物流倉庫の費用相場|エリアごとの倉庫保管料・費用の仕組み・内訳も解説!
自社で倉庫を所有できない場合、レンタル倉庫を利用するのがこれまでは一般的でした。しかし近年では、レンタル倉庫の機能を一歩推し進めた「物流倉庫」が登場し、主流になりつつあります。「物流倉庫」にはレンタル倉庫にはない多くのメリットがあります。
物流倉庫とはなにか
倉庫とは、有形の物品を保管しておくための建物のこと。貸し倉庫やトランクルームなど、従来からのイメージ通り「物品の保管スペース」を貸し出す営業形態の倉庫も少なくありませんが、こうした倉庫とは一線を画しているのが物流倉庫です。
物流倉庫とは、商品・商材を保管するだけではなく、荷主と消費者の間に立ち、「入庫」「棚入れ」「在庫・商品管理」「ピッキング」「流通加工」「出荷」など、倉庫業としての物流サービスを提供する「物流拠点」のことです。
規模の大きな企業・店舗が物流倉庫を活用しているのではないか?そう感じる方が多いかもしれませんが、流通の要として多様なサービスを提供する物流倉庫は、幅広い企業・店舗から活用されています。EC市場が拡大したことによって、小規模事業者・中小企業などの利用も加速しているといえるでしょう。
主要エリアの物流倉庫保管料相場
もちろん、物流倉庫も倉庫には違いありません。一般的な倉庫と同じように、物流倉庫も物品の保管スペースに応じた倉庫保管料が必要であり、不動産と同じように立地に応じて費用相場は変動します。
立地によって費用相場はどのくらい違うのか?まずは倉庫保管料の相場が気になる方に向け、主要エリアの平均坪単価を紹介しておきます。
エリア | 倉庫保管料の平均相場(坪単価) |
---|---|
首都圏大型マルチテナント型物流倉庫 | 4,470円 |
近畿圏大型マルチテナント型物流倉庫 | 4,050円 |
中部圏大型マルチテナント型物流倉庫 | 3,590円 |
福岡圏大型マルチテナント型物流倉庫 | 3,200円 |
参照元:シービーアールイー株式会社「賃貸倉庫・物流施設の市場動向|2021年第2四半期」
物流倉庫の基本・費用の仕組み
倉庫保管料は物流倉庫を選定するうえでの重要な判断要素とはなり得ますが、物流プロセスの全体像から見れば「保管」という一部の役割を担うコストであるに過ぎません。
商材を保管する前の「入庫」、保管商材の消費者への「出庫」、およびそれに付随するさまざまなサービスを提供する物流倉庫では、毎月一定の料金がかかる「固定費」に、入出庫に伴うサービス料金である「変動費」をプラスした費用がかかる仕組みになっています。
倉庫保管料だけに注目するのではなく、固定費・変動費を合計したトータルコストで物流倉庫を選定することが重要。そのためには、固定費・変動費がどのようなサービスで構成されているのか?把握しておくことが肝心です。
物流倉庫の費用相場:固定費
倉庫保管料に代表されるように、毎月一定の料金が必要になるのが固定費です。物流倉庫における固定費には、倉庫保管料のほかに「システム利用料」「業務管理料」などが挙げられるでしょう。以下からそれぞれを簡単に解説していきます。
倉庫保管料
物流倉庫内に商材の保管スペースを維持するためにかかる費用が倉庫保管料です。「坪単位」で月額料金が定められていることが一般的ですが、物流倉庫によっては「パレット単位」「ラック単位」などを採用しているケースもあり、立方メートルなどの容積単位で管理されている場合もあります。
上述したように、物流倉庫の立地条件によって倉庫保管料の費用相場は変動しますが、地価の高いエリアはどうしても高額になる傾向に。参考までに、東京23区を含めた倉庫保管料の相場をもう少し詳しく紹介しておきましょう。
物流倉庫の立地 | 倉庫保管料の相場(坪単価) |
---|---|
東京都世田谷区 | 6,000〜7,000円 |
東京都足立区・江戸川区 | 4,500〜5,500円 |
