請書(うけしょ)・注文請書とは?収入印紙ルール・契約書との違い・書き方を解説!
BtoB取引や、官公庁と取引のある企業であれば、請書・注文請書は一般的な文書として馴染み深いものかもしれません。しかし、請書にはどのような役割があるのか?そもそも請書とはどのような書類なのか?明確に答えられる方は多くはないはず。契約書と同じように収入印紙・消印が必要なのか?請書への認識が曖昧であれば、迷ってしまうこともあるでしょう。そこで本記事では、意外に知らない請書・注文請書の基礎知識を徹底解説!迷ってしまいがちな収入印紙のルール、契約書と請書はなにが違うのか、トラブルを防止するための請書の書き方も紹介していきます。
請書(うけしょ)・注文請書とは
請書(うけしょ)とは、仕事を依頼したい取引先の求めに対し、求められた仕事を請け負いますという意思表示をするため、受注側が作成し依頼側に渡す文書のことです。
注文を請け負うことから、文字通り「注文請書」と呼ばれる場合もありますが、請書は発注請書・同意書・確認書と表記されることもあり、正式な表記名が定められているわけではありません。
請書は注文書と対の関係
注文を請け負うことを確約する文書である請書は、発注者からの注文が確約されない限り、単独で作成・発行されることはありません。
つまり請書は、発注者が注文を確約するために発行する文書「注文書・発注書」に対する返答という対の関係性を持ち、発行した請書が依頼側に渡ることによって取引契約を成立させるという役割を担っています。
現金・クレジットカードなどでの決済および、商品・サービスの引渡しで完結するBtoC取引ではなく、締め払い・納品後の後払いなど、主に組織間の信用取り引きで使われるのが請書の特徴となります。
リース契約の際などにリース会社から注文書・請書が送られてくるため、請書のことを漠然とながらも理解している店舗担当者の方も多いでしょう。
請書までの取引の流れ
売買取引をはじめとする各種取引契約は、本来、口約束でも成立します。ただし、その場で商品の引渡しと決済が完結する店舗取引と異なり、信用取り引きでは契約が完了するまでにさまざまなステップを踏む必要があります。
その過程で言った・言わないなどのトラブルを避けるため、交渉内容を証拠として文書に残しておくことが一般的であり、その文書のひとつとして挙げられるのが請書というわけです。
通常の取引であれば、発注者からの問い合わせに対して見積書のやり取りを何度か行い、合意した内容にしたがって発注者が注文書を、それを受けて受注者が請書を発行します。その後、契約が完了するまで納品書・請求書・検収書などのやり取りも行われます。
請書には収入印紙が必要?
ここで多くの企業担当者が迷ってしまうのが、請書に収入印紙を貼る必要があるのか?ということでしょう。なぜなら、一般的な「契約書」と異なり、請書には契約という文言が記載されることがほとんどないからです。
しかし、上述したように、注文書に対して発行された請書が発注者に渡った時点で「契約が成立した」とみなされることに注意が必要です。
契約書という文言が記載されていなくても、事実上の契約合意にいたったことを示す請書・注文請書は、印紙税の課税対象となる「2号文書」に該当します。つまり、請書・注文請書はルールに従った収入印紙の貼り付け・消印が求められます。
請書の収入印紙ルール
それでは、課税文書のうちの2号文書(請負に関する契約書)に分類される請書には、どのような収入印紙ルールがあるのでしょうか?収入印紙の貼り付け・消印が必要な場合、必要ない場合に分け、以下から簡単に解説していきます。
請書の取引金額が1万円以上なら収入印紙の貼り付け・消印が必要
請書に貼るべき収入印紙の金額、イコール印紙税の額は、大前提として「請書に記載された取引金額を対象」にしています。請書の取引金額が1万円未満であれば非課税ですが、1万円以上の請書は以下の表に従った印紙税と同じ金額の収入印紙を貼り、消印しなければなりません。
請書に記載された取引金額 | 印紙税 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上、100万円以下 | 200円 |
100万円超〜300万円以下 | 400円 |
200万円超〜300万円以下 | 1,000円 |
300万円超〜500万円以下 | 2,000円 |
