使用貸借は相続できる?トラブルを防ぐために知っておくべきこと

こしだ司法書士事務所
監修者
こしだ司法書士事務所 司法書士 越田一希
最終更新日:2023年09月15日
使用貸借は相続できる?トラブルを防ぐために知っておくべきこと
この記事で解決できるお悩み
  • 使用貸借は相続の対象になる?
  • 使用貸借が相続できるのはどんなケース?
  • 使用貸借の相続税計算方法は?

「使用賃貸の貸主・借主が亡くなったが相続はできる?」とお悩みの方、必見です。使用貸借は貸主と借主の立場によって相続の可否が変わります。

この記事では、使用賃貸が相続の対象となるケースや使用貸借の相続税について解説します。最後まで読むと、使用賃貸を相続できるかがわかり、相続税はどれくらいかをイメージできるでしょう。

使用賃貸の相続で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

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使用貸借とは他人の所有物を無償で借りる契約

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使用貸借とは、他人の所有物を無償で借りる契約のことです。親が所有している土地に子どもが家を建てて住むケースでは、子どもが親に使用料を支払っていない限り使用貸借となります。

使用貸借は、借主と貸主の信頼関係により成り立っているため、第三者に使用させてはいけません。親が所有している土地を子どもが借り、第三者にまた貸しして利益を得ることは禁止されています。親の承諾を得た場合はこの限りではありません。

使用貸借の契約は、基本的に当事者のどちらかが亡くなった時点で契約が終了します。

賃貸借との違い

使用貸借と賃貸借の違いは無償か有償かという点です。無償の場合は使用貸借、有償の場合は賃貸借となります。子どもが賃料を支払い親の土地を使っているケースでは、使用貸借ではなく賃貸借とみなされるでしょう。

民法第595条1項によれば、使用貸借では借主が借用物の通常の必要費を負担することが定められています。固定資産税や都市計画税は必要費に含まれると考えられるため「税金を支払っているから使用貸借である」とは主張できません。使用賃借か賃貸借の判断は簡単ではないため注意しましょう。

使用貸借の相続ができるかは貸主・借主の立場により決まる

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使用貸借が相続の対象になるかどうかは、貸主と借主の立場によって異なります。

亡くなった方が土地の貸主の場合、使用貸借契約は相続の対象になります。相続人が貸主の立場を相続し、使用貸借契約は引き続き有効です。契約書に貸主が亡くなった場合に契約は終了する旨が記載されていれば、契約は終了します。

亡くなった方が土地の借主の場合、基本的に使用賃借契約は相続の対象になりません。相続人は土地を原状回復したうえで返却する義務が生じます。特約で契約が続くケースや、相続人と貸主の間で新たな使用賃借契約が結ばれた場合は、契約が続くでしょう。

使用貸借が相続の対象になる3つのケース

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借主が死亡した場合であっても、使用貸借が相続の対象となる3つのケースがあります。

  1. 特約があるケース
  2. 当事者間の合意があるケース
  3. 黙示の承諾があるケース

1. 特約があるケース

契約書に特約があると、使用貸借が相続できます。契約書に「借主が死亡した場合、相続人が使用賃借契約を相続する」と記載されていれば、相続の対象となります。

2. 当事者間の合意があるケース

特段契約書に特約がなくても、借主と貸主の間で合意があれば、使用貸借契約を相続できます。使用貸借契約の契約書が紛失している、親同士の口約束で契約をしたなどのケースも少なくありません。借主・貸主や相続人も同意があれば契約は続きます。

借主の死亡後も使用賃借契約をしている土地は必要とされるため、当事者の合意があれば相続人が契約を続けられるでしょう。

3. 黙示の承諾があるケース

使用賃借が相続の対象となりえる別のケースは、黙示の承諾がある場合です。黙示の承諾とは、黙っているもしくは異論を唱えないことで承諾の意思表示をすることです。

借主の死亡後も貸主が何も言わず借主の相続人に土地を使用させている場合、現状を黙認し異論がないと考えられ、承諾したとみなされる可能性があります。

借主の死亡後も貸主が賃料を受け取り続けることで黙示の承諾が成立します。使用賃借は無償であるため、黙示の承諾により契約が継続する余地が残る程度に考えましょう。

使用貸借の相続税と贈与税の取り扱い

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使用賃借契約を貸主の相続人が相続した場合、相続税がどの程度かかるのか把握することは重要です。基本的に使用貸借契約では、相続税は発生し贈与税は発生しません。

