アプリケーションサーバとWebサーバの違いは?役割や機能の観点から解説
- アプリケーションサーバとWebサーバの違いは?
- アプリケーションサーバの役割や機能って?
- 代表的なアプリケーションサーバは?
アプリケーションサーバとWebサーバは似通っているため、違いを理解するのが難しいです。それぞれの役割や機能を理解し、区別できるようにしましょう。
本記事ではアプリケーションサーバとWebサーバの違いを解説します。最後まで読むと、アプリケーションサーバとWebサーバのそれぞれの特徴が理解でき、使い分けられるようになるでしょう。
「アプリケーションサーバとWebサーバの違いがわからない」と悩む方はぜひ参考にしてください。
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アプリケーションサーバとは?
アプリケーションサーバとは、Ruby、Javaなどのプログラミング言語で構築されるアプリケーション(プログラム)を動作させるためのサーバサービスのことです。APサーバと略称される場合もあります。
クライアントPCで個別に利用するアプリケーションソフトウェアと異なり、複数ユーザーでの共有が必須のWebアプリケーションや業務システムは、プログラムが動作するサーバにネットワーク経由で接続する必要があります。この接続先のサーバで動作するアプリケーション(プログラム)を下支えする存在となるのが「アプリケーションサーバ」です。
一般的には、サーバを動作させるサーバOS(オペレーティングシステム)の上層にアプリケーションサーバが乗り、その上層にプログラムが乗ると考えておけばいいでしょう。
アプリケーションサーバはソフトウェア?ハードウェア?
ここまでの解説で、アプリケーションサーバ=ソフトウェアだと感じた方が多いかもしれません。しかし、それは正しい認識ですが、必ずしも正解ではないことに注意が必要です。
アプリケーションサーバは、プログラムを動作させる「サーバサービス=ソフトウェア」ではありますが、アプリケーションサーバが独立して動作する「サーバコンピューター=ハードウェア」も、アプリケーションサーバと呼ぶからです。
ただし、システムを構成するOSやプログラムが1台のサーバコンピューターに集約されている場合、それは単なる「サーバ」であり、アプリケーションサーバと呼ばれることはありません。
アプリケーションサーバを理解しにくくしている要因のひとつはここにあります。混乱を避けるためにも、以下からは主に、ソフトウェアとしてのアプリケーションサーバを解説していきます。
アプリケーションサーバ = ミドルウェア?
サーバサービスとしてのアプリケーションサーバは、上述したように「サーバOSとプログラムの間」に位置するソフトウェアです。このようなソフトウェアをインフラストラクチャー(インフラ)の世界では「ミドルウェア(Middleware)」と呼びます。
サーバOSの役割が、入出力をはじめとしたハードウェア(サーバコンピューター)の管理である一方、プログラム(アプリケーション)の役割は、ユーザーであるクライアントPCにサービスを提供することです。
ではミドルウェアであるアプリケーションサーバの役割はなにか?それぞれ役割の異なる「サーバOS」と「プログラム」を橋渡しすることだといえるでしょう。
アプリケーションサーバの役割・機能
アプリケーションサーバの持つ、もうひとつの重要な役割は「土台としてのプログラム開発プラットフォーム」です。では「開発プラットフォーム」と「サーバOSとプログラムの橋渡し」という役割のあるアプリケーションサーバには、どのような機能が搭載されているのか?以下から主要な機能を簡単に解説していきます。
データベース接続などのコネクト機能
Web・業務アプリケーションでは、基本的にデータをクライアントPCに保存しないため、データ管理・処理用の「データベース」をサーバ側で備えているのが一般的です。
アプリケーションサーバには、データベースと接続してデータの読み書きを実行する、プログラムと接続してリクエストを受付けるなどの「コネクト機能」が搭載されています。
トランザクション管理機能
データの完全性・整合性が求められるWeb・業務アプリケーションでは、データのトランザクション管理が非常に重要です。このトランザクション管理も、アプリケーションサーバに標準で搭載される機能です。
- トランザクション
分離させることのできない複数の処理を1つにまとめたもの
たとえば、銀行振り込みを例にして解説すると、
処理1 | 残高1万円の口座Aから5,000円を口座Bに振り込み、口座Aの残高を5,000円にする |
---|---|
処理2 | 口座Aからの振り込みを受け付け、残高1万円の口座Bの残高を1万5,000円にする |
これらを一つずつ実行すると、なんらかの理由で「処理1」で止まってしまった場合、データの整合性が取れなくなります。一方、複数処理をひとつにまとめるトランザクションなら、途中で止まってしまった処理は「失敗」と見なされ、最初の段階に戻せます。
ビジネスロジックの実装
データベースの読み出し・書き込みといった処理手順の総称「ビジネスロジック」を実装しているのもアプリケーションサーバの特徴です。ビジネスロジックには明確な定義というものがないため、開発会社やエンジニアによって捉え方は異なりますが、主に以下のような機能が実装されていると考えておけばいいでしょう。
機能名 | 概要 |
---|---|
リモート通信機能 | 分離されたコンピューター同士の通信を行う |
メッセージ機能 | メッセージの送受信と非同期処理 |
ディレクトリ機能 | ディレクトリサービスとの接続 |
認証機能 | ユーザーの認証・接続の許可を管理 |
アプリケーションサーバを含む3層アーキテクチャー
アプリケーションサーバを含め、業務システムが構築されたサーバコンピューターに、ネットワーク経由で複数クライアントPCを接続して活用するシステムを「クライアント・サーバシステム」と呼びます。
イントラネット接続を前提にした小規模システムなら、システムを1台のサーバコンピューターに構築することも可能です。
しかし、システム規模が大きくなれば、サーバコンピューターにかかる負荷も高まります。これを回避するために一般化したのが、プレゼンテーション層、アプリケーション層、データ層の3つにシステムを分散させる「3層アーキテクチャー」です。
3層アーキテクチャーでは、端末であるクライアントPCが「プレゼンテーション層」、OS + アプリケーションサーバ + プログラムで構築されたサーバが「アプリケーション層」、データベースの構築されたサーバが「データ層」となることがわかります。
このケースでは、アプリケーション層となるサーバコンピューターそのものを、アプリケーションサーバと呼ぶ場合があります。
Web3層構造とは?
