システム開発契約書での確認事項とは?契約形態や発注前に整理すべきポイントも紹介
- システム開発契約書での確認事項とは?
- システム開発を依頼する際の契約形態とは?
- システム開発を依頼する前に整理すべきポイントとは?
システム開発契約書は基幹システムやグループウェアなど、自社で新たにシステムを導入する際にシステム開発会社と取り交わす契約書です。システム開発の場合、契約形態や契約書にはどのような種類があるのでしょうか。
本記事では、システム開発契約書での確認事項や契約形態を紹介します。最後まで読めば、契約前に整理すべきポイントも理解できるでしょう。
新たなシステムの開発やシステムの刷新を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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システム開発契約書とは
システム開発契約書とはシステム開発を依頼した際、自社と外注先との間に締結した内容をまとめた契約書です。契約書にはシステムの仕様や報酬の支払い、納入期限など、双方が協議したうえで合意した内容が記載されています。
システム開発契約書は基本契約と個別契約、双方別々の契約書を用意するのが一般的です。
システム開発で締結する3つの契約書
システム開発会社と契約を結ぶ際、以下3種類の契約書を取り交わします。
- 基本契約書
- 個別契約書
- 保守契約書
基本契約書と個別契約書で締結した内容に関して、法的に優先順位が決まっているわけではありません。システム開発会社とコミュニケーションを重ねながら、内容の優先度を決めていくことが重要です。
保守契約書はメンテナンスや修理をシステム開発会社に依頼する場合のみ、締結します。
基本契約書
基本契約書には、システム開発全般に関する共通条件を記載します。基本契約書で取り交わす主な事項は以下のとおりです。
- 作業範囲
- 成果物
- テスト方法
- 品質保証
- トラブルが発生した際の解決方法
開発の工程が進んだとしても内容に変動がない項目に関して、基本契約書に掲載します。基本契約書はシステム開発会社と締結する契約形態によって、発行部数が変動する点を覚えておきましょう。
請負契約を選択した場合、基本契約書を1通締結すれば問題ありません。準委任契約を締結した場合は、準委任契約と請負契約用の2通の基本契約書が必要になります。
個別契約書
個別契約書にはシステムの開発費や納入期限など、開発に関する具体的な内容を記載します。システム開発の場合、開発途中で仕様変更や機能追加が発生するケースも珍しくありません。
仮に仕様変更が発生した場合、最終的な開発費や納入時期が途中で変わる可能性も考えられます。事前に打ち合わせを入念に重ねていても、仕様変更が発生した場合、契約書を修正しなければいけません。
システム開発の途中で内容変更の可能性がある項目に関しては、個別契約書で内容を取りまとめます。
保守契約書
保守契約書とは、開発したシステムのメンテナンスや修理などに関する内容をまとめた契約書です。システムやセキュリティに精通した人材が社内に不在の場合、システム開発会社と保守契約を締結します。保守契約書に記載すべき主な事項は以下のとおりです。
- 契約期間と料金
- メンテナンスや修理の作業範囲
- 業務の対応時間
- オフィスへの訪問を依頼した場合の費用
- 秘密保持
- 損害賠償
定期的なメンテナンスやアップデートによって、バグや不具合のリスクを最小化し、システムの安定稼働を実現するのが目的です。
システム開発の契約形態
システム開発会社と契約を結ぶ前に、どちらの契約形態が自社に合っているかを知っておきましょう。
- 請負契約
- 準委任契約
請負契約は完成したシステムを自社が検収した際に、はじめて報酬の支払い義務が発生する契約形態です。一定の水準を満たした状態でシステムが納品されない限り、発注者側は報酬を支払う必要はありません。
準委任契約は単価×稼働時間によって算出した費用を支払う契約形態です。システム開発はすべての工程で成果物を納品するわけではありません。近年は準委任契約と請負契約を組み合わせるかたちが増えています。
請負契約
請負契約は、成果物の完成と引き換えに発注者側が報酬を支払う契約形態です。発注者側が検収をしない限り、報酬は支払われません。システム開発の場合、完成したシステムが納品物に該当するため、請負契約を締結するのが一般的です。
操作マニュアルやシステム構成図など、各種文書も同じタイミングで納品を求める場合、対象の文書を契約書に明記しなければいけません。
請負契約を締結した後、システム開発会社には期限内でのシステム納品に加えて、契約不適合責任が発生します。契約不適合責任とは契約で定めた水準を満たしたうえで、システムを納品することです。
準委任契約
