贈与税の基礎控除はいくら?賢い節税対策や注意点を解説!

竹中啓倫税理士事務所
監修者
竹中啓倫税理士事務所 税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫
最終更新日:2023年09月21日
贈与税の基礎控除はいくら?賢い節税対策や注意点を解説!
この記事で解決できるお悩み
  • 贈与税の基礎控除はいくら?
  • 贈与税の計算方法は?
  • 贈与税を賢く節税する方法は?

贈与税の基礎控除は受贈者1人あたり年間110万円です。贈与税は贈与総額から基礎控除を差し引いた金額にかかります。基礎控除について詳しく知っていると、節税対策に活かせるでしょう。

この記事では贈与税の基礎控除や計算方法について解説します。記事を読み終わる頃には、節税対策と注意点もわかり、適切に納税できるでしょう。贈与を検討している人はぜひ参考にしてください。

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贈与税の基礎控除は年間110万円

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贈与税の基礎控除は、年間110万円です。1回の贈与に対してではなく、1年間の合計に対して適用されます。個人から預貯金や不動産などの財産を譲り受けた場合、基礎控除の範囲内であれば贈与税がかかりません。

子どもへ100万円を贈与した場合、基礎控除の範囲内であるため贈与税は課税されません。ある年の4月と10月に子どもへ60万円ずつ贈与した場合、合計120万円の贈与とみなされるため、基礎控除を超えた10万円に対して贈与税が課税されます。

贈与税の基礎控除は受贈者ごとに与えられる枠

贈与税の基礎控除は、贈与者ではなく受贈者ごとに与えられます。受贈者1人あたり110万円の非課税枠があるため、受贈者の数によって大幅な節税が可能になることもあります。

500万円の預金を子どもに贈与するケースで考えましょう。子どもが1人の場合、基礎控除額を超えているため贈与税の課税対象となります。5人の子どもに均等に贈与した場合、1人あたりの金額は100万円となり基礎控除の範囲内に収まるため、贈与税の課税対象とはなりません。

贈与税の税率

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贈与税の税率は、基礎控除後の課税価格によって異なります。配偶者や兄弟姉妹からの贈与(一般税率)における相続税率は以下のとおりです。

  200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 - 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

直系尊属からの贈与(特例税率)における相続税率は以下のとおりです。

  200万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 4,500万円以下 4,500万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 - 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

参照:贈与税の計算と税率(暦年課税)

一般税率と特例税率の違い

贈与税の税率は、一般税率と特例税率の2種類あります。一般税率は、夫婦間や兄弟間のほかにも、受け取る子どもや孫が18歳未満の場合に適用されるものです。

特例税率は両親や祖父母などの直系尊属から贈与を受けたときに適用されます。贈与を受ける子どもや孫が贈与発生の1月1日の時点で18歳以上であれば特例税率が適用可能です。特例税率の方が低い税率、高い控除額が適用されます。

贈与税の計算方法

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贈与税は「(贈与総額−基礎控除)×税率」で計算します。

贈与税の計算は1月1日から12月31日まで

贈与税の計算は、毎年1月1日から12月31日までに贈与した合計額を基に行います。ある年に500万円の贈与を2回行った場合、1,000万円の贈与とみなされるでしょう。

年をまたいで500万円の贈与を2回行うケースでは、1,000万円の贈与とはみなされません。納めなければならない贈与税が大きく変わるため、注意が必要です。

贈与総額から基礎控除110万円を差し引く

贈与総額が決まったあと、基礎控除110万円を差し引いて課税価格を算出します。前述の例では1,000万円-110万円=890万円が贈与税の課税価格です。

2年に分けて贈与を行った場合、それぞれの年の課税価格は「500万円-110万円=390万円」となります。課税価格が大きく異なるため、贈与税額を減らすことが可能です。

課税価格に税率をかけて贈与税を算出する

課税価格を算出後、該当する税率をかけて贈与税を算出します。890万円が課税価格の場合、特例税率は30%、控除額は90万円です。贈与税額は890万円×30%−90万円=177万円と計算されます。