従来の3層アーキテクチャーでは、プレゼンテーション層に専用の「クライアントソフトウェア」が使われる場合もありました。しかし、これは開発コストの高騰につながります。
そのため、現代ではクライアントソフトとして「Webブラウザ」を活用することが一般化しています。これを支える仕組みが「Web3層構造」です。
Web3層構造は、プレゼンテーション層で「Webブラウザ」を活用する一方、アプリケーション層・データ層が「Webサーバ」「アプリケーションサーバ」「データベース」の3つに分類されたもの、そう考えればわかりやすいかもしれません。
Webサーバとは?
それでは、WebサーバはWeb・業務システムのなかでどのような役割を果たしているのか?インターネット通信プロトコルである「HTTP」を利用し、Webブラウザからのユーザーリクエストを受け付け、アプリケーションサーバからのレスポンスを返す役割を担うのがWebサーバです。
「Apache HTTP Server」「IIS」「lighttpd」などが主なWebサーバ=ソフトウェアですが、それぞれがアプリケーションサーバと接続するための「モジュール」を持つのが特徴です。
一方、Webサーバ自体が、ユーザーリクエストに応じて「HTMLで記述されたコンテンツ」をレスポンスできるため、HTMLサイトであればWebサーバ単体でもサービスを提供できます。
Webサーバとアプリケーションサーバの違い
ここまでの解説で、役割や機能を含め、Webサーバとアプリケーションサーバがまったく異なるものであることが理解できたのではないでしょうか?
それにもかかわらず、Webサーバとアプリケーションサーバを混同してしまうのは、アプリケーションサーバの機能を持つWebサーバが存在する、あるいはその逆もあるからだと考えられます。
たとえば、上述した「Apache HTTP Server」は、PHP向けのアプリケーションサーバ機能を持つWebサーバです。つまり、WordPressとApache HTTP Serverを組み合わせれば、アプリケーションサーバがなくてもWebサイトを構築できます。
Webアプリケーションサーバとの違い
もうひとつ、アプリケーションサーバを理解しにくいものとしている要因に、Webサイトのサーバで活用される「Webアプリケーションサーバ」の存在があります。
両者には共通点も多く、明確な違いというものはありませんが、強いて挙げるなら、Webサイト・ECサイトなど「Webサービスに特化したアプリケーションサーバ」をWebアプリケーションサーバと呼ぶ傾向があるようです。
ただし上述したように、HTMLサイトなどの静的Webサイト、あるいはWordPressにApache HTTP Serverを組み合わせたWebサイトはWebサーバだけでも動作するため、Webアプリケーションサーバを持たない場合もあります。
どんなアプリケーションサーバがある?