東京都町田市・八王子市 | 3,500〜4,000円 |
千葉エリア | 3,000〜4,000円 |
仙台市エリア | 2,800〜4,000円 |
近畿エリア | 3,700〜4,500円 |
中部エリア | 3,500〜4,000円 |
福岡エリア | 2,700〜3,500円 |
エリアが同じであれば、それほど倉庫保管料の相場に差がないことがわかります。ただし、冷蔵・冷凍など商材の温度管理が必要な場合は、追加で「冷凍設備費」などがかかる場合も。物流倉庫によっては冷凍に対応していない場合もあるため、事前の確認が必要です。
システム利用料
現代の物流倉庫では、入出庫を含めた商材の流れを正確に管理するため、倉庫管理システム(WMS)が活用されています。この倉庫管理システムを利用するためにかかる基本料ともいえる費用が「システム利用料」です。
システム利用料は、月額おおよそ20,000円から50,000円といったところが相場。入出庫や検品に使うハンディーターミナル、送り状印刷に使うプリンターなどの保守費用も含まれていることが一般的です。物流倉庫によっては、月額料金のほかに初期費用がかかるところもあります。
業務管理料
物流倉庫内の商材管理にかかる、手数料ともいえる費用が「業務管理料」です。システム利用料とは別に請求される手数料であり、月額おおよそ10,000円から50,000円程度が相場観。システム利用料とあわせ、基本料として一括請求する物流倉庫もあれば、商材の取扱量に応じてディスカウントを設定している物流倉庫もあります。
物流倉庫の費用相場:変動費
固定費とは異なり、入庫数や出庫数など、商材の流れに応じて変動する費用が「変動費」です。「入庫料」「デバンニング料」「検品料」「ピッキング・出荷料」「梱包料」「配送料」などが挙げられ、商材の動きがなければ発生することのない費用です。以下からそれぞれを簡単に解説していきましょう。
入庫料
荷主から届けられた商材を受け入れ、所定の場所で保管するために必要な費用が「入庫料」です。商材によって入庫形態が異なるため、料金は個別に単価設定されるケースがほとんどですが、おおよそ10円から30円程度の単価になる場合が一般的。商材が小さい場合は30円から100円程度のケース単価になる場合もあります。
デバンニング料
ケース単位で管理する小さな商材とは逆に、コンテナで送られてくる大きな商材をパレット単位で管理する場合も。こうしたケースでは、フォークリフトでコンテナから荷物を積み下ろすための「デバンニング料」がかかります。
デバンニング料は、おおむね20,000円から35,000円程度といったところが費用相場です。入庫料とは別に費用として計上される場合が一般的。小さな商材でも、コンテナで大量に送られてくる場合はデバンニング料が発生します。
検品料
商材の入庫時に、数量やキズの有無などを確認する作業にかかる費用が「検品料」です。簡単な目視でチェックできるような商材であれば、おおむね10円から30円程度の単価が設定される場合が一般的でしょう。
一方、電源を入れて動作確認する必要のある電化製品、PC関連製品などの場合は、単価が80円から100円程度に設定されることも。荷主・依頼主のニーズに応じて、さまざまなオプションに対応できる物流倉庫が多いようです。
ピッキング・出荷料
物流倉庫内で保管している商材を所定のエリアから取り出し(ピッキング)、出荷エリアまで運ぶ作業にかかる費用が「ピッキング・出荷料」です。ピッキング・出荷料も商材ごとの単価が設定される形になり、おおむね10円から30円程度が費用相場。ただし、物流倉庫によっては、ピッキング・出荷料が梱包料に含まれる場合もあります。
梱包料・流通加工料
出荷エリアに運んだ商材をダンボールなどの資材で梱包し、出荷準備を整えるための作業にかかる費用が「梱包料」です。商材が破損しないように使われる緩衝材、商材に添付する納品書・送り状などの費用も梱包料に含まれることが一般的。商材の大きさにもよりますが、1個あたりの単価がおおむね150円から300円程度といったところが費用相場です。
