国際特許(PCT国際特許出願)の費用|出願から登録までの流れ・費用を解説!

最終更新日:2023年10月02日
国際特許(PCT国際特許出願)の費用|出願から登録までの流れ・費用を解説!
この記事で解決できるお悩み
  • 国際特許(PCT国際特許出願)の費用はいくらかかる?
  • そもそも国際特許(PCT国際特許出願)とは?仕組みを知りたい
  • 特許取得(登録)までの流れは?費用総額はどのくらい?

どんなに優れた発明でも、その権利が保護されるのは特許を取得した国のみです。市場がグローバル化した現代では、自社の権利を行使して価値に見合った利益を得るため、事業展開する海外各国の特許取得が必要不可欠。そう考える経営者の方なら、国際特許という言葉が気になっていることでしょう。

しかし、国際特許にはどのくらいの費用がかかるのか?そもそも国際特許とはなにか?詳細を知る方は多くありません。

そこで本記事では、PCT国際特許出願の費用を中心に、出願から登録までの流れ、各ステップで必要な費用など、知っておきたい国際特許の基本を徹底解説!もうひとつの国際特許ともいえる「パリルート」についても紹介していきます。

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国際特許(PCT国際特許出願)とは

国際特許という言葉から「世界各国で通用する国際的な特許」というイメージを受ける方がいるかもしれませんが、残念ながらそうした便利な「特許」も、国際特許という名の「特許」も存在しません。

日本で取得した特許が日本国内のみ有効であるのと同じように、海外の各国で有効な特許を取得するには、権利を行使したい個別の国で特許を取得する必要があります。こうした考え方を「属地主義」といい、各国の法律が異なるのも属地主義の考え方が根底にあるからです。

国際特許とは、「PCT国際特許出願」制度のことを指しているのが一般的です。PCT国際特許出願とは、PCT(Patent Corperation Treaty = 特許協力条約)の様式に従った特許出願願書を自国で提出することにより、PCT加盟国すべてで特許出願したのと同じ効果が得られる制度のことです。

PCT加盟国

経済のグローバル化が進展し、各国で特許取得を容易にしたいニーズが高まった1970年に「PCT」は条約として成立。現在では、アメリカ・EU・日本・ロシア・中国などの主要国を含め、PCT加盟国は170を数えるほどに拡大しています。

出願するだけでは特許を取得できない

ただし、PCT国際特許出願は「あくまでも特許出願にとどまる」制度であることに注意が必要。特許を取得して発明が登録されるまでには、さまざまなステップを踏む必要があり、国際特許出願はその最初のステップに過ぎないのです。

たとえば、日本国内のみで通用する特許を取得する場合でも、特許出願しただけでは特許庁はなにもしてくれません。手続きを進めるためには、特許出願の日から3年以内に「審査請求」する必要があり、請求がなければ「特許出願を取り消した」ことにされてしまいます。

PCT国際特許出願でもそれは同じこと。事業戦略に従った適切なステップで手続きを進めていく必要があり、それぞれのステップで発生する費用も賄っていかなければなりません。PCT国際特許出願の費用だけで、各国の特許が取得できるわけではないことは覚えておく必要があります。

特許出願の費用(特許庁)

それでは、PCT国際特許出願の費用はいくらなのか?それ以外にかかる費用はいくらなのか?特許出願から各国特許の取得・登録まで、手続きの流れとそれぞれの費用を解説していきましょう。まず、最初のステップとなるのは「日本の特許庁への特許出願」です。

ただし、この場合の特許出願は「PCTの様式による国際特許出願」ではありません。面倒に感じるかもしれませんが、PCT国際特許出願の大前提として、日本の特許法に従った様式での特許出願が必要となるからです。当然、このステップでは、一般的な特許出願と同様の手続き・費用が必要です。

特許出願費用は印紙代 + 手数料 + 弁理士の報酬

特許出願費用は、14,000円の特許印紙代、電子化手数料に、代理人となる弁理士の報酬を加えた合計金額となります。

明細書の枚数、特許の請求項(数)、図面数など、特許出願の内容や複雑度に応じて弁理士報酬が変動するため、具体的な金額を紹介するのは困難ですが、おおむね総額で300,000円から700,000円程度の費用がかかると考えておけばいいでしょう。