ミドルウェアとして重要な役割を果たすアプリケーションサーバには、無償・有償を含め、さまざまな汎用製品がリリースされています。Java向けを中心に代表的なものを一部紹介しておきましょう。
製品名 | プログラミング言語 |
---|---|
Apache Tomcat | Java |
Apache Geronimo | Java |
WebLogic Server | Java |
WebSphere Application Server | Java |
Unicorn | Ruby |
Puma | Ruby |
Rainbows | Ruby |
アプリケーションサーバを活用するメリット
それでは、Webアプリケーションや業務システムなどを開発する際に、アプリケーションサーバを活用することによってどのようなメリットが得られるのか?簡単に下記の点を解説していきましょう。
- 開発工数を削減できる
- 分散処理によるパフォーマンス向上
- メンテナンス・アップデート・トラブルシュートが容易
- セキュリティを担保しやすい
開発工数を削減できる
アプリケーションサーバにはコネクト機能、トランザクション機能をはじめ、数々のビジネスロジックがあらかじめ実装されでいます。これらの機能は、エンタープライズ向けのシステム開発に欠かせないものだといえるでしょう。
つまり、開発するシステムに必要な機能があらかじめ実装されているアプリケーションサーバを活用すれば、プログラム全体の開発工数を削減できます。
分散処理によるパフォーマンス向上
3層アーキテクチャーの項目でも触れた通り、近年のWeb・業務アプリケーションでは、役割に応じてサーバを分離させた分散処理を採用する例が増えています。
複数のサーバコンピューターを用意する必要があるため、コスト面でのデメリットはありますが、サーバ1台あたりの負荷を減らすことで、パフォーマンスの向上が臨めるからです。
Webサーバ、データベースとのコネクト機能を備えるアプリケーションサーバを活用すれば、簡単に分散処理システムが構築できます。
メンテナンス・アップデート・トラブルシュートが容易
3層アーキテクチャーによる分散処理は、メンテナンス・アップデート・トラブルシュートが容易という、パフォーマンスだけではないメリットも享受できます。クライアント・サーバシステムなら、プログラムのアップデートやメンテナンスはサーバ側だけでOKです。
トラブル発生時もWebサーバ、アプリケーションサーバ、データベースが分かれているため、トラブルの要因を切り分けながら探っていけます。
セキュリティを担保しやすい
3層アーキテクチャーによる分散処理は、セキュリティを担保しやすいというメリットもあります。たとえば、1台のサーバコンピューターにシステムが集約されている場合、データベースにクライアントが直接アクセスできてしまいます。
万一、クライアントが乗っ取られる事態になれば、重要な情報が抜き取られないとも限りません。一方、サーバコンピューターが分離された状態なら、それぞれのサーバ間にセキュリティ製品を設置するなどの対策が可能です。エンタープライズシステムとしての堅牢性・機密性の確保にも役立ちます。
SEがアプリケーションサーバを活用したがらない?
アプリケーションサーバはシステム開発において、非常に重要な位置を占めるミドルウェアですが「アプリケーションサーバがなければシステム開発できない」というわけではありません。
事実、システム開発の際に、アプリケーションサーバを活用したがらないシステムエンジニア(SE)は少なくないといわれています。
システム開発会社によって事情は異なるかもしれませんが、ミドルウェアとしてのアプリケーションサーバの機能を調べる時間がない、面倒だ、それなら自分でプログラミングしてしまった方が早い、といったSE側の理由があるのかもしれません。
システム開発でアプリケーションサーバを活用しないと?
それでは、アプリケーションサーバを活用せずにシステム開発するとどうなるのか?上述したように、アプリケーションサーバにはコネクト機能、トランザクション機能をはじめ、エンタープライズシステムに必要な数々のビジネスロジックがあらかじめ実装されでいます。
アプリケーションサーバを活用しないということは、実装されている必要な機能をゼロから開発しなければならないことを意味します。
開発工数の増加・コストの増大
つまり、アプリケーションサーバを活用しなければ、必然的に開発工数は増加します。工数が増えれば、コストが増大するのは当然であり、機能の作り込みに時間がかかれば、想定した納期に間に合わないといった弊害も起こる可能性があるでしょう。
もちろん、アプリケーションサーバを活用していても、その機能をしっかりと熟知して活用できなければ、すでにある機能を新たに作ってしまうなど、ムダな工数とそれにともなうデバッグ作業が必要になってしまいます。
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理解しにくい、曖昧な定義のアプリケーションサーバとはなにか?本記事では、その基本や役割をできる限りわかりやすく解説してきました。ミドルウェア、特にアプリケーションサーバは、クライアント企業が特に意識しない要素ではありますが、システム開発のコスト・納期にも関連する重要な要素です。適切なコスト・納期で効率的にシステムを開発するためにも、パートナーとなるシステム開発会社の選定が非常に重要です。
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ここでの動的コンテンツとは、PHP、Java、Ruby(Ruby on Rails)、Pythonなどのサーバサイド言語で生成されたプログラムを指しています。大半の企業ホームページには問い合わせフォームが設置されているかと思います。
問い合わせフォーム上で必要項目を入力し、下端に設置された送信ボタンを押下すると、「問い合わせを受け付けしました。」などといった自動配信メールが返ってきますよね。あちらもPHPなどのサーバサイド言語で生成されたプログラムによって、機械的に配信されるもので、動的コンテンツの一種になります。
もう片方の静的コンテンツとは、HTML(主はテキストなどの文字情報)、CSS(主は色合い、見映えなどのデザイン)、画像といったブラウザ上で機械的な動き(プログラムによる操作)を伴わないものを指しています。2種類のサーバは「役割が違うもの」と覚えると良いのではないでしょうか。
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