準委任契約とは業務の遂行に報酬を支払う契約形態です。稼働時間や稼働日数での単価をもとに、外注先の担当者がこなした業務量に対して報酬を支払います。
請負契約と異なり、システムの完成や品質水準を問う契約不適合責任は発生しません。発注者側だけではなく、受注者側も契約途中での解約が可能です。一方的な契約解除によって相手に損失が発生する場合は、損害賠償金を請求されるため、注意しましょう。
システム開発は成果物を納品しない工程もあるため、近年は準委任契約の採用頻度が増えています。成果物が発生しない要件定義やテストは準委任契約、開発や設計は請負契約を結ぶかたちです。
システム開発契約書で締結すべき主な条項
システム開発契約書に盛り込むべき項目を以下の表にまとめました。
概要 | |
---|---|
契約の目的や種類 | ・システム開発の目的 ・締結した契約の形態 |
有効期限 | 契約の有効期限 |
仕様 | ・システムの名称や種類 ・実装した機能 |
納期 | システムの納入期日 |
報酬 | ・最終的な報酬額 ・報酬を支払うタイミングと方法 |
権利 | システムの著作権や知的財産権 |
不具合対応 | ・不具合対応の方法 ・費用負担の有無 |
請負契約と準委任契約を問わず、上記の表で挙げた項目は契約書に必ず盛り込むべき内容です。特に報酬の支払いやシステムの権利に関してはトラブルが発生しやすいため、細部まで内容を詰めておきましょう。
システム開発契約書で確認すべき6つの事項
システム開発会社から提示された契約書を確認する際は、以下6つの項目を重点的に確認しましょう。
- 成果物が明確に示されているか
- 納品や検収方法が明確に示されているか
- 報酬の支払いに関して明確に示されているか
- 仕様変更に関する記載があるか
- 著作権と知的財産権に関する記載があるか
- トラブルへの対処に関して明確に示されているか
項目に関する詳細を1つひとつ確認します。
成果物が明確に示されているか
システムの名称や機能、納品方法など、開発対象のシステムに関する仕様が明確になっているか、確認することが重要です。システム開発では「要件定義で決めた機能が搭載されていない」「期限に間に合わない」など、トラブルが発生するケースが珍しくありません。
認識のズレや修正作業にともなうトラブルを避けるには、開発対象のシステムに関する詳細な情報を契約書に記載しておく必要があります。
基本設計書やテスト結果報告書、操作マニュアルなど、各種文書も納品物に該当するため、契約書に明記されているかを確認しましょう。
納品や検収方法が明確に示されているか
納品方法や検収方法に関して契約書で明確に示されているかを確認します。特にシステム開発は納品方法の選択肢が多く、契約段階で詰めておくことが重要です。システムの納品方法は以下のとおりです。
- ソフトウェアが入ったDVDやCDの引き渡し
- サーバーからのダウンロードまたはインストール
- 外注先の担当者が個々のPCでセットアップ
検収方法に関してはどのような検査基準を設け、どのくらいの日数がかかるのかを明確にしておきます。基準が曖昧では不合格になった際にどのような改善を施すべきか、システム開発会社側が方向性を見出せません。
検収にかかる日数が想定よりも長い場合は、外注先に不信感を与える可能性が高まります。検査内容や検査方法、修正回数の上限を決めておくと、トラブルを避けられるでしょう。
報酬の支払いに関して明確に示されているか
システム開発で報酬が支払われるタイミングは、システムの納品後または労務完了後の2つにわけられます。請負契約の場合はシステムの納品後、準委任契約と請負契約を組みあわせている場合は労務完了後に支払うかたちです。
報酬の支払い時期が契約書に明記されていない場合、請負契約を結んでいても納品前に報酬を要求される可能性があります。外注先との信頼関係が悪化しないよう、報酬の支払い時期と支払方法を明確にしておきましょう。
システム開発は開発費が数百万円〜数千万円規模になるケースが頻繁に発生します。取引で多額のお金が動くため、契約書を確認する際は細心の注意を払わなければなりません。
仕様変更に関する記載があるか
仕様変更に関する記載有無も重要なポイントです。独自性の高いシステムを開発する場合、システムの開発経験に乏しい場合は、最初からシステムの全体像が明確にできないケースもあるでしょう。
設計やテストを繰り返して仕様を固めるため、スパイラル開発やプロトタイプ開発など、仕様変更を前提とした開発手法を選ぶことになります。対応可能な業務範囲や修正回数の上限、追加費用の発生有無などに関して、契約書に明記されているかを確認することが重要です。
仕様変更に関する内容が契約書に明記されていると、追加費用や納期遅延の発生を必要以上に気にせず、スムーズにやりとりが交わせます。
著作権と知的財産権に関する記載があるか