もちろん、自力で特許出願が可能であれば、特許印紙代・手数料を合計した数万円程度に費用を抑えられますが、よほど手続きに慣れた方でなければおすすめできません。特に、海外展開を見据えて国際特許出願しようとしている企業であれば、専門家である弁理士のサポートが絶対必要です。

国際特許(PCT国際特許出願)の費用(特許庁)

海外の特許取得に向けた2番目のステップは「PCT国際特許出願」です。特許庁に特許出願を提出した日から数え、1年以内にPCT国際特許出願することにより、PCT加盟国の間で「日本の特許庁に特許出願した日」が「優先日」として認められます。

具体的には、国際特許出願日より前に、他国で似たような特許が出願されていたとしても、日本で特許出願した日の方が早ければ、自社の特許の方が優先されるということです。このステップでの具体的な流れは以下の通り。

PCT国際特許出願手続きの流れ 概要
PCT国際特許出願書類を提出 日本の特許庁に提出。日本語、英語どちらでも受付可能
特許出願に対する国際調査の結果を受領 他国で同様の特許・出願がないか、国際調査機関が調査し、見解書を出願人に送付
特許出願を国際公開 優先日から18か月経過後に、特許出願が国際公開される
任意で国際予備審査を請求 見解書を受けて明細書を修正したい、修正後の明細書を改めて判断してもらいたいときに、任意で依頼できる審査

PCT国際特許出願の手数料

PCT国際特許出願にかかる費用は「手数料」+「弁理士報酬」です。特許出願に必要な明細書の枚数・複雑度に応じて費用は変わりますが、手数料だけでもPCT国際特許出願は、おおよそ250,000円から300,000円程度の費用が必要。

最低限必要な手数料は「国際出願手数料」「送付手数料」「調査手数料」となり、必要に応じて「予備審査手数料」「予備審査取扱手数料」が追加されます。

2022年4月から各手数料が値上げされていますが、重要な手数料のみ紹介しておきましょう。

手数料の種類 要件 費用
国際出願手数料 明細書30枚まで 159,500円
30枚を超える用紙1枚ごと 159,500円
オンライン申請での減額 36,000円
送付手数料 国際出願1件ごと 17,000円
調査手数料 日本語1件ごと 143,000円
英語1件ごと 169,000円
予備審査手数料 日本語1件ごと 34,000円
英語1件ごと 69,000円
予備審査取扱手数料 国際出願1件ごと 24,000円

参照元:特許庁「国際出願関係手数料表」

PCT国際特許出願の費用総額

手数料以外で、PCT国際特許出願に必要な弁理士報酬は、おおよそ100,000円からというところが費用相場。明細書の枚数・複雑度に応じて変動はあるものの、PCT国際特許出願の費用総額は、おおよそ350,000円から400,000円、予算を500,000円として見ておけば足りないということはないでしょう。

もちろん、PCT国際特許出願時に「明細書を英語で提出」するのであれば、もともとの明細書を翻訳する費用が追加で必要になります。しかし、日本語でも国際出願を受け付けていることからもわかるように、この時点での英語翻訳は必須ではありません。

なぜなら、PCT国際特許出願は「PCT加盟国に特許出願する」手続きであり、どの国の特許を取得するのかは出願時点で決める必要がないからです。国際特許出願の手続きが完了したのち、特許を取得する国を決めてから翻訳しても遅くないのです。

PCTルートの国内移行とは

海外の特許取得に向けた3番目のステップは、PCT加盟国のなかから特許を取得する国を決め、国内移行の手続きを進めることです。ここでいう「国内移行」とは、特許を審査・登録する各国の知的財産管理機関に「出願済み特許の審査請求」をするということになります。

「PCTルート」とは

属地主義が採用される特許は、原則として以下の2段階のステップを経る必要があります。

  • 「特許を取得したい国の機関に出願する」
  • 「出願後に国内移行(審査請求)する」

しかし、PCT国際特許出願することにより「複数の国への出願」をひとつにまとめることが可能です。これがPCT国際特許出願最大のメリットであり、制度を利用して目的の国へ国内移行するルートを「PCTルート」と呼びます。

PCTルートでは、原則として「優先日から数えて30か月以内」という国内移行の期限が設けられていますが、どこの国で特許を取得するのか?戦略としてどこの国を狙えばいいのか?検討するための時間は充分確保できるでしょう。以下は、具体的なイメージを描きやすいようPCTルートを図式化したものです。

1-7 (2)