500万円超〜1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超〜5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超〜1億円以下 | 6万円 |
1億円超〜5億円以下 | 10万円 |
5億円超〜10億円以下 |
20万円 |
10億円超〜50億円以下 |
40万円 |
50億円超〜 |
60万円 |
取引金額の記載がないもの |
200円 |
印紙税の対象となる請書の取引金額は「消費税」を含まないことがポイント。たとえば、取引金額が税込110万円であれば印紙税が400円かかりますが、税別100万円 + 消費税表記にすることで、印紙税を200円に抑えられます。
物品売買の請書に収入印紙は不要
1万円以上の取引金額が記載される、すべての請書・注文請書が印紙税の対象になるというわけではありません。収入印紙ルールの適用外になる、収入印紙の貼り付け・消印が不要な請書というものも存在ます。
たとえば、請負に関する契約書に該当する「請書・注文請書」には、建設工事などに関連する有形的なもののほか、サービスや役務の提供に関連する無形的なものも含まれます。
一方、継続した売買契約となる場合を除き、商品の対価などを含む物品売買に関連する請書は収入印紙ルールの対象外。つまり、物品売買に関する請書であれば収入印紙の貼り付け・消印は不要です。
電子文書の請書に収入印紙は不要
請書・注文請書に記載された取引金額に係らず、電子メールで送信、あるいはFAXで送信されたものは「電子的な文書のやり取り」となるため、印紙税が課税されることはありません。
これは、印紙税の対象となるのが「紙の文書」であるからであり、電子文書であれば課税文書を作成したとはみなされないため、契約書であっても収入印紙ルールの対象外となります。
ただし電子文書として送信した請書を、後日製本して相手方に手渡すといった場合は、製本した請書に対して印紙税がかかることに注意が必要です。
請書の印紙税を負担するのは発注者?受注者?
請書・注文請書は、注文書に対する返答として受注者が作成・発行します。つまり、印紙税の対象となる課税文書、イコール請書は1部しか存在しないことになりますが、印紙税は発注者・受注者どちらが負担すべきなのでしょうか?
民法では課税文書に対する印紙税は、発注側・受注側が連帯して納税することを基本としていますが、特に法律で印紙税を折半しなければならないと定められているわけではありません。
請書の印紙税をどちらが負担するかは、発注側・受注側の協議・話し合いで決められる場合が一般的。取引金額が大きくないことがほとんどの請書では、受注側が印紙税を負担するケースが多いようです。
収入印紙の消印にはどんな意味がある?
請書・注文請書に限らず、課税文書に収入印紙を貼り付ける場合は「消印」が必須です。これは、収入印紙に消印することで「印紙税を納税した」とみなされるからです。消印していない収入印紙の再利用を防止する目的もあるといえるでしょう。
請書に収入印紙の貼り付け・消印をしなかったら?
それでは、印紙税が必要にもかかわらず、請書・注文請書に収入印紙の貼り付け・消印がされていなかった場合はどうなるか?印紙税は、あくまでも課税文書に対する税金である為、収入印紙の貼り付け・消印のされていない請書であっても、契約の効力がなくなるわけではありません。
ただし、収入印紙の貼り付け・消印がされていない請書は印紙税の納付を怠ったと見なされるため、税務調査などで発見されれば「過怠税」などのペナルティを課される場合があります。
請書・注文請書の書き方・記載すべき項目
ここまでで請書・注文請書の基本とともに、請書に関連する収入印紙ルールを解説してきましたが、事業を立ち上げて間もない方であれば、トラブルを招かない請書・注文請書の書き方を知りたいでしょう。
そこで以下からは、国税庁で公開されている注文請書の参考資料をもとに、請書に記載すべき項目・書き方を簡単に紹介していきます。
出典:国税庁「(別紙)」
発行日(取引日)
発行日(取引日)とは、請書・注文請書を発行した日付、あるいは取引が成立した日付のことです。注意しておくべきポイントとしては、仕事の依頼を確約する文書である、注文書・発注書の日付と同日以降にすることです。
これは、請書が注文書に対する返答という性格を持つからです。取引の流れを明確にするためにも、請書の発行日は注文書の日付移行する必要があります。
