クリニック開業に必要な準備は?失敗・後悔しないための9ステップを紹介

最終更新日:2023年12月12日
クリニック開業に必要な準備は?失敗・後悔しないための9ステップを紹介
この記事で解決できるお悩み
  • クリニック開業に必要な準備は?
  • クリニック開業までの期間は?
  • クリニック開業に必要な手続きは?

クリニックを開業するには、医師免許が必要です。医師免許は最低限の資格であり、実際にクリニックを開業して運営していくためには資金調達やスタッフの採用など多くの準備をしなければなりません。

この記事では、クリニック開業に興味を持つ方に向けて開業の流れや情報を紹介しています。読み終えた頃には、クリニック開業に向けた具体的なイメージを掴めているでしょう。

「クリニック開業の流れを知りたい」「クリニック開業までのスケジュールや手続きを知りたい」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

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クリニック開業の9ステップとスケジュール

ビジネス_ステップ

クリニック開業のためのステップとスケジュールは次のとおりです。

  1. 経営理念と診療方針の策定(18〜12カ月前)
  2. 開業までのスケジュール策定(12〜7カ月前)
  3. 事業計画の策定(12〜7カ月前)
  4. 開業地・物件の選定(12〜7カ月前)
  5. 資金調達と借入(12〜7カ月前)
  6. 内装工事(6〜4カ月前)
  7. 医療機器の選定と導入(6〜4カ月前)
  8. 専門家の選定(3〜1カ月前)
  9. 保健所・消防署への連絡と電子カルテの導入準備(3〜1カ月前)

1. 経営理念と診療方針の策定(18〜12カ月前)

クリニック開業を検討する際、最初に行うことは経営理念と診療方針の策定です。タイミングは開業の18〜12カ月前が目安となります。

経営理念は、クリニックの存在意義や価値観を表現するものです。患者への提供価値や医療の品質についての信念を含みます。経営理念を策定することで、クリニックが何を追求し、どのような社会的貢献を果たすべきかが明確になるでしょう。

診療方針は、クリニックで提供される医療サービスや治療のアプローチに関する指針です。診療方針には下記の内容が含まれます。

  • 診療内容
  • 診療の品質と安全性に関する基準
  • 患者とのコミュニケーション方針
  • 医療倫理への忠実さ

診療方針を策定することで、医療の提供方法や患者へのアプローチを整然とする効果をもたらします。

2. 開業までのスケジュール策定(12〜7カ月前)

経営理念と診療方針を決めたあとに、クリニックを開業するスケジュールを策定します。12〜7カ月前には策定しておきましょう。

開業地や物件の選定に時間がかかり、数年かかる場合もあります。建設が必要な場合やテナントの場合でも、場所を決定したあとに半年もしくは9カ月以上の準備期間を要します。

勤務しながら開業準備をする場合、平日に十分な時間を取れないため開業までの期間が延びることも考えられるでしょう。スムーズな開業を目指すためには、計画をしっかり立て、予定どおりに準備を進めることが重要です。

3. 事業計画の策定(12〜7カ月前)

事業計画の策定は、開業予定の12〜7カ月前までに必要です。事業計画の項目には下記が含まれます。

  • 経営理念
  • 診療方針
  • 創業者のプロフィール
  • 事業の強みと弱み
  • 競合や市場規模について
  • サービス概要
  • 経営計画
  • 財務計画

事業計画の策定は、経営基本計画と資金計画、収支計画などを包括的に検討することが必要です。財務計画は次の4つの情報をもとに策定します。

  • 支出の内訳
  • 資金調達の内訳
  • 開業後初年度の収入見込み
  • 開業後初年度の支出見込み

開業に際しては過度な投資は避け、収支計画を慎重に策定しましょう。

4. 開業地・物件の選定(12〜7カ月前)

クリニックを開業する際、開業地・物件の選定は、開業予定の12〜7カ月前に行います。土地・物件選定の際は、経営理念と診療方針に合致する場所を検討しましょう。

診療圏調査や競合クリニックの特性を考慮し、適切な場所を見つける必要があります。エリアの人口統計情報を調査し、ターゲット層に合致するかどうかを確認しましょう。

現地を実際に訪れ、建物が医療機関に適しているかを確認することも重要です。医療機関が入居可能な建物には規制があります。トラブルを避けるためには、医療物件に精通した不動産会社やコンサルタントに相談することがおすすめです。

5. 資金調達と借入(12〜7カ月前)

資金調達と借入は予定の12〜7カ月前に行います。開業資金のほかに、運転資金も考慮に入れましょう。運転資金とは、企業が事業を継続して運営するために必要な資金のことです。

一般的には、クリニックの開業資金は1,500〜8,000万円が必要です。総資金の約2割分の自己資金を用意することが推奨されています。

資金調達と借入に関しては、次の方法があります。

日本政策金融公庫低金利で固定金利が適用される。運転資金の返済期間は7年。
独立行政法人福祉医療機構低金利で融資されており、申請にあたっては各市町村および県の意見書が必要になる。
民間金融機関融資上限額や金利、担保・保証人の必要有無などは、金融機関によって異なる。
リース会社医療機器・システム・設備機器・器具備品など病医院に必要な機器をリース・割賦にて提供する。

