株式会社セカンドブレイン

徳島県小松島市の国道沿いに位置する和菓子・パンの販売とイートインを備えた店舗である。
本物件は既存の貸店舗の構成を変えたリノベーション物件となる。
車の流れの速い国道沿いに位置しながら、一歩店内に足を踏み入れると外とは全く違った、ゆったりとした時間の流れを楽しむことができる。
しかし外と遮断されているわけではない。
木々のように林立する木柱に囲まれた空間から外の景色を眺めるという、どこか懐かしくて新しい空間体験はリノベーションによる建築再生の醍醐味に溢れている。
感覚と物質の時間をテーマとしたこの物件は、地方における建築ストックの再活用に景観的な側面からも一石を投じるものである。

敷地の中央奥に鎮座するコンビニ型の建物のアウトラインを消しさることを最初に考えた。
国道沿いの店舗の既成概念を覆す二枚の壁によるファサード。
その壁を強調するため道路側に建っていた大きな看板は撤去した。
敷地一杯に広がった小波スレートの壁は時間と共に色が落ちエイジングしていく。
２枚の壁によるシンプルな構成は車の流れの速い国道において異質なものとして目を引く存在感を生み出した。
駐車場の大きな空間を２段階で細分化し時間感覚の切り替えを試みた。
エントランスのメガホン型の門と、店内の空間をさらに細かく分節する列柱と梁。
どちらも天井高をぎりぎりまで抑え空間のリズムを変えることを試みた。
店内の色調もできるだけ暗く静謐な空間を目指した。
外部をポジとしたネガの内部空間を作ることでひっそりとした空間が生まれると考えた。
結果、古民家のようであり木々に囲まれた林のようでもある、どこか懐かしくて新しい空間が生まれた。

2015年度グッドデザイン賞ノミネート

徳島県阿南市に本店をかまえる「御菓子処もみじや」は阿南市の老舗の和菓子屋であり、そこで販売されるパンも好評を博している。
今回の小松島市の支店では年齢層の高い顧客を有する本店とは異なり、もう少し若い世代に向けた店舗デザインが求められた。
新しく儲けられたイートインのスペースは「和菓子とパン」という東洋・西洋が入り混じった「御菓子処もみじや」の食文化を経験する場であり、そのデザインにも東西のニュアンスを感じさせるものが適していると判断した。