本店移転登記をしないと罰則がある?デメリットや手続きの期限も解説

ささのは司法書士事務所
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最終更新日:2023年01月10日
本店移転登記をしないと罰則がある?デメリットや手続きの期限も解説
この記事で解決できるお悩み
  • 本店移転登記をしないリスクやデメリットは?
  • 本店移転登記の期限っていつまで?
  • 本店移転登記は何をすればいい?

会社の本店住所は登記事項であり、移転の際に変更登記をしないと過料(制裁金)が課されてしまいます。変更登記は直接的には売上・業務に関係しないうえに時間と労力が必要で、面倒に感じてしまうものです。

この記事では、本店移転(法人の住所変更)登記をしない場合のデメリットや申請の期限、具体的な手順を解説します。本店移転登記には時間がかかるため、本店を移転する経営者の方は余裕を持って準備を進めましょう。

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本店移転登記(法人の住所変更)をしない2つのデメリット

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本店移転の変更登記をしないと、下記のようなデメリットが発生します。

  • 罰則金を課せられる
  • 社会的な信用を失う

デメリットを知らずに本店移転をすると、何かと忙しくて変更登記を後回しにしてしまう可能性があります。事前に十分理解しておきましょう。

罰則として100万円以下の過料が課せられる

期限内に本店移転登記をしないと、裁判所の命令によって100万円以下の過料(制裁金)が課せられる可能性があります。

本店の住所は登記事項であり、移転があった場合には変更登記をしなくてはなりません。必要な登記を怠っている状態は「登記懈怠(とうきけたい)」と呼ばれます。

求められる責任を果たしていないとして、代表個人に100万円以下の過料を課すと会社法に定められているのです

必ずしも100万円が課されるわけではありませんが、そもそも過料が課されてしまわないように、本店移転登記は速やかに行いましょう。

参照元:会社法第九百七十六条一項

社会的な信用が失われる

特に不動産のような大きな金額が動く業界では、取引前に登記簿や決算情報などから信用度を調査するのが一般的です。登記内容と実態が合致していなければ、ずさん・信用できないと判断され取引を見送られてしまう可能性もあるでしょう

商取引だけでなく、補助金や公的融資の申請においても登記簿はチェックされます。本店移転登記を怠ると社会的な信用を失い、経営に悪影響が出てしまうかもしれないのです。

本店移転(法人の住所変更)は2週間以内に変更登記が必要

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本店移転を含めた変更登記は「2週間以内に(中略)変更の登記をしなければならない」と定められています。2週間を過ぎてしまっても申請は受け付けてもらえますが、過料といったペナルティが発生する可能性があるのです。

本店移転登記には正当な手続きや書類の準備が必要で、自社ですべて対応するには多くの時間と労力がかかります。司法書士に依頼してもすぐに動いてくれるとは限らないため、ギリギリでは間に合わないかもしれません。

本店の移転(法人の住所変更)を計画している場合は、変更登記も含めて早めに準備しましょう

参照元:会社法第九百十五条第一項

本店移転(法人の住所変更)登記の流れ・手順

本店移転登記の流れは、大まかに下記の4ステップです。

  1. 定款の変更が必要であれば株主総会で特別決議を行う
  2. 取締役会で本店の移転場所・日時を決める
  3. 本店を移転させる
  4. 本店移転から2週間以内に変更登記する

あらかじめ手順全体を確認しておくことで、本店移転登記をスムーズに行えます。

1. 定款の変更が必要であれば株主総会で特別決議を行う

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本店の所在地は定款の絶対的記載事項です。本店を移転する際には、定款に記載された所在地を変更しなくてはならない場合があります。

定款の変更が必要であれば株主総会を開催して特別決議を行いましょう。

定款を変更する際の注意点

定款を変更するには、株主総会で特別決議しなければなりません。特別決議には、議決権を行使できる株主の過半数の出席と、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。

定款の絶対的記載事項となっているのは本店所在地の最小行政区画(市町村(東京は23区))までとされているため、定款の変更が必要でないケースもあります。下記で定款の変更が必要か否かの判断基準を解説するので、参考にしてください。