資金調達のための計画を立て、金融機関との連絡を取りましょう。

6. 内装工事(6〜4カ月前)

開業地を決定した後に、内装プランの策定・工事および納入の手続きが必要です。内装工事は、作業に時間がかかるため開業予定の6〜4カ月前までに始めましょう。

内装工事には、医療法や建築基準法などの法的要件が関与する場合があります。設計と内装が法規制に適合しているかを確認するために、医療業界に精通している業者を選ぶことをおすすめします。

内装工事はクリニックのイメージや機能に大きな影響を与えるため、専門家のアドバイスを受けながら計画的に進めることが大切です。

7. 医療機器の選定と導入(6〜4カ月前)

医療機器や設備の選定と導入は、開業予定の6〜4カ月前が目安です。経営理念と診療方針、クリニックの規模に合致する医療機器や設備を選定しましょう。診療科目によって必要な機器は異なります。

たとえば、高精度な検査を提供する場合は、CTやエコー、MRIなどの機器が必要です。コストを最小限に抑える場合、最低限の機器を選定し、精密検査は協力医療機関と連携することをおすすめします。

医療機器は、同じ製品でも価格に大きな差が生じます。予算以外にも、新品か中古か、購入かリースかなど購入方法も検討事項の1つです。

8. 専門家の選定(3〜1カ月前)

開業前の3〜1カ月前までに、税理士や社会保険労務士など専門家の選定を行います。税理士と社会保険労務士の業務内容は次のとおりです。

税理士税務申告の専門家でクリニックの税務会計を担当
社会保険労務士行政への各種届出や各種保険、厚生年金などに関する書類の作成と提出を依頼

開業前から税理士と連携し、節税や税務上の留意点に関するアドバイスを受けることは重要です。一般的な税理士ではなく、医療業界に精通した専門家を選ぶことで、独自のニーズや税務上の特殊性に適切に対処できるでしょう。

社会保険労務士は、スタッフの採用面接を終えたタイミングで契約を結ぶことで、雇用契約の内容確認や社会保険加入手続きがスムーズに進みます。

9. 保健所・消防署への連絡と電子カルテの導入準備(3〜1カ月前)

保健所・消防署への各種届け出と申請手続き、電子カルテの導入準備は開業の3〜1カ月前に行います。クリニックの開業には、多くの行政手続きや届け出が発生するため、開業の1カ月前までには手続きを開始する必要があります。一般的には、コンサルタントや設計事務所が担当し、医師自身が直接行うケースは稀です。

コンサルタントや設計事務所は、内装図面が確定した段階で管轄の消防署や保健所に図面を提出し、進行状況の事前相談を行います。

クリニックの経営者は、防火管理責任者の資格を取得するため、消防署が主催する2日間の講習会への参加とテスト合格が義務付けられています。

クリニック開業に必要な3つの届出

クリニック開業における届出・申請手続きには、以下の3つが挙げられます。

  1. 診療所開設届
  2. 保険医療機関指定申請書
  3. 診療所使用許可申請書(有床の場合)

1. 診療所開設届

クリニックの開業にあたり「診療所開設届」が必要です。「診療所開設届」は、開業後10日以内に保健所へ提出しなければなりません。保健所がクリニック名の使用を認めない事例もあるため、開業前から早めに保健所へ相談に行くことをおすすめします。

診療所開設届の提出時に必要な書類は以下のとおりです。

  • 開設管理者の医師免許証の原本と写し
  • 開設管理者の履歴書
  • 診療所の敷地の平面図
  • 付近の案内図
  • 建物の構造概要および平面図
  • 従事医師および看護師の免許証および履歴書
  • 賃貸契約書(建物を賃貸している場合)

届出以外に、保健所の検査も行われます。提出日は地域ごとに異なるため、適切な日に提出しましょう。開設届が受理されない場合、保険医療機関の指定申請ができないため留意が必要です。

2. 保険医療機関指定申請書

保健所からの開設許可を取得後は、クリニックが公的な保険診療を提供するために「保険医療機関指定申請書」の手続きが必要です。「保険医療機関指定申請書」は、所轄の厚生局に申請しましょう。

申請は月1回、受理されるまでに約1カ月かかります。一般的に、提出期限が各月10〜20日と定められ、受理後の翌月1日付けで指定を受けられます。各厚生局事務所によって提出期限が異なるため、事前に確認してください。

指定許可を得ることで、公的な保険を受けた患者に対する診療報酬請求が可能になります。提出期限が遅れた場合、保険診療が開始できるタイミングが1カ月後ろ倒しになるため、十分に注意しましょう。

3. 診療所使用許可申請書(有床の場合)

「診療所使用許可申請書」は、患者を入院させるための施設を使用する場合に必要な文書です。「診療所使用許可申請書」は、管轄の保健所に提出します。医療法では、開設後10日以内に開設届を提出するように定められています。

