特許と意匠の違いを詳細解説!商標や著作権との違いや取得方法もご紹介
- 特許権と意匠権ってどう違うの?
- 特許と意匠と商標はどう違うの?
- 特許と意匠どちらで申請すればいいの?
特許と意匠の違いはわかりづらく、どちらで申請すれば良いか疑問を持っている方も多いでしょう。この記事では特許か意匠を申請したい方に向けて、両者の違いを徹底解説します。
最後まで読めば、特許と意匠、商標の違いや申請のポイントがわかるでしょう。
意匠権と著作権との違いや、2020年・2022年に改正された意匠法についても紹介します。意匠権について知りたい方もぜひ参考にしてください。
特許権は技術を保護する
特許権を一言で表すと「発明を保護するための権利」です。「発明」とは、画期的な技術の組み合わせのこと。発明に対して特許登録をすることで技術に加えて作者の権利が保護され、模倣品の抑制にもつながります。
特許権の存続期間
特許権の存続期間は、出願日から原則20年間です。特許の権利が行使されるのは出願後に登録が完了した日からですが、存続期間は出願した日から起算されます。
例えば、2022年10月に特許権を申請してから登録されるまで2年かかったとしましょう。特許の効力が発生するのは2年後の2024年10月からです。一方、存続期間は申請した日から起算されるため、2042年10月までとなります。
特許権が認められた日から20年間ではなく、申請した日から起算されることを覚えておきましょう。
書類提出に時間を要する場合や審査状況によっては、出願から登録までに時間がかかる場合があります。審査状況による承認の遅れで権利の行使できる期間が短くなった場合は、延長登録の出願により期間を延長できるケースも。
例えば、医薬品の発明は、「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」による承認が別途必要なため、期間の延長申請が可能となります。
意匠権で保護対象のデザイン
意匠権とは、物や建造物、画像などをはじめとした物品のデザインを保護する権利です。意匠権の具体的な保護対象は上記の4つ。
意匠法2条1項では、「意匠」を「物品や物品の部分の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合、建築物の形状等又は画像であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」と定義しています。「美観を起こさせるもの」とは「見た目が美しい」ことです。
デザインそのものにブランド力がある場合、悪質な模倣品が市場に出回るケースがあります。意匠権を登録することで、裁判により模倣品の販売差し止めを請求できます。
2022年10月1日に、改正意匠法が施行されました。変更点の一部を紹介します。
1. 物品に記録・表示されていない画像や、建築物、内装のデザインも意匠法の保護対象になった
2. 海外で作られ郵送で国内に持ち込まれた模倣品も、意匠権侵害の対象となった
意匠権の存続期間
意匠権の存続期間は、特許出願日から25年間です。特許権と同様、意匠の権利が行使されるのは出願後に登録が完了した日からですが、存続期間は出願した日から起算されます。
以前は、存続期間・権利を行使できる期間ともに出願日から計算していました。2020年4月1日に意匠法が改正されてからは、現在の起算方法が採用されています。
特許権と意匠権の3つの違い
特許権と意匠権には3つの違いがあります。以下は、3つの違いをまとめた表です。
何を保護するのか | 保護期間 | 費用 | |
---|---|---|---|
特許権 | 技術 | 20年 権利が行使できる期間≠存続期間 |
登録する区分数によって費用が変わる |
意匠権 | デザイン | 25年 権利が行使できる期間=存続期間 |
1登録ごとの料金 |
1. 何を保護しているか
特許権と意匠権の違いは、保護対象です。
- 発明や技術を保護したいときは特許権
- 物品のデザインを真似されたくないときは意匠権
上記のようにとらえると、わかりやすいです。
2. 権利の保護期間
特許権と意匠権は、権利の保護期間も違います。特許権は出願日から20年が保護期間ですが、意匠権の保護期間は出願日から25年です。
3. 登録時の費用
特許権と意匠権は、登録時の費用にも違いがあります。特許権は、申請した技術を登録した区分数に応じて費用が増えます。計算式は、3,400円+(8,600円×区分数)です。
意匠権は1登録ごとの料金で、16,000円になります。
特許・意匠・商標の違い
特許・意匠・商標は、保護されるものが違います。特許権の保護対象は「技術」です。意匠権は「デザイン」を保護し、商標は「マーク」を保護しています。
商標権では、商品やサービスを区別するために使用するマークを保護しています。マークとは、文字や図形です。サービス名や店名、店舗のシンボルマークなどが該当します。
商標登録についてはこちらの記事で解説しているので、詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
特許か意匠か迷ったときは特徴で判断!