発注者情報・受注者情報
請書・注文書に限らず、取引に係る文書で明確にしておかなければならないのが「発注者はだれなのか」「受注者はだれなのか」です。
国税庁の参考資料では、発注者情報が氏名(企業名)だけになっていますが、企業名・担当者名のほか、所在地の住所や電話番号なども記載しておくことがおすすめです。(株)などの略称を使うことなく、企業名は正式名称で記載するようにしましょう。
注文内容・金額
請書・注文請書によってどのような仕事をいくらで請け負うのか?具体的な注文内容・金額を記載します。取引が成立するまでの流れのなかで、共通の認識と理解できる「案件名」を記載する場合が多いようですが、最終的に合意にいたった見積書番号などを併記するケースも。発注側・受注側で認識の違いが生じないように記載する必要があります。
また、提供する役務・サービスが複数に渡るのであれば、品目ごとの項目を設け、それぞれの金額を明記しておくといいでしょう。すでに紹介したように、請書に課税される印紙税額は「消費税を含まない取引金額の合計」です。本体価格と消費税は分けて記載しておくこともポイントです。
納期・納品方法・支払い条件
忘れてはならないのが、納期・納品方法・支払い条件などの記載。事前に合意した取引条件に従い、請書・注文請書に納期・納品方法・支払い条件も明記しておきます。
請書と契約書の違いは?
注文書と対となることで取引契約を成立させる役割を果たす請書・注文請書ですが、一般的な契約書とはなにが違うのでしょうか?契約は口約束でも成立するものではありますが、その契約に法的な効力を持たせるためには証拠としての文書が必要です。
請書・契約書は、それぞれ契約内容を証明する文書ではあるものの、法的効力の強さという点で大きな違いがあります。
請書・注文請書は、発注者の注文に対し「注文内容を遵守する誓約書」として、受注側から一方的に発行される文書です。このため、請書は相手方である発注者に対する強制力が基本的にありません。
これに対する契約書は、発注側・受注側で合意にいたった契約内容を文書に残し、お互いの権利と義務を明確にするための文書です。このため、契約書には契約が守られなかった場合の違約金や損害賠償などを求める強制力が民法で保証されています。
取引は請書と契約書どちら?
それでは、ビジネスで取引契約を締結する場合は、請書・契約書どちらを選ぶべきなのでしょうか?上述したように、相手方に強力を持たせられない請書・注文請書は、主に取引金額の大きくない契約、相手方に義務を課すほどではない契約のときに利用されます。
これに対して、強い法的効力を持つ契約書は、遵守されなければビジネスに重大な支障が生じる可能性のある契約で利用されます。
実際、官公庁などの国の機関、地方自治体などの機関では、一定の基準に満たない調達案件に関して請書・注文請書の提出を受注側に求めることが少なくありません。
官公庁・地方自治体が請書・注文請書を求める基準
官公庁などの国の機関では、調達案件での契約書作成を原則としているものの、「契約事務取扱規則」によって、契約書作成を省略できる場合があるとされています。
その基準となるのが契約金額であり、150万円以下の案件であれば契約書ではなく「請書・注文請書」の提出を求められる場合がほとんどです。
また、「特に軽微な契約」に該当する案件では、請書・注文請書の提出も不要な場合も。ただし、特に軽微な契約に該当する取引金額は官公庁・自治体によって異なるため、公共案件を請け負う企業の方であれば、基本的に請書の提出が必要なのだと考えておけばいいでしょう。
まとめ
本記事では、意外に知らない請書・注文請書の基礎知識を解説するとともに、迷ってしまいがちな収入印紙のルール、契約書と請書の違い、トラブルを防止するための請書の書き方なども紹介してきました。
ビジネスにおける取引では、契約書が締結される場合が一般的であり、請書・注文請書を作成・発行する機会はそれほど多くないかもしれません。しかし、本文中でも解説したように、官公庁・地方自治体案件で請書の提出を求められるケースは少なくなく、リース契約でも請書の提出が必要です。
後々のトラブルを招かないよう、収入印紙ルールを含めた、請書・注文請書に関する正しい知識を身に付けておくことが重要です。

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