システム開発を問わず著作権に関しては基本的に創作者側が所有します。システム開発会社が著作権を持つかたちになりますが、契約書に明記しておかないとトラブルに発展する可能性が高まります。
たとえば、納品したシステムを発注側が無断でコピーし、グループ会社で流用するかたちです。システム開発会社が発注側に対し、システムのメンテナンスやアップデートの費用を毎回要求するケースも考えられます。
トラブルを避けるため、著作権と知的財産権に関する記載は必ず契約書に盛り込んでおきましょう。著作権と知的財産権はシステム開発会社が持ち、契約の範囲内で利用を認める方法も取れます。
トラブルへの対処に関して明確に示されているか
対処方法や責任の所在、損害賠償金額の上限など、トラブルへの対応が契約書に明記されているか、確認することも重要です。
トラブルを早期に解決するには、発注側とシステム開発会社が共に責任を果たさなければいけません。発注側はシステム開発会社との対話を繰り返し、システム開発会社は原因究明と事態の収束に全力を注ぐことになります。
仮に信頼関係が崩壊した場合は弁護士や裁判所などを介すため、修復不可能になった場合の解決方法も記載しておきましょう。
発注側は万が一の事態に備え、発注書や仕様書、メールのやり取りなど、文書や証拠を残しておくことが重要です。
システム開発の契約を結ぶ前に整理すべき4つのポイント
外注先とシステム開発に関する契約を締結する前に、以下4点に関して把握しておきましょう。
- システム開発の流れを知る
- システム開発の開発手法を知る
- 保守契約が必要かを検討しておく
- 契約不適合責任について知る
各ポイントの内容を1つひとつ確認します。
ポイント1. システム開発の流れを知る
システム開発がどのような工程を経て進んでいくのか、開発工程の流れを知ることが重要です。システム開発の流れを把握できていない場合、請負契約と準委任契約のどちらが自社に合っているか、判断できません。
トラブルが発生した場合の対応も後手に回り、多大な損失を被る可能性が高まります。システム開発の流れは以下のとおりです。
- 要件定義
- 外部設計
- 内部設計
- コーディング
- テスト
- リリース(納品)
- 運用や保守
システム開発会社からの見積や提案書を確認し、条件に合致した企業と契約を締結した後、要件定義へ入ります。要件定義は機能や品質面など、自社の要望を開発側の視点でまとめる工程です。
要件定義で開発側と認識を正確に共有できていないと、本来の意図とズレる可能性が生じるため、注意しましょう。
ポイント2. システム開発の開発手法を知る
プロトタイプ開発やウォーターフォール開発など、各開発手法の特徴を知ることも重要です。開発手法によっては仕様変更が発生しても、修正工数の増大を避けられます。
たとえば、プロトタイプ開発は開発の初期段階から試作機を作成する開発手法です。試作機の動作検証や発注側からのフィードバックにもとづき開発を進めていくため、仕様変更へも柔軟に対応できます。
ウォーターフォール開発は要件定義〜リリースまで、1つひとつの工程を順番に進めていく開発手法です。手戻りは想定しておらず、仕様変更への柔軟な対応は望めないでしょう。上記のように開発手法の特徴を理解しておくと、仕様変更にともなう納期遅延を避けられます。
ポイント3. 保守契約が必要かを検討しておく
システム開発会社と保守契約を締結するべきか、事前に検討しておきましょう。保守契約を締結する目的は、機器の故障やマルウェア感染などによって生じる大規模通信障害を防ぐためです。
システムダウンが発生すると多くのユーザーに支障がおよび、業務効率低下や多額の利益損失を招きます。定期的にシステムダウンが起きた場合、イメージダウンや社会的信用低下は避けられないでしょう。
メンテナンスや障害復旧作業を自社で対応するのが難しい場合は、システム開発会社と保守契約を締結するのがおすすめです。システムやセキュリティに精通した人材が社内にいる場合、保守契約を締結する必要はありません。
ポイント4. 契約不適合責任について知る
システム開発会社と請負契約を結んだ場合、外注先は一定水準以上の品質を満たしたうえでシステムを納品しなければいけません。
仮に納品されたシステムが契約で定める水準以下の場合、発注側はシステムの改修や損害賠償、契約解除などを請求できます。従来はシステムの納品から1年以内が請求権の期限でしたが、契約不適合責任への移行によって「契約不適合を知った時点から1年以内」に変更されました。
納入後に大ダメージを及ぼすバグを発見した場合でも、システムの改修や損害賠償を請求しやすい環境です。
システム開発会社との契約を成功へ導く3つの方法
システム開発会社と契約を締結する際は、以下3つの方法の活用を検討しましょう。
- モデル契約書を活用する
- RFPを作成する
- 弁護士事務所に相談する