国内移行の費用は特許を取得する国によって異なる

日本国内の「審査請求」でも手数料などの費用が発生するように、各国での審査請求となる「国内移行」にも費用が必要です。

ただし、属地主義が採用される特許における要件や手数料は、当然のことながら特許を取得する国によって異なります。ほぼすべての特許審査案件で直面する「拒絶通知」、それに対する「拒絶対応」にかかる費用も必要であり、EUのように「審査中であっても特許年金の支払いが必要」なエリアもあります。

もちろん、日本国内での特許取得ステップも進めなければなりませんが、PCT国際特許出願していれば、国内移行の一環として日本の手続きを進めることも可能。通常の手続きよりも、手数料等をやや安めに抑えることもできるでしょう。

各国の代理人費用・翻訳費用も必要

一方、日本以外の海外で国内移行する場合は「現地代理人費用」が必要になるほか、各国の知的財産機関に合わせて明細書を「翻訳する費用」も必要です。当然、各国の代理人とコミュニケートし、拒否対応していくために「国内の代理人」を立てる必要もあります。

適切な現地代理人を選出することも含め、特許局に出願する最初のステップから、国際特許取得に豊富な経験を持つ代理人・特許事務所を選定することがポイントとなります。

PCT国際特許出願後の流れ・費用(国内移行・拒絶対応・登録)

それでは、PCT国際特許出願の後、国内移行・拒絶対応を含む特許取得(登録)までには、どのようなステップが必要で、それぞれにいくらくらいの費用がかかるのか?以下から、主な国・エリアに限定して、おおまかな費用を紹介していきましょう。

ただし、円安が進んで日本人の相対的な所得が減っている2022年5月現在、国際特許出願から特許取得までの費用は膨らんでいく傾向にあります。明細書の量・特許の請求項によっても費用は大きく変わるため、数字はあくまでも参考程度にとどめてください。また、いずれの国も国内移行から特許取得・登録までには1年半から3年程度かかります。

国内移行から特許登録までの費用:日本

日本国内のみの特許の場合、出願した日から3年以内に審査請求することになりますが、PCT国際特許出願した場合は「出願した日(優先日)から30か月以内に国内移行する」必要があります。国内移行と同時に、審査請求することになるため、合計の費用はおおよそ300,000円程度。費用の内訳は以下の通りです。

国内移行手数料(日本の特許庁)14,000円
審査請求手数料(請求項などの条件で変動)150,000円〜
弁理士の報酬100,000円〜

これに加え、特許庁からの拒絶通知に対する「拒絶対応」は、1回あたりの費用がおおよそ150,000円程度かかるほか、明細書を英語で提出している場合は日本語への翻訳費用も必要です。トータルで日本の国内移行から特許取得・登録までの費用総額は、おおよそ300,000円から600,000円程度だと考えられます。

国内移行から特許登録までの費用:アメリカ

PCT国際特許出願後、アメリカで国内移行する場合の初期費用は以下の通りです。

現地代理人手数料および知的財産機関への手数料170,000円程度
日本の代理人報酬100,000円程度
翻訳費用300,000円程度
合計550,000円から600,000円程度

出願時の明細書が英語であれば、翻訳費用は必要ありませんが、その分、PCT国際特許出願時に翻訳費用を上乗せすることになるでしょう。優先日から国内移行への期限が30か月であるのは、日本と同様です。

また、人件費の高いアメリカでは拒絶対応の費用も高額。1回あたりの費用が200,000円から300,000円必要になるほか、企業規模が大きければ知的財産機関への手数料も高くなります。おおまかに、アメリカでの国内移行から特許取得・登録までの費用総額は、1,000,000円から1,300,000円程度を見ておく必要があります。

国内移行から特許登録までの費用:EU(欧州)

アメリカよりもさらに高額なのがEUでの国内移行です。初期費用を以下の表にまとめたのでご覧ください。

現地代理人手数料および知的財産機関への手数料600,000円程度
日本の代理人報酬100,000円程度
翻訳費用300,000円程度
合計1,000,000円程度

さらに、EUでは特許出願中であっても、3年目移行は毎年100,000円程度、出願を維持するための年金支払いが必要です。拒絶対応もアメリカ同様、1回あたりの費用が200,000円から300,000円と高額。優先日から国内移行への期限が31か月になるのは、ほかとは異なるEUの特徴です。