年をまたいで贈与するケースでは、課税価格390万円、特例税率15%、控除額10万円です。贈与税額は「390万円×15%−10万円=48万5,000円」となります。2年で合計97万円の贈与税を支払うことになり、1年間に1,000万円の贈与を行った場合と比較して80万円の節税になるでしょう。

贈与税の節税対策5選

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贈与税の効果的な節税対策には以下の5つがあります。

  1. 基礎控除の範囲で贈与を行う
  2. 相続時精算課税を利用する
  3. 贈与税の配偶者控除を活用する
  4. 住宅取得等資金の非課税を利用する
  5. 結婚・子育て・教育資金の非課税を活用する

1. 基礎控除の範囲で贈与を行う

もっとも簡単な節税対策として、基礎控除の範囲内で贈与を行う方法が挙げられます。贈与税には110万円の基礎控除が設定されているため、その範囲内であれば贈与税がかかりません。基礎控除は受贈者ごとに設定されているため、複数の子どもにそれぞれ年間110万円まで贈与税なしで贈与できます。

総額約1,000万円の財産を子どもに残すとしましょう。1度に1,000万円の贈与を行うとかなりの贈与税がかかりますが、数年間基礎控除以下の贈与を続ければ、非課税ですべての財産を渡せます。

2. 相続時精算課税を利用する

相続時精算課税制度とは、60歳以上の両親や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与は、最大2,500万円の特別控除が適用される制度です。

2024年からは、特別控除とは別に基礎控除110万円も設立されます。2,500万円を超えた部分には、一律20%の税率が適用されることを覚えておきましょう。

将来の相続財産が基礎控除の範囲内であるケースでは、贈与税と相続税のどちらも節税できるため非常に有効な方法です。相続時精算課税制度を利用すると、暦年贈与が一切行えなくなるため、利用するかどうか慎重に判断しなければなりません。

3. 贈与税の配偶者控除を活用する

既婚者の場合、贈与税の配偶者控除を活用できます。贈与税の配偶者控除は、結婚して20年以上の夫婦間の贈与に対して最大2,000万円の控除が適用される制度です。贈与税の基礎控除110万円とあわせて2,110万円が非課税となります。

この特例を適用できるのは、受贈者は贈与された不動産に住む、贈与されたお金を使い居住用不動産を購入する場合です。同じ配偶者からの贈与は一生に1度しか利用できない点にも注意しましょう。

4. 住宅取得等資金の非課税を利用する

親や祖父母が、子どもや孫に対して住宅取得を支援する場合、住宅取得等資金の非課税制度を利用できます。2023年12月31日まで20歳以上の子どもや孫に対して親や祖父母が住宅取得のために行った贈与は最大1,000万円まで非課税になります。

通常の基礎控除に加えて1,000万円の非課税枠が設定されるため、最大1,100万円を非課税で贈与可能です。デメリットは、贈与税がかからない場合でも申告が必要、小規模宅地等の特例が使えなくなるなどが挙げられます。

制度を利用する際、税理士のアドバイスを受けることをおすすめします。

5. 結婚・子育て・教育資金の非課税を活用する

親や祖父母が子どもや孫に対し、結婚や子育て、教育資金を目的とした贈与を行った場合、一定金額が非課税となります。

教育資金は30歳未満の子どもや孫に対して1,500万円まで、結婚・子育て資金は18歳以上50歳未満の子どもや孫に対して1,500万円までが非課税になります。

相続が発生した場合、受贈者が贈与された金銭の残高に対して相続税が課税されるため、注意しましょう。結婚・子育て資金は、受贈者が50歳を迎えた時点で残高があると贈与税が課されます。