定款の変更が必要な場合

定款の変更が必要なのは「異なる最小行政区画へ移転する場合」もしくは「同じ最小行政区画内での移転だが、定款に番地や建物名まで記載している場合」です

特に後者には注意しましょう。定款の絶対的記載事項となっているのは最小行政区画までですが、番地や建物名まで記載している会社もあります。定款に建物名まで書いていて同じ市内の違う物件へ移転する場合には、定款の変更が必要です。

定款の変更について決議した株主総会の議事録は、変更登記時に提出する必要があります。

定款の変更が必要でない場合

定款の変更が必要でないのは「定款に最小行政区画までしか記載しておらず、同じ最小行政区画内で移転する場合」です

たとえば「東京都三鷹市井の頭◯丁目◯番地」から「東京都三鷹市深大寺◯丁目◯番地」に移転する場合、最小行政区画はどちらも「東京都三鷹市」で変更がありません。定款に最小行政区画である三鷹市までしか記載していなければ、変更せずに済みます。

2. 取締役会で本店の移転場所・日時を決める

次に、取締役会において本店の具体的な移転場所・移転日時を決めます(取締役会を設置していない会社の場合は、取締役の過半数の一致で決議)。

取締役会を開いた場合は、その議事録を変更登記時に提出しなくてはなりません。

商号に注意する

不正競争防止法の規定により、商号の利用には制限があります。たとえば特定の地域で著名な商号を持つ企業がある場合、当該地域では同じ商号を利用できないといったケースです。

取締役会で移転を決めたはいいものの、商号の関係で通常どおり営業できないといった事態に陥る可能性もあります。移転の際には商号に注意し、わからなければ司法書士に相談しましょう。

3. 本店を移転させる

本店移転後は、登記以外にも税務署や年金事務所、役所などさまざまな場所での手続きが必要であり、期限が設けられているものも少なくありません。本店移転登記にも2週間の期限があるため、あらかじめスケジュールを押さえた上で移転を進めると安心です。

4. 本店移転から2週間以内に変更登記する

本店を移転させたら、下記の書類を用意して2週間以内に法務局へ提出し、変更登記をします。

  • 本店移転登記申請書(管轄の法務局が変わる場合は2通)
  • 株主総会の議事録(定款を変更した場合)
  • 取締役会の議事録(取締役会を設置していない場合は取締役決定書)
  • 印鑑届書(管轄の法務局が変わる場合)

法務局の管轄が変わるかどうかを確認する

法務局の管轄が変わるかどうかで用意すべき書類が異なります。移転前後で法務局が変わる場合には「2通目の本店移転登記申請書」および「印鑑届書」が必要です

用意した書類はすべて移転前の管轄法務局へ提出すれば問題ありません(移転後の管轄法務局へ提出すべき書類は回送されます)。管轄の確認は法務局の公式サイトから可能です。

変更登記には3つの申請方法がある

本店移転を含めた変更登記の申請には以下の3つの方法があります。

  メリット デメリット
窓口 窓口のスタッフに相談や相談ができる ・最寄りの法務局まで行く必要がある
・平日8時30分から17時15分までしか開いていない
郵送 法務局に行かずに申請できる 申請前に確認してもらえない
オンライン 法務局に行かずに申請できる ・申請前に確認してもらえない
・電子認証にはICカードリーダーが必要

初めての変更登記で不安があれば窓口で行うとよいでしょう。すでに変更登記の経験があり、やり方がわかっていれば郵送やオンラインでの申請も可能です。

司法書士に依頼する場合は、申請方法も含めて任せれば問題ありません。

本店移転(法人の住所変更)登記にかかる費用

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本店移転登記にかかる費用には以下の2種類があります。それぞれみていきましょう。