登録する際に特許か意匠か迷ったときは、特徴を基準に判断するとわかりやすいです。
1. 特許権を申請した方がいいケース
以下のようなケースは、特許権を申請したほうがいいと言えます。
- デザインが影響しない純粋な技術
- 製造方法に特徴がある
- デザインのバリエーションが多い
純粋な技術や特徴がある製造方法の場合、特許権での申請がおすすめです。
バリエーションが多いデザインの場合、意匠権ではなく特許権での保護に向いている場合もあります。共通の機能がある場合、共通部分に特許を取得すると全デザインを保護できるからです。
2. 意匠権を申請した方がいいケース
模倣されやすいデザインやイラストは、意匠権の申請に適しています。模倣を防ぎ作者の権利が守られるからです。
意匠権10条1項では、ある意匠に関連する意匠も保護できることが規定されています。関連の意匠にも意匠権を申請することで、類似したデザインやイラストの作成も未然に防ぐことが可能です。
参照:意匠制度の概要(特許庁)
部分意匠制度
意匠法には、意匠の特徴的な部分について権利を取得する部分意匠制度があります。部分意匠制度により、意匠の一部を変えた模倣品の作成を防止可能です。
部分意匠として登録した場合、登録部分以外が違っていても問題ありません。登録の部分を含んでいれば、意匠権が有効となります。
関連意匠制度
意匠権には、同じコンセプトを持つ複数の意匠を登録できる関連意匠制度もあります。
関連意匠制度を使うと、バリエーション違いの作品すべてに意匠権が付与されます。大切な作品群を保護するために、関連意匠制度の申請もおすすめです。
3. 両方の側面があるケース
技術とデザインの両方の側面を持つケースでは、デザインを保護することで技術も保護できる場合があります。
自動車のタイヤに刻まれた「トレッドパターン」の例を挙げます。タイヤの技術面は特許権、トレッドパターンは意匠権の対象です。
トレッドパターンにより、滑りづらい・操作しやすいなどの技術が生まれるため、デザインを意匠登録するだけで、間接的に技術も保護できることになります。
意匠権と著作権との違いは権利の対象
意匠権と著作権は同時に発生する場合があります。意匠権と著作権の違いは、権利の対象です。
特許庁は、意匠権の保護対象を【「もの」の「かたち」からなるデザインで量産可能である】ものと定義しています。
参照:初めてだったらここを読む〜意匠出願のいろは〜(特許庁HP)
一方、著作権の対象は【思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの】です。
例えばイラスト入りTシャツを大量販売する場合、著作権と意匠権の両方が発生します。著作権と意匠権は次の時点で発生します。
- 著作権=販売前にイラストが完成したとき
- 意匠権=販売のためにTシャツを量産するとき
イラスト入りTシャツを大量販売する場合の著作権と意匠権の権利対象および権利発生のタイミング一覧は、下記のとおりです。
権利の対象 | 権利発生タイミング | |
---|---|---|
意匠権 | 「もの」の「かたち」からなるデザインで量産可能なもの | 販売のためにTシャツを量産するとき |
著作権 | 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの | イラストが完成したとき |
まとめ
特許権や意匠権を取得するためには、法律など制度上の知識が不可欠です。法律は頻繁に改正されているため、申請の検討段階から専門家への相談をお勧めします。
特許権や意匠権を申請する際は、弁理士などの専門家へ相談すると詳しいアドバイスが受けられます。実際に専門家へ相談しようとすると、どこの事務所がいいかわからず困ってしまうことも。
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関西学院大学商学部出身。2007年12月弁理士登録。1999年より大阪市内の特許事務所にて知財業務の経験を積み、2018年4月弁護士法人英明法律事務所へ合流し、所内に知的財産権を専門に扱う部門を設立した。特許・実用新案(機械等の分野など)・意匠・商標の権利化業務に従事する。クライアントとのコミュニケーションを通じて適切な権利取得を心掛ける。

苦労して生み出した発明やデザイン。ビジネス上の戦略も大切ですが、それを強力にバックアップしてくれる助っ人として特許権や意匠権といった知的財産権があります。制度を上手く活用しながら、効果的に独占排他権を取得することは、ビジネスを安定的に発展させるためにも不可欠です。
効果的に強い権利を取得するためのポイントのひとつは、開発段階から専門家を交えて進めることです。特に特許の場合は、その傾向が強いでしょう。完成したと思っていても、いざ専門家が調査すると近しい先行技術文献の存在が明らかになるということは日常茶飯事です。
同業他社の動向や技術レベルは把握しているかもしれませんが、世の中に出ていない技術でも、特許庁のデータベース上には関連文献が数多存在します。開発過程において専門家のアドバイスを得ることは、結果的に強い権利を取得する近道となります。
また、出願戦略も弁理士であれば、制度を駆使して依頼内容に沿った提案ができるでしょう。国内優先権制度、パリ優先権制度、分割出願、変更出願、PCT国際出願、産業の発展を法趣旨とすることから、国は出願人が有利になる制度を数々設けています。これらを上手く活用することで、確実に権利を取得することが可能となります。