相続税申告の流れと必要書類とは?

青木征爾税理士事務所
監修者
青木征爾税理士事務所 税理士 青木征爾
最終更新日:2022年11月30日
相続税申告の流れと必要書類とは?

家族が亡くなると葬儀に関係したいくつもの手続きをしなくてはなりません。そのうえ相続が生じる場合、その手続きもする必要が出てきます。相続税の申告は期限付きの明確なルールがありますので、しっかりと流れとやり方を知って実行することが重要です。また、必要書類も多いので準備も簡単ではありません。相続財産の内容によっても変わるという事情もあり、きちんと知識を身に着けることが求められます。

相続・事業承継対策の依頼にお困りではありませんか?

もしも今現在、

  • 相続・事業承継に詳しい専門家が見つからない
  • 税制度の変更に対応した対策がわからない
  • 税理士・公認会計士の費用相場がわからない

上記のようなお困りがありましたら、比較ビズへお気軽にご相談ください。比較ビズでは、複数の税理士・公認会計士に一括で見積もりができ、相場感や各社の特色を把握したうえで業者を選定できます。見積もりしたからといって、必ずしも契約する必要はありません。まずはお気軽にご利用ください。

相続・事業承継対策に対応できる業者を一覧から探す

相続税申告のおおまかな流れ

まずは、相続税申告におけるおおまかな流れをチェックしましょう。それぞれのプロセスにおいて作成すべき書類もありますので、必要な流れを追いながら書類を準備していくようにしましょう。

相続人全員の話し合い

相続を有効なものとするためには、相続人すべての合意が必要となります。そのため、遺産として何があるのかをすべて確認して、誰がどの遺産を受け継ぐのかを明確に定めることになります。

その上で、遺産分割協議書というものを作成します。これは誰がどの遺産をもらうかということについて文書にしたもので、相続を有効にするために必須となります。

また、それぞれの相続人がもらう遺産の評価額も分かりますので、各自にかかる相続税を算出するためにも重要な書類となります。相続人全員が合意をしないと話は進みませんので、早い段階で一緒に話し合い、相続の内容を決めることが求められます。

遺産総額と控除額の計算

故人が遺した財産すべてについて、その額を計算して遺産総額を出すことになります。これには、現金だけでなく株式などの証券や貴金属、実家の建物と土地といった不動産も含まれます。

このように、金銭的に価値のあるものすべてをリストアップして、それぞれの資産額を計算することになります。ここで問題となる点としては、現金はすぐにその額が分かりますが、不動産などはいくらの価値があるか分かりづらいということです。

その場合は、資産を時価つまり、その時の価値の評価をして資産額を出します。土地の場合は路線価または固定資産税評価額という、公的な基準において定められている価額を基にして、資産評価額を計算することになります。

こうした資産価値の評価は素人ではできませんので、不動産評価のノウハウを持つ税理士などに依頼することになります。土地の計上や用途が複雑な場合、鑑定する人によって評価額が変わってくることもありますので注意が必要です。

資産額と共に計算しなければならないのが、控除額です。相続税の場合は、相続する評価額に応じて異なる額の基礎控除がなされます。また、基礎控除とは別に様々なケースに応じて控除がなされます。

たとえば、故人がプラスの財産だけでなく借金も残した場合です。借金の分はそのままマイナスされて控除となります。他にも配偶者が相続する場合は、基礎控除のほか債務も控除できるので、しっかりと計算しなければなりません。

申告の必要性を確認

相続税は相続する財産があれば、必ずかかるわけではありません。基礎控除として、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で出てきた金額が定められます。法定相続人が3人であれば、4,800万円以下の総額であれば非課税となるわけです。

また、相続する財産の内容によっては、さらに非課税の枠が広げられるものもあります。退職金や生命保険料など、社会通念上大きく課税しない方が良いと考えられているものです。

これらの控除については、法定相続人の数に500万円をかけた金額の範囲内であれば非課税となります。つまり、4人の相続人がいれば、総額で2,000万円以内であれば相続税はかからないです。

他にも、故人が現役として勤めていた会社から遺族に対して弔慰金が出された場合は、一定の範囲内でやはり非課税対象となります。業務上の事故が原因で亡くなった場合と、業務外の理由による死亡かによってその控除範囲は変わってきます。

このように、遺産総額から基礎控除額、そしてそれぞれの財産の内容に応じた控除を差し引いて、プラスの金額が出た場合にのみ相続税がかかります。それ以下であれば非課税となりますので、申告は不要です。