「診療所使用許可申請書」が必要なケースは次のとおりです。

  • 有床診療所を運営する場合
  • すでに使用許可を受けた有床診療所が建物の構造や用途に変更を加える場合
  • 一部の変更を行う場合、変更使用許可申請書を提出する場合

提出後、申請者と調整のうえで実地検査が行われます。実地検査は、診療所が適切な標準と規制に従って運営されていることを確認する検査です。

検査に合格することで、クリニックは入院施設として機能するための許可を受けられます。

クリニック開業に必要な4つの手続き

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クリニック開業に必要な手続きは次の4つがあります。

  1. 保健所・消防署事前相談
  2. 医師会への挨拶
  3. 保健所への開設届
  4. 保険医療機関指定申請

1. 保健所・消防署事前相談

クリニック開業において、保健所と消防署への事前相談は不可欠です。地域の保健所と消防署との初期協議は、クリニック開業に必要な法的要件と施設条件を明確にします。

たとえば、テナント契約を締結する前に保健所へ相談することで、開業物件の適格性や医療設備に関する要件を把握できるでしょう。防火管理責任者の資格を取得することで、開業物件に適切な防火設備の設置や患者とスタッフの安全を確保できます。

保健所と消防署への事前相談は、法令遵守と安全性のために重要な手続きです。

2. 医師会への挨拶

医師会への挨拶はクリニック開業の重要な一環です。医師会は、地域医療の中心的な組織であり、信頼性のあるパートナーです。挨拶に伺うことは、地域医療ネットワークへの参画を意味します。

医師会への入会は、一般的に理事会による審査が行われます。クリニックのビジョンや使命を伝える貴重な機会です。審査を通じて地域社会に貢献する意欲を伝えましょう。医師会とのコミュニケーションは、地域の医療情報へアクセスし、連携を強化してくれます。

3. 保健所への開設届

クリニック開業に必要な手続きとして、保健所への開設届の提出があります。開設届を保健所へ提出することで、クリニックの設立が法的に認められます。開設届が受理されない場合、クリニックは患者への医療提供ができません。

開設届の提出には、開設管理者の医師免許証・履歴書、診療所の敷地図や周辺案内図など複数の関連書類が含まれます。開業日程をスムーズに進めるためにも、提出期限を守り、適切に提出しましょう。

4. 保険医療機関指定申請

クリニックを開業するためには「保険医療機関指定申請」を行う必要があります。厚生局に保険医療機関として認定されることで、患者に医療サービスを提供し、診療報酬を受け取れます。

「保険医療機関指定申請」を行う際は、計画的な申請手続きと提出期限の遵守が重要です。

クリニック開業でよくある失敗と回避策

パソコン

クリニック開業でのよくある失敗には下記3つが挙げられます。

  • 資金不足で経営がうまくいかない
  • 適切なスタッフを採用できない
  • 集患がうまくいかない

資金不足で経営がうまくいかない

クリニック開業後は、資金不足で経営が困難になりやすいことが挙げられます。開業後、患者数が増えるまでの期間は収益が限られるため、経営が脅かされる傾向が高いです。

患者数は売上に直結する要素のため、資金が足りない場合、設備の維持や給与の支払いに問題が生じて経営難に陥ります。

開業後の資金不足から生じるストレスを避けるためには、初期の資金計画を慎重に立てることが重要です。たとえば、資金計画では「開業前」「開業後1年」「開業後2年」「開業後3年」など、段階を考慮して資金調達計画を見積もりましょう。

業績が低調な場合のリスクヘッジ策を検討することで、資金不足を回避できます。

適切なスタッフを採用できない

クリニックの運営で、適切なスタッフの採用ができないことがあります。適切なスタッフを雇うことはクリニックの品質と成功に直結します。

クリニックを安定した状態で開業するには、施設に見合ったスタッフの確保が重要です。クリニックの規模と診療室数に応じて雇用しましょう。

クリニックの開業に最低限必要なスタッフ数は次のとおりです。

受付・事務2〜3名
看護師1〜2名
医師1名

クリニックを運営する際の適性人数は、最大患者数の7割を目安に計画します。前職や経験を確認し、リーダーシップ、マネジメント、コミュニケーションスキルが優れたスタッフを採用しましょう。

集患がうまくいかない

集患がうまくいかないことはクリニック運営の大きな課題です。集患のためには、オンラインツールとオフラインツールを組みあわせて集客に活用することが効果的です。

オンラインとオフラインの集患施策には次が挙げられます。

オンラインWebサイトやスマートフォン対応、SEO対策など
オフライン看板の設置やチラシの配布、新聞折込広告など

医療機関の宣伝は法的に制約があるため、選択できる広告手段は限られます。幅広い媒体を通じてクリニックの知名度を上げ、受診患者の満足度と利便性を向上させることが重要です。

まとめ

クリニックの開業には、多くの申請や手続きがあります。内装工事が完了すると複数の業務を同時並行で行う必要があり、開業後は集患やスタッフのマネジメントなど経営存続に直結する課題があります。

安定して経営していくためには正しい開業方法の理解が必要です。スムーズな開業や集患、マーケティング施策などは、専門家への依頼が効果的です。

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比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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