贈与税節税の注意点4つ

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贈与税を節税する際、以下の4つの点に注意しましょう。

  1. 定期贈与とみなされるケース
  2. 名義預金とみなされるケース
  3. 生前贈与加算されるケース
  4. 一般税率と特別税率が混在するケース

1. 定期贈与とみなされるケース

贈与税を節税するために基礎控除以下の贈与を続けていても、定期贈与とみなされれば受贈者に贈与税が課税されます。定期贈与とは、毎年一定の金額を贈与すると決まっている贈与のことです。1,000万円を10年にわけて贈与すると決めて行われた贈与は定期贈与とみなされます。

定期贈与に対しては、定期金に関する権利を受けたものとして、定期贈与の取り決めを行った年に贈与税が課税されるでしょう。定期贈与とみなされないようにするため、毎回の贈与で贈与契約書を作成する、贈与の時期や金額を毎年変更するなどのポイントを押さえておく必要があります。

2. 名義預金とみなされるケース

贈与税を節税しようとしても、名義預金とみなされれば贈与税がかかります。名義預金とは、銀行口座の名義人と管理している人が異なる口座のことです。親や祖父母が子どもや孫のために口座を作り、預金しているケースが該当します。

贈与税の基礎控除内に収まる110万円以下を口座に振り込んでいたとしても、名義人が預金の存在を知らなった場合、相続税が課税されるため注意が必要です。名義人が預金の存在を知っていたと証明できれば生前贈与とみなしてもらえます。贈与のたびに贈与契約書を作るのが効果的な対策です。

3. 生前贈与加算されるケース

贈与税の節税のため生前贈与を活用する人は多いですが、生前贈与加算されるケースに注意しなければなりません。生前贈与加算とは、被相続人の死亡から3年以内の贈与に関しては、贈与額を相続税の課税価格に加算することです。贈与税を支払っている場合、相続税との差額を支払います。

生前贈与加算は、相続税節税のための駆け込み贈与を防ぐための制度です。生前贈与を検討している場合には、できるだけ早く手続きを始めるのが得策です。2024年1月1日以降の贈与からは生前贈与加算が7年に延長されるため、贈与税や相続税の計算の際、さらに注意が必要となるでしょう。

4. 一般税率と特例税率が混在するケース

贈与税の計算をする際、一般税率と特例税率が混在するケースがあります。父親から400万円、配偶者から600万円の贈与を受けたとしましょう。すべての財産を対象に一般税率と特例税率の両方を使って贈与税額を計算し、財産の割合に応じて税額を按分して合計します。

課税価格は「1,000万円−110万円=890万円」となり、特例税率による贈与税額は177万円、一般税率による贈与税額は「890万円×40%−125万円=231万円」です。特例税率の割合は40%、一般贈与の割合は60%であるため、贈与税額は「177万円×40%+231万円×60%=209万4,000円」となります。

まとめ

贈与税の基礎控除は一律110万円であり、110万円以下の贈与に対しては贈与税がかかりません。基礎控除以下の贈与だけではなく、相続時精算課税制度や住宅取得等資金の非課税などを利用して、効果的な節税が可能です。財産を少しでも多く残すため、さまざまな節税方法を活用しましょう。

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監修者のコメント
竹中啓倫税理士事務所
税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫

岐阜県出身。上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。

相談者の方から、基礎控除110万円を利用して無税で財産を子供や孫に動かしたい、という要望をしばしば聞きます。過去にご相談をお受けしたケースで、お孫さんが生まれた時から、毎年110万円ずつ贈与したから現在〇〇〇円溜まったから、一括で現預金を動かしたい、という内容でした。

その時は、その時点で本当に贈与していたことを証明できないし、現預金も動いていないから困難であると、お断りしています。

別の(方)時には、110万円づつ土地を贈与したから、一括で所有権移転を動かしたいというご依頼もありましたが、そもそも連年の贈与のエビデンスをご用意くださいとお断り申し上げております。

基礎控除を利用した連年贈与は、その手間から「まとめて」遡りで実施したい、という話は後を絶ちませんが、これは認められません。現在では、相続時精算課税や住宅資金贈与特例等の制度は充実してきておりますので、それらをメインにして、基礎控除を利用した相続対策は、プラスアルファと考えられる方が賢明かと思われます。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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