に言えば、ソフトウェア開発を業務委託するための契約書です。その契約書が必要になるのは、ソフトウェアのユーザー（委託者）がベンダー（受託者）に業務委託を行う際です。

ソフトウェア開発に限りませんが、業務委託契約を結ぶ場合は、「準委任契約」と「請負契約」のどちらの性質を持つかに注意しなければなりません。

準委任契約とは、民法では事務処理を委託する性質があるとされており、一方、請負契約では、成果物の完成を委託するという性質を持つと規定されています。ソフトウェア開発の場合も、委託する内容に応じて、この2つの契約のどちらの性質を有するかが変わる場合もあるので気をつけましょう。

ソフトウェア開発契約書の書き方

ソフトウェア開発委託契約では、そのソフトウェアの仕様から、完成したソフトウェアに不具合が発生した時の対応方法まで、さまざまな項目について細かく取り決めて契約を締結します。

なぜ記載項目が多岐にわたるかというと、ソフトウェアは物理的な製品のようにはっきりとした形がないためです。そのため、ユーザーとベンダーの間で認識のズレも生じやすく、それを防ぐためには、契約書でさまざまな項目について細かく取り決めておき、誤解のないようにする必要があります。ソフトウェア開発契約書を書く際は、特に次のポイントに注意しましょう。

仕様変更の際の取り扱いについて

ソフトウェア開発では、仕様の変更をめぐるトラブルが少なくありません。特に、アジャイル型の開発では、開発中に仕様や設計の変更があることが前提ですので、どのような変更が生じるかを想定して項目を記載する必要があります。

たとえば「修正依頼が発生した時に費用負担をどのようにするのか」など、報酬については対応方法を特に細かく決めておきましょう。

報酬が支払われる時期について

ソフトウェア開発では、それが完成した時なのか、それとも労務完了後なのかで報酬支払いの時期が分かれます。前者は文字通り、委託していたソフトウェアの開発が完了して初めて報酬が支払われるのですが、後者の場合はソフトウェアが未完成でも、労務の提供は完了している場合に報酬の支払い義務が生じます。

どちらのタイミングで報酬の支払いが行われるかを明確にしておかないと、委託したソフトウェアができていないのに報酬だけ支払わなければならないような事態に陥ることもあるので、注意が必要です。

ソフトウェア開発の最中にトラブルが発生して、予定通り作業が進まない場合は、発注側とベンダー側で協力してトラブルを解決しなければなりません。当然ながら、ソフトウェア開発の委託は、その開発を行うベンダー側だけでなく、発注する側も協力して互いに連携する必要があります。

ベンダーはもちろんトラブルの原因を追求し、どのように対処するべきか全力を尽くしますが、発注側にも可能な限り、ベンダーに協力する義務が生じます。ですので、契約書には義務を果たせない場合についての責任を明確にしておきましょう。損害賠償についてなど、明示しておくのがポイントです。

ソフトウェア開発契約書のテンプレートを提供するサイト

ソフトウェア開発契約書の記載項目は多岐にわたるため、すべて独力で作成するのは手間も時間もかかります。そんな時に役立つのがネット上で手に入るテンプレートです。以下に、ソフトウェア開発契約書のテンプレートが無料でダウンロードできるサイトを2つ紹介します。

ただし、注意したいのはテンプレートをそのまま使用しないことです。ネット上で公開されるテンプレートはあくまで一般的な契約で用いられることを想定しているため、個別の契約内容とは合わない場合もあるのです。

また、契約交渉では自社になるべく有利な内容で合意を目指したいところですので、テンプレートの項目をそのまま使うのはおすすめしません。一つ一つの項目を検討し、本当に自社の利益になる項目なのか、思わぬ不利益が生じるようなリスクはないかなど、テンプレートの利用時には細部まで確認してください。

bizocean

こちらは、さまざまな文書のテンプレートを無料で提供しているサイトです。ソフトウェア開発委託契約書のテンプレートも数種類あり、民法改正にも対応しています。ダウンロードするには会員登録が条件ですが、無料ですので登録しておいて損はないでしょう。

参照：bizoceanサイト

テンプレートBANK

こちらは帳票メーカーが運営するテンプレートのサイトです。ソフトウェア開発契約書やその他さまざまなビジネス文書、また、イラストや写真などの素材をダウンロードできます。

参照：テンプレートBANKサイト

ソフトウェア開発契約書の注意点

ソフトウェア開発の契約では、「基本契約書」「個別契約書」という2種類の契約書が存在します。基本契約書とは、一般的に業務委託の範囲や責任の分担について、また、成果物の権利がどちらに帰属するのかなどといった基本事項を定めた契約書です。

一方、個別契約書とは、案件ごとに細かい条件を定めた内容となります。つまり、開発の状況に応じて変動することのある金額については、個別契約書で定めるのが一般的です。

ソフトウェア開発は、その開始から成果物の納品まで仕様の変更が起こるのが普通であり、最初の段階でいくらかかるか、見通しが立ちにくいのが特徴です。

そのため、最初から金額を細かく決定しても、後で変更せざるを得ないケースが多いため、基本契約書では契約期間や責任の分担など基本的なことに留めましょう。金額については、個別契約書で決める方がよいです。

なお、上記の契約書2種のうち、どちらが優先されるというものではありません。双方の内容に矛盾が生じないように注意しましょう。もしくは、矛盾が生じたときにどちらが優先されるかを決める条項を定めておくとよいでしょう。

まとめ

ソフトウェア開発契約書は記載内容が多岐にわたり、作成するには時間も手間もかかります。しかも、契約書を作成すれば安心というわけではなく、契約書の内容に沿って委託した業務がきっちり行われなければなりません。そうでなければ、トラブルが発生した時にそれを解決する契約書としての役目を果たさなくなってしまいます。

ですので、ソフトウェア開発契約書を作成するときは、テンプレートをそのまま使うのではなく、業務の規模や実態に即した内容を心がけ、実際その通りに業務ができることを想定して作成してください。

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