モデル契約書を活用すると、契約書作成にかかる工数やトラブルの可能性を削減できます。複数のサイトからモデル契約書のダウンロードが可能です。システム開発会社にRFPを事前に提出しておくと、自社の要望を外注先と正確に共有できます。
契約書の作成に不安を抱える場合は、弁護士事務所に相談するのがおすすめです。「比較ビズ」を利用すると、自社の条件に合致した弁護士事務所を短時間で見つけられるでしょう。得意分野や実績など、各弁護士事務所の特徴がコンパクトにまとめられています。
モデル契約書を活用する
システム開発会社と契約を締結する際、モデル契約書の活用を検討しましょう。モデル契約書とは発注側と受注側が互いに有益な契約を締結できるよう、開発された契約書のサンプルです。
経済産業省やIPA、JEITAなど、複数の組織が自社サイトでモデル契約書やシステム開発契約で必要な情報に関して紹介しています。
モデル契約書を参考にしながら契約書を作成すると、1から項目を考える必要がなく短時間で作成できます。
アジャイル開発やセキュリティ対策、法改正の影響も踏まえた内容に仕上がっており、情報不足に悩まされる心配は少ないでしょう。モデル契約書の活用によって、作業負担とトラブルのリスクを軽減できます。
RFPを作成する
外注先を選定する際、RFP(Request for Proposal)を提出しておくのも有効です。RFPとは自社の要望をまとめた提案書を指し、システムやアプリ開発の際に発注側から受注側へ提出します。RFPに記載すべき主な内容は以下のとおりです。
- システム開発に至った背景
- 達成したい内容や現状の課題
- 予算
- 必要な機能と不要な機能
- 希望納期
- 保守契約の有無
- 現行サーバーやネットワーク機器
RFPを作成すると自社の要望を書面に残せるため、外注先と認識のズレが生じる確率を減らせます。自社の要望を事前に伝えておくことで、スムーズな契約につなげられる点もプラスです。口頭での伝達ミスにともなうトラブルの発生を心配する必要もないでしょう。
RFPの完成度が高まるほどトラブルのリスクを軽減できるため、RFPの作成時間を十分確保することが重要です。
弁護士事務所に相談する
契約書の作成を任せられる人材がいない場合、作成した契約書の審査を依頼したい場合は、弁護士事務所に相談しましょう。
弁護士への依頼によって、システム開発で締結すべき事項を盛り込んだ契約書をスピーディーに作成できます。重要項目が盛り込まれており、システム開発会社との契約トラブルも避けられるでしょう。
弁護士事務所によって得意分野が異なるため、事前にシステム開発契約書の作成および審査経験の実績を確認しておくことが重要です。
契約書の作成や審査に報酬がともなう場合は弁護士の独占業務に該当します。行政書士や社労士には業務を委託できないため、注意しましょう。
まとめ
今回の記事では以下の4点に関して述べました。
- システム開発契約書での確認事項
- システム開発を発注した際の契約形態
- システム開発を依頼する前に整理すべきポイント
- システム開発会社との契約を成功へ導く方法
システム開発会社から契約書を提示された際、検収方法や報酬の支払い、トラブルへの対処など、さまざまな項目を確認しなければいけません。
担当者がシステム開発のノウハウや経験に乏しい場合、内容を正確に理解できない可能性もあるでしょう。システム開発会社に提出する契約書作成にも多くの時間が必要です。
他の業務への支障を避けるため、契約書の作成や審査を弁護士事務所に依頼しましょう。「比較ビズ」を利用すると、必要事項を入力する2分程度で条件に合った弁護士事務所を探し出せます。
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東京大学出身で、大学時代は硬式野球部の副将を務める。新卒でRPAホールディングス(株)に入社し、子会社のRPAテクノロジーズ(株)のRPA教育スキームの企画設計やCSチームの立ち上げ、グループ全体の新卒採用を担当。その後(株)x gardenに入社し、大手通信キャリアの5Gを活用したR&D・新規事業プロジェクトであるクラウドレンダリングを搭載したXRシステムの企画・開発や、遠隔作業支援システムの開発などを中心にプロジェクト責任者として担当。2023年、株式会社Forgersを創業。
本記事に記載されていることに加えて、契約の途中解除の条件や再委託に関する条項、強制解約など、万が一の事態が発生した場合に問題が起きないように契約書を整えることを推奨します。これらの具体的な契約内容に関して事前に委託者と受託者間で整理し、双方の認識のズレがないようにすることも大切です。
また、契約書の内容が専門的である場合は、弁護士に法的な助言を得ることも考えるとよいでしょう。細かい文言や表現は法的に特別な意味を持ったりする場合があるので、不明点は詳細に確認すると良いでしょう。
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