使用貸借は借地権と比較すると非常に弱い権利であるため、価額ゼロとして取り扱われます。使用貸借の相続税と贈与税の取り扱いを解説しましょう。

相続税は発生する

使用貸借を貸主の相続人が相続した場合、相続税が発生します。注意すべき点は、使用貸借契約が結ばれている土地の評価は、原則として更地評価です。土地の評価額や相続税額は、活用しやすい更地がもっとも高くなります。

土地に借主が使用している建物が建っている場合でも、使用貸借が非常に弱い権利であるため更地評価となります。地代を支払う賃貸借契約が結ばれていれば、土地や建物の評価額が減額されるでしょう。小規模宅地評価の特例が活用できれば、評価額を最大80%抑えることが可能です。

贈与税は発生しない

使用貸借では、贈与税は発生しません。子どもが親の土地を無償で借り受け、そこに家を建てて住んでいる場合、使用貸借は非常に弱い権利であるため、課税対象となる価額がゼロとなり、贈与税はかかりません。

土地を生前贈与する場合は贈与税が課税されます。贈与税や相続税のことを考慮し子どもの利益を最大にできる方法を検討しましょう。

使用貸借の相続税評価方法

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使用貸借の貸主が亡くなった場合、使用貸借契約は継続するため、相続人は貸している土地・建物の評価額から相続税の申告を行わなければなりません。

注意点は、借主が個人か法人かにより、相続税評価額が変化することです。正しい申告を行うために、評価方法の違いを理解しましょう。

借主が個人の場合

借主が個人の場合、相続人が受け継いだ土地は更地として相続税評価額が決まります。建物が存在していても小規模宅地等の特例を受けることはできません。

使用貸借契約は非常に弱い権利であり、借地権のように法的な保護受けられません。土地の大きさにより、高額な相続税が課税されるでしょう。

貸主が契約解除を希望し、契約書に特例が設けられていなければ、借主は原状回復して土地を返却する義務があります。

借主が法人の場合

借主が法人の場合「土地の無償返還に関する届出書」の提出の有無により評価方法が変わります。

「土地の無償返還に関する届出書」とは、法人が貸主に土地を無償返還することを約束するものです。権利金の支払い回避、貸主の所得税負担の軽減、小規模宅地等の特例適用の可能性などさまざまなメリットがあります。

届出を提出している場合、土地を借りている法人は賃借権であると認識しないため、個人のケースと同様に更地の相続税評価額を適用します。

届出を提出していない場合、土地の評価額から借地権を控除して相続税を決定します。法人が届出を提出していない方が、相続税評価額が下がることになるでしょう。

まとめ

使用貸借契約は、他人の所有物を無償で利用できる契約であり、土地の場合には基本的に貸主の相続人のみ相続が可能です。契約書の特約や当事者同士の合意によって契約内容は変化するため、トラブルを防ぐために契約書の確認や当事者同士の話し合いが不可欠であるといえるでしょう。

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監修者のコメント
こしだ司法書士事務所
司法書士 越田一希

1984年京都市生まれ。不動産・相続・会社の「登記」に必要な手続きを代理する専門家であり、若手ならではのフットワークの軽さと様々な職業経験で培った対応力を持つ法務大臣認定司法書士。自身が法律知識ゼロで資格学習を開始した経験から法律の適用や用語の難しさを理解しており、平易でわかりやすい説明を心がけており評価を得ている。

使用貸借は2020年の民法大改正の影響を受け、現在の法律上「典型」「不要式」「諾成」「無償」「片務」契約とされています。

・典型契約とは民法上に規定されている契約のことです。
(対義語:非典型契約)

・不要式契約とは、特別な方式を要しない契約のことで理論上は口頭での口約束レベルで成立する契約のことです。
(対義語:要式契約)

・諾成契約とは当事者の合意のみで成立する契約という意味です。
(対義語:要物契約)

・無償契約はそのままの意味です。タダであげる、タダで貸す契約のことです。
(対義語:有償契約)

・片務契約とは当事者の一方にのみなにかしらの義務がある契約ということです。
(対義語:双務契約)

この中で使用貸借において注意が必要なのが「不要式契約」です。原則的に、使用貸借における借主の借りる権利は相続人に相続されませんが、貸主側の貸す義務は相続人に相続されます。

という事は当事者の一方である貸主が死亡した場合は、使用貸借契約は継続することになるのですが、不要式契約だからという事で契約を口頭で行っていた場合、貸主の相続人に対して借主は使用貸借契約が存在することを証明することができません。

裁判で使用権を主張する必要が発生したり、あらたな契約を締結しないといけないなどの不都合が発生しないためにも、しっかりと使用貸借契約書類を作成するなど将来に禍根を残さないような対策が必要になってくるでしょう。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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