必要書類の準備

相続税の申告が必要だと分かったら、申告に必要な書類を準備していきましょう。申告書は税務署で、公的な書類については自治体の役所でもらうことになります。

他にも、自分たちで作成しないといけない書類が何点かあります。相続人がそれぞれ準備するものもあれば、相続人全員が連名で作成しないといけない書類も存在するのです。

全員の署名が求められる書類の場合、相続についての話し合いをするために集まった時に一緒に作成した方が効率的です。特に遠方に散って住んでいる場合はそう言えます。そのため、事前に必要な書類を確認しておき、みんなが集まる時に作るべき書類のリストを持っておくと良いでしょう。

ほとんどの書類は申請をすれば、すぐに取得できるものです。しかし、中には作成するのにある程度の時間がかかってしまうものもあります。たとえば、不動産の資産価値を評価する書類です。

専門家に依頼して現地調査をしてもらってから評価をしますので、どうしても時間がかかるのです。相続税の申告には期限がありますので、確実に間に合わせられるように十分前もって依頼しておきましょう。

申告書類の作成

相続税の規定の申告書類が用意されていますので、税務署で入手して記入していきます。この申告書の作成には、前述の必要書類がないとできない項目もあります。

特に不動産を始めとする遺産の評価額については、すべての必要書類をしっかりと準備して正確な金額を出してから、申告書を作り始める方が良いです。また、控除についても一緒に計算していきますので、控除関連の書類も集めておきましょう。

そのため、控除額が低くなっていないや、控除内容が漏れていないかなどを何重にもチェックして、正確であることを確かめた上で完成しなければなりません。税務署から、申告書と共に納付書ももらいますので、それに必要事項を記入して納付に必要な書類を完成させます。

税務署への申告

必要書類と申告書、納付書の作成が終わったら、税務署に行ってすべての書類を提出することで申告が完了します。相続税の申告には明確な期限が設けられています。

そのため、申告期限から逆算して必要書類の準備や、不動産の価値評価などをテンポよく行っていく必要があるでしょう。特に、相続人がすべて集まって合意を得るのに時間がかかることもありますので、スムーズに話し合いができる環境を作ることが大事です。

遺産の内容が複雑だったり金額が大きかったりする場合には、自分たちで手続きをするのではなく税理士に任せることもあります。

税理士に書類を作ってもらったら、それぞれの書類についてある程度説明してもらい、どんな内容かを自分でも理解しておくようにしましょう。

税務署に書類を提出して申告する際に、いくつかの点について職員から尋ねられることもあるからです。もちろん、税理士が作成してくれたと言えば、その税理士に説明を求めることも可能です。しかし、やはり自分の関わる相続ですので、できるだけ内容については理解しておいた方が良いでしょう。

申告と納付

申告期限と納期限は通常、被相続人が亡くなった日の翌日から10月以内です。

原則、現金一括納付となっています。延納や物納といった制度もありますが適用を受けるハードルが高いため、納税資金を準備しましょう。

相続財産の中に現金や有価証券など容易に換金ができるものがある場合は対策ができますが、不動産のように換金するのに時間がかかるものがある場合は注意が必要です。

相続税申告のための必要書類

今まで見てきたように、相続税の申告は多少複雑なところがあります。その必要書類についても同じで、用意するべき書類がたくさんあります。また、遺産の内容によっても必要書類が変わってきます。まずは、遺産の内訳をしっかりとリストアップして、それぞれに求められる書類を確認しましょう。

すべてのケースで必要な書類

遺産の内容に関わりなく、どの相続税申告についても必要となる書類があります。基本的に相続人全員が作成、提出しなければならない書類ですので、全員でこの情報を共有して早めに準備できるようにしましょう。その必要書類は以下の通りです。

  • 相続人全員分の本人確認書類
  • 故人の出生の時から亡くなるまでの情報が分かる戸籍謄本
  • 故人の住民票除籍(亡くなった時に住んでいた場所の確認をするため)
  • 相続人全員分の戸籍謄本
  • 相続人全員分の戸籍附票(住所の履歴を知るために必要)
  • 相続人全員分の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書(遺言書があれば添付)

このように、主に故人と相続人の関係性を確認したり、納税に関する情報を収集したりするために使われる書類が求められます。これらの必要書類は、役所でもらうものと、自分たちで作成するものとがあります。

それぞれについて、どのように取得もしくは作成するのかをチェックして、スムーズに必要書類を整えられるようにしましょう。いくつか注意点がある書類もありますので、用意する際に思いに留めておきましょう。

自分たちで作成するもの

このうち自分たちで作成、もしくはすでに手元にあるものを提出する書類は、以下の通りです。

  • マイナンバーカードと本人確認書類
  • 遺産分割協議書

相続人全員の本人確認書類が必要となりますが、マイナンバーカードはその代わりとなりますので、カードがあればそれ一枚で十分です。もし、まだマイナンバーカードを取得していないのであれば、運転免許証やパスポートなどの別の書類が必要です。