  • 登録免許税:3万円もしくは6万円
  • 司法書士報酬:3万円〜4万5,000円

登録免許税:3万円もしくは6万円

登録免許税は申請手続きを行う法務局に支払う費用であり、一律3万円と定められています。

移転の前後で管轄の法務局が変わる場合、両方の法務局に対して支払いが必要です。このケースの登録免許税は3万円×2箇所で6万円となります。

司法書士報酬:3万円〜4万5,000円

司法書士への報酬は依頼先によって異なりますが3万円〜4万5,000円が目安です。法務局の同一管区内での移転であれば安く、管区外への移転であれば高くなります。

自分で登記変更申請をして、司法書士費用を抑えることも可能です。しかし手間と時間がかかる・商号関連でトラブルが起きる可能性がある・手続きを間違える可能性があるといったデメリットがあるため、おすすめできません。基本的には司法書士へ依頼しましょう。

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本店移転以外で変更登記が必要な代表例

最後に、本店移転(法人の住所変更)以外で変更登記が必要な代表例を紹介します。どれも2週間以内の変更登記が必要で、期限を超過すれば100万円以下の過料が課されるため注意しましょう

  • 代表者の住所変更
  • 役員の変更
  • 株式の分割

代表者の住所変更

法人の代表が引っ越す際には変更登記が必要です。取締役や監査役といった代表ではない役員の住所変更は、登記の必要がありません。

資本金が1億円未満であれば1万円、1億円以上であれば3万円の登録免許税がかかります。

役員の変更

新任や退任、辞任、解任によって役員が変わる際にも変更登記が必要です。任期満了に伴って役員が再任(重任)した場合にも変更登記が必要なため、注意してください。

資本金1億円未満であれば1万円、1億円以上であれば3万円の登録免許税がかかります。複数人分の変更をまとめて申請しても費用は一定とされているため、できるだけまとめて変更登記しましょう。

株式の分割

株式の流動性を高めたり株主を増やしたりするための株式分割にも変更登記が必要です。

資本金や株式数などにかかわらず、一律3万円の登録免許税がかかります。株式分割の際は、基準日を設定しその2週間前までに公告しなければなりません。官報の場合は申込から公告までに1週間ほどかかるため、スケジュールに注意しましょう。

まとめ|本店移転は2週間以内に変更登記しよう

この記事では本店移転登記をしない場合のリスクや登記手順を解説しました。あらためてまとめます。

  • 本店移転登記は移転から2週間が期限と定められている
  • 変更登記をしないと、100万円以下の過料や社会的信用の喪失などのリスクがある
  • 登記申請には時間がかかるため、余裕を持って準備を進める

本店移転(法人の住所変更)の際は、トラブルなく変更登記ができるように司法書士へ依頼するのがおすすめです。定款の変更や取締役会での決定も必要となるため、移転を決めたらすぐに相談しましょう。

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監修者のコメント
ささのは司法書士事務所
佐々野 将太

兵庫県出身。大阪大学法学部卒業後、社会人として勤務しながら司法書士試験に合格。司法書士登録後は埼玉県の司法書士事務所で幅広い業務経験を積む。なかでも相続・遺言については年間100件近くの案件に携わっており、司法書士としての強みとなっている。2022年に大阪府池田市にてささのは司法書士事務所を設立。「わかりやすく、親しみやすい」をモットーに、市民から一番近い司法書士事務所を目指している。

本店移転登記は手続きの頻度に比べて難易度が高い登記です。定款を変更すべきか、管轄内移転か管轄外移転か、などの検討事項が多いからです。それに伴い、作成する書類も多くなるので基本的には司法書士に依頼されることをお勧めします。

司法書士事務所を選ぶ場合は、同一商号、同一本店の調査を行ってもらえるかどうかを聞いてみるといいでしょう。法律上、同じ本店所在地に同じ商号の会社は登記できないことになっています。せっかく決議したのに、登記できないとなると大きな問題です。決議前にしっかりと調査してもらえる事務所を選びましょう。

また、本記事では決議をしてから移転をする、という流れで説明していますが、逆の流れでも登記はできます。特に社長一人でやっている会社などは、社長の事務所が本店所在地になっていることも多いです。特に意識せず引っ越しをして、決議を忘れていたこともあるでしょう。その時はぜひ司法書士にご相談してください。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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