また、ギフトラッピングや詰め合わせアソート、組み立てなどの特別な作業が必要な場合は「流通加工料」が追加で必要になることがほとんど。荷主・依頼主の要望に応じて、さまざまなオプションに対応できるのも物流倉庫の特徴だといえるでしょう。
配送料
出荷準備の整った商材を、取引先や消費者に届けるためにかかる送料が「配送料」です。国内配送料が500円から1,000円程度、沖縄などの離島であれば1,200円からというのが費用相場ですが、一般的な宅配会社を利用する場合でも、スケールメリットの活かせる物流会社は配送料を抑えられます。陸路・空路を含め、自社独自の物流網を持つ物流会社も存在しています。
物流倉庫の費用相場早見表
倉庫保管料を含めた物流倉庫の固定費・変動費を紹介してきましたが、相場観を素早く確認できるよう、早見表も用意してみました。
費用区分 | サービス項目 | 費用相場 | 備考 |
---|---|---|---|
固定費 | 倉庫保管料 | 坪単価2,700〜7,000円(月額) | エリアによって変動 |
システム利用料 | 20,000〜50,000円(月額) | 初期費用がかかる場合もあり | |
業務管理料 | 10,000〜50,000円(月額) | システム利用料と合わせて請求される場合もあり | |
変動費 | 入庫料 | 単価10〜30円 | 商材に応じて変動 |
デバンニング料 | 20,000〜35,000円 | ||
検品料 | 単価10〜30円 | 商材に応じて変動 | |
ピッキング・出荷料 | 単価10〜30円 | 梱包料に含まれる場合もあり | |
梱包料・流通加工料 | 単価150〜300円 | 要望に応じて変動 | |
配送料 | 単価500〜1,200円 |
なぜ物流倉庫の活用が進んでいるのか
EC市場の拡大によって、小規模事業者・中小企業の物流倉庫活用が進んでいることは紹介しましたが、これまで自社倉庫を物流拠点としていた企業・店舗も、物流倉庫の活用へと戦略をシフトさせつつあります。
これは近年の需要拡大によって運送コストに上昇圧力がかかるなか、在庫調整などの工夫による運送コスト効率化に限界が生じてきているためです。全体的な物流コスト上昇を抑えるためには、物流拠点を見直して保管・作業コストも最適化する必要があるのです。
「物流拠点の見直し」「物流サービスの適正化」に取り組む企業・店舗が前年よりも増加していることがそれを裏付けているといえるでしょう。
引用元:公益社団法人 日本ロジスティクスシステム協会「2020年度 物流コスト調査報告書」
物流倉庫を活用する具体的なメリット
それでは、物流倉庫を活用することによって、具体的にどのようなメリットが得られるのか?以下から簡単に解説していきます。
人件費・保管費・配送料の最適化
自社で物流拠点を用意するためには、商材を保管しておくための倉庫スペースの確保、商材を管理するための人材の確保、商材を配送する運送会社の確保が必要です。
そのためには大きな初期投資が必要であり、すでに物流拠点を構える企業・店舗であっても固定費としてのランニングコストが重くのしかかってくることが考えられます。物流倉庫を活用することによって、初期投資を抑えながら人件費・保管費・配送料を最適化させることが可能でしょう。
閑散期・繁忙期で在庫量を適切にコントロールできれば、倉庫保管料を含む固定費、作業にかかる変動費を時期に応じて適切に保てるだけでなく、スケールメリットによる配送料の最適化も実現できます。
コア業務へのリソース振り分け
物流倉庫を活用するためには費用というアウトソーシングコストがかかるのは事実ですが、手間と時間のかかる物流関連業務から解放されるメリットが得られます。