マイナンバーは税務のために必要となりますので、マイナンバーカードがない場合は番号が分かる通知カードや、マイナンバー入りの住民票を提出することになります。この場合、役所に行って取得しなければなりません。

遺産分割協議書は、誰がどの遺産を受け取るのかを明確にするもので、それぞれのいくらの相続税がかかるかを計算するためにも必要です。もし、遺言書が存在していて、その内容通りに相続がなされるのであれば、それを添付するとスムーズです。

遺産分割協議書では、相続の対象となる資産をそれぞれ分類して、一つずつ列挙していきます。そのリストに対応する形で、それぞれの遺産を誰が相続するのかを記載する形式を採ります。

特に書式については厳格に定められているわけではありませんが、誰がどれを相続するのかを明確にすることが肝心です。その上で、相続人全員の署名、捺印が必要です。

この押印は実印となります。そのため、そこに押した実印を証明するために、それぞれの印鑑証明書を添付することになります。

役所で取得するもの

上記の本人で作成するもの以外のすべては、役所で取得することになります。自治体の役所ですぐにもらうことができます。ただし、戸籍類は本籍地でないともらうことができません。

そのため、遠方に住んでいるのであれば郵送で依頼することになります。もしくは、相続の協議のためにみんなで集まった時にその土地に行くのであれば、あらかじめ必要な書類を確認して取得しておけば手間がかかりません。

これらの書類は、税理士などの相続税についての処理を代行してもらう人に準備してもらうことも可能です。ただし、委任状を作ったり手数料を払ったりすることになりますので、余計にコストがかかります。

ほとんどの書類は簡単に取得できるものですので、時間が空いた時に自分で取る方が良いでしょう。相続人がそれぞれ準備すべき書類もありますので、お互いに期限を決めて書類を集められるようにしておきましょう。

預貯金の相続で求められる書類

上記の必要書類は基本的な書類で、遺産の中身によって他にも書類が追加されます。たとえば、遺産に預貯金が含まれている場合です。以下の書類を揃えれば十分となります。

  • 銀行の通帳もしくは取引履歴
  • 銀行の残高証明書
  • 現金として保有しているものの金額

故人が複数の金融機関に預貯金をしていたのであれば、すべての口座の情報が必要となります。場合によっては、ネット銀行を使っていて通帳を持っていないということもありますので、ネット上で取引履歴を印刷したり、銀行に書類発行を依頼したりする必要があります。

通帳や取引履歴に関しては、古い通帳を探す必要が出てくるかもしれません。死亡した後に口座からの引き出しなどがあると、相続がスムーズにできないこともありますので注意しましょう。

残高証明書は、基本的に死亡した日付のもので取ります。定期預金などを使っていて、利子が付くものであれば、その利子についての計算もした上で提出します。

不動産の相続で求められる書類

自宅など、限られた不動産であれば一そろいで良いですが、賃貸用の物件を所有していた場合は、すべての物件について用意しなければなりません。

  • 名寄帳
  • 登記簿謄本
  • 測量図
  • 住宅と周辺の地図
  • 賃貸借契約書

登記簿謄本を取る時には、全部事項証明書を請求しましょう。不動産関連の手続きに慣れておらず、法務局での登記簿の取得をしたことがないというのであれば、代行してもらうことも可能です。

名寄帳については、市区町村の役所で取得できます。故人が持っていた不動産のリストとなりますので、相続についての協議をする前に取得をして、遺産となる不動産の漏れを防ぐために活用することもできます。

住宅と周辺の地図については、所在地が分かれば良いのでインターネット上の地図を印刷するだけでも構いません。一方で、測量図については法務局で取得することになりますので、登記簿を取る時にまとめて行うと楽です。

保険金や退職金について必要な書類

保険金や退職金は前述の通り、一定の非課税の対象となります。そのため、別に書類を提出することになります。保険金については、保険証書と支払調書があれば十分です。

退職金についても支払調書があれば、その金額を確認することができます。手元にこうした書類がない場合は、保険会社や個人が勤めていた企業に発行請求を出すことになります。

有価証券の相続で必要な書類

有価証券が相続される場合は、株式や債券、為替などの取引の内容によって異なります。基本的には、有価証券を所有していたことが分かる書類として、取引口座の取引履歴などを準備します。

株式や債券のように配当が発生するものであれば、配当金支払通知書も準備すると良いでしょう。これがあれば証券の所有者と配当金についての確認をまとめて行うことができます。