複数の国を含む特徴があるため、EUの費用が高額になってしまうのは仕方ない面があるものの、EUでの国内移行から特許取得・登録までの費用総額は、1,800,000円から2,300,000円程度を見ておく必要があります。

国内移行から特許登録までの費用:中国

PCT国際特許出願後、中国で国内移行する場合初期費用は以下の通りです。

現地代理人手数料および知的財産機関への手数料200,000円程度
日本の代理人報酬100,000円程度
翻訳費用300,000円程度
合計600,000円程度

優先日から国内移行への期限は30か月が原則ですが、追加手数料を支払うことで32か月まで延長できます。

拒絶対応に関しては、1回あたりの費用が150,000円から200,000円程度。おおまかに、中国での国内移行から特許取得・登録までの費用総額は、800,000円から1,000,000円程度だと考えておけばいいでしょう。

PCTルートに対する「パリルート」とは

ここまでで、国際特許と同義の意味で使われる「PCT国際特許出願」の仕組み・費用・手続きの流れを解説してきました。一方、記事冒頭でも触れたように、国際特許に近い制度・仕組みとして、パリ条約の優先権主張を根拠にした直接出願、通称「パリルート」も挙げられます。

パリルートとは、パリ条約の加盟国間において、自国に特許出願した発明が他国よりも早ければ、特許の優先権を主張できるという取り決めを活用し、相手国の知的財産機関に直接特許出願できるという仕組みです。以下の図は、パリルートの概念をわかりやすく図式化したものです。

2-6 (1)

PCTルートとパリルートの違い

PCTルートと比較した場合、パリルートは各国ごとに特許出願が必要だという点で大きく異なります。それ以外に、PCTルートとパリルートにどのような違いがあるのか?それぞれのメリット・デメリットを含め、簡単な表にまとめてみました。

PCTルートの特徴・加盟国の特許出願をまとめられる
・出願後に調査結果を確認できる
・国内移行まで出願の日から原則30か月の猶予がある
・PCT非加盟国への特許出願はできない
パリルートの特徴・特許取得した国それぞれに出願が必要
・それぞれの国ごとに特許出願の内容を最適化できる
・優先権を主張できるのは出願日から1年以内
・PCT非加盟国であっても特許出願可能

PCTルートによる国際特許出願がおすすめな企業は?

似ているようで仕組みの大きく異なるPCTルート・パリルートですが、スタートアップや中小企業、あるいは多数の国で特許を取得したい企業には、PCTルートがおすすめです。

PCTルートであれば、特許出願日から「海外特許を取得すべきかどうか?」を検討する1年間の猶予があるうえ、国内移行という実際のアクションを起こすまでにも30か月の猶予が得られます。

この猶予期間を利用すれば、ビジネスの方向性・成長度合いを見極めながら海外進出を決断できるため、資金面で厳しいスタートアップや中小企業でもチャレンジしやすいといえます。

また、加盟国への特許出願をまとめられるため、多数の国で特許を取得したい企業にとっては、手続き・費用を圧縮できる効果も。戦略的に資金を投入していけば、投資が重なってしまうことも避けられます。

パリルートによる各国特許出願がおすすめな企業は?

一方のパリルートは、限定した国のみで特許を取得したい、台湾などのようなPCT加盟国以外の国で特許を取得したい企業におすすめです。

PCTルートに比べれば、パリルートの方が一国の特許取得費用はやや割高になるのは事実ですが、PCT国際特許出願費用が約500,000円程度かかることを忘れてはなりません。特許を取得したい国が1〜2国程度なのであれば、トータルの費用はパリルートの方が抑えられる可能性があります。

もちろん、特許を取得したい国がPCTに加盟していないのであれば、選択肢はパリルートのみとなります。

まとめ

国際特許の費用はいくらかかるのか?そもそも国際特許とはなにか?知りたい方に向け、本記事では、PCT国際特許出願の費用を中心に、出願から登録までの流れ、各ステップで必要な費用など、知っておきたい国際特許の基本を解説するとともに、もうひとつの国際特許ともいえる「パリルート」についても紹介してきました。

国内で有効な特許を取得するだけでも専門的な知識が要求されますが、国際特許出願を含めた海外の特許取得はさらに専門性が要求されます。スムーズに海外特許を取得するためにも、実績豊富な特許事務所を複数ピックアップし、相見積もりを取りながら最適な一社を選定することが重要です。

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比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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