これまで物流業務を自社でこなしていた企業・店舗であれば、解放されたリソース・人材をコア業務に割り振ることにより、ビジネスの成長に集中できる環境を整えられます。
単に物流業務から解放されるだけではなく、世界有数のクオリティを誇る物流倉庫のサービスを活用できることもポイント。品質担保に向けて人材を育成する必要もなくなります。
ビジネス規模への柔軟な対応
物流倉庫を活用することにより、事業の成長に伴ったビジネス規模の拡大にも柔軟に対応できる環境を整えられます。倉庫保管料を調整する形で、商材の保管スペースを柔軟に拡大できることは大きなメリットだといえるでしょう。
物流拠点を自社で用意するとなればこうはいきません。倉庫の確保に長い時間を要するのはもちろん、新たな人材の確保・育成も必要になります。これでは、動きの速い市場経済の変化に対応できなくなってしまいます。
物流倉庫を選ぶポイント
物流倉庫を活用することで、大きなメリットが得られることは理解できた。では、自社に最適な物流倉庫はどのようにして選べばいいのだろうか?そんな悩みを抱える企業・店舗担当者の方に向け、以下からは、物流倉庫を選定するためのヒントとなるポイントをいくつか紹介していきます。
業務の正確性・迅速性
検品・保管・ピッキング・流通加工などなど、入庫から出庫までの間にさまざまな作業が必要な物流では、人為的なミスが発生しがちな一面があります。ロスをなくして物流コストを最適化するためにも、業務の正確性・迅速性に定評のある物流倉庫を選ぶことが大前提となるでしょう。
世界有数のクオリティを誇る日本の物流倉庫では、それほど心配することはないかもしれませんが、評判をチェックするだけでなく、担当者自身の目で確認しておくこともおすすめ。自社商材に近いものを取り扱っているのか?どのように作業が行われているのか?実際に物流倉庫を見学してみるのもひとつの方法です。
立地条件・コストとのバランス
物流倉庫の活用を検討している企業・店舗担当者の方であれば、もっとも気にしているのが費用ではないでしょうか?たしかに、倉庫保管料の相場は立地条件によって大きく左右されるため、できる限り地価の安いエリアに依頼したいと考えるかもしれません。
しかし、倉庫保管料を抑えられても配送料がかさんでしまうのでは本末転倒です。主な配送先が首都圏であるのなら、物流倉庫も首都圏を選択するのが合理的でしょう。
逆に、日本全国を対象に商材を配送するのであれば、比較的倉庫保管料が安く、各地への配送に便利な中部圏エリアを選択するという方法もあります。立地条件とコストのバランスを考えることが重要です。
繁閑期へ柔軟に対応できるか
上述したように、物流倉庫を活用する大きなメリットとしては、ビジネス規模へ柔軟に対応できることが挙げられます。こうしたビジネス上のメリットを活かすためには、繁閑期に応じた在庫量に柔軟に対応できる物流倉庫を選定することがポイントです。
時期に応じた在庫量に柔軟に対応できる物流倉庫なら、本来固定費であるはずの倉庫保管料を、準固定費として最適化させることが可能。逆に在庫量の増減に対応できない物流倉庫では、新たな保管スペースを確保するため別会社を探さなければなりません。
まとめ
物流倉庫の活用を検討している企業・店舗担当者の方に向け、本記事ではエリアごとに異なる倉庫保管料の相場や費用の仕組み・内訳を含む、知っておきたい物流倉庫の基本を解説するとともに、活用メリットや物流倉庫の選び方も紹介してきました。
本文内でも解説したように、運送コストの上昇圧力が高まりつつあるなか、価格競争力を保つためにも保管コスト・作業コストの最適化が喫緊の課題となっています。その有効な解決策となり得るのが物流倉庫の活用。自社ニーズや商材の傾向をしっかりと把握し、適切な物流倉庫を選定することがカギとなっているのです。
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