相続税控除のために必要な書類

既に説明したように、相続税はいくつかのケースで基礎控除以外でも控除がなされます。控除を適用するためにも、いくつかの必要書類を準備しなくてはなりません。

借金もある場合に添付する書類

ローンや未払金、借入金などがある場合には、それぞれの債務について証明する書類を用意します。たとえば、ローンの借入残高証明書や、未納となっている税金の納税通知などです。

他にも、個人からの借金がある場合は金銭消費貸借契約、未払いとなっているものがあればその請求書を準備します。特に医療費について未払いが発生していることも多いので、それも債務の一つとして含めることもできます。

葬儀費用控除のための書類

故人の葬儀にかかった費用も、相続税から控除できることになっています。遺産総額から相殺する形で控除できますので、忘れずに書類を提出して控除を受けられるようにしましょう。

葬儀費用として認められるのは、火葬費用や葬儀社への支払いといった基本的なものの他に、戒名料や葬儀に関係する車両を運転してくれたドライバーへのチップなども含まれています。こうした費用については領収書がないことも多いので、その場合は自分たちでメモを作るだけでも構いません。

これはあくまでもお葬式にかかった費用ですので、香典返しを含めることはできません。また、墓所の設置費用や仏壇の費用なども、相続税の控除としては認められていませんので注意しましょう。

配偶者の税額軽減のための書類

故人の配偶者には税額の軽減措置がなされます。他の相続人よりもかなり軽減されますので、使わない手はありません。この控除のための必要書類としては、戸籍謄本や遺産分割協議書といったものがあります。

基本的にこうした書類は、通常の相続税の申告の際に提出していますので、改めて提出しなくても問題ありません。申告の際に、配偶者であることを 申告書へ記載することで、軽減措置を受けられるためです。

まとめ

相続税の申告には様々な必要書類があります。中には取得に時間がかかったり、作るのに相続人全員が集まらないといけないものもあったりします。そのため、事前に必要書類のリストを作り、スムーズに作成作業を進めていくことが重要です。

多くの場合、素人には難しい控除や税額の計算、書類の準備などがありますので、税理士に頼ることはメリットが大きいです。その点、「比較ビス」では相続関連の実績が豊富で、同時に税金対策もサポートしてくれる税理士を見つけることができます。よりスムーズな相続をするためにも、こうしたプロのサービスを活用してみましょう。

監修者のコメント
青木征爾税理士事務所
税理士 青木征爾

札幌市を中心に活動する税理士。アパレル業界から未経験で税理士業界に飛び込む。その後、個人事務所、資産税系コンサルティングファームで経験を積み独立。税理士の仕事で重要なことはお客様とのコミュニケーションであるという考えから対話を重視している。中小企業の経営支援、スタートアップ支援、相続業務を得意としている。

相続税の申告に必要な書類は財産評価に必要なものと申告に必要なものがあります。

財産評価に必要なものは本文中に記述がある通り、預金口座の資料や不動産、有価証券などの資料はもちろんですが、債務や葬式費用の資料も相続税の課税価格を計算するうえでは必要です。

相続開始前3年以内の贈与財産や相続時精算課税適用財産がある場合はその資料も必要となるため忘れずに準備しましょう。申告に必要な資料は、贈与財産がある場合や税額控除などを受ける場合で異なります。

申告内容を問わず必要な資料は、申告者の本人確認資料としてマイナンバーを確認できる資料と記載されたマイナンバーの持ち主であることが確認できる書類です。マイナンバーカードがあれば問題ありません。無い場合は通知カードや住民票の写しに加え運転免許証や公的医療保険の被保険者証などが必要です。

被相続人の全ての相続人を明らかにする資料も提出を求められます。戸籍の謄本または法定相続情報一覧図がこれに該当します。

このほかにも相続時精算課税適用者がいる場合は被相続人の戸籍の附票の写しの提出が求められます。配偶者の税額軽減の適用を受ける場合は遺言書又は遺産分割協議書の写しと相続人全員の印鑑証明書が必要です。

このように相続税の申告に準備すべき資料は非常に多岐にわたります。申告の際にどのような資料が必要になるのか不安がある方は専門家へ相談してみることをおススメします。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

相続・事業承継対策の依頼にお困りではありませんか?

もしも今現在、

  • 相続・事業承継に詳しい専門家が見つからない
  • 税制度の変更に対応した対策がわからない
  • 税理士・公認会計士の費用相場がわからない

上記のようなお困りがありましたら、比較ビズへお気軽にご相談ください。比較ビズでは、複数の税理士・公認会計士に一括で見積もりができ、相場感や各社の特色を把握したうえで業者を選定できます。見積もりしたからといって、必ずしも契約する必要はありません。まずはお気軽にご利用ください。

相続・事業承継対策に対応できる業者を一覧から探す

比較ビズでお仕事を受注したい方へ

資料請求はこちら