65歳超雇用推進助成金とは?3つのコース紹介や申請時のポイントを解説
- 65歳超雇用推進助成金とは?
- 65歳超雇用推進助成金のコースは?
- 65歳超雇用推進助成金のメリットは?
65歳超雇用推進助成金とは、高年齢者の雇用環境改善を行った事業者に対する助成です。申請にはいくつかの要件があります。
この記事では、65歳超雇用推進助成金の3つのコースを知りたい経営者・企業担当者に向けて、コース内容の要件・手続きを紹介します。記事を読み終わった頃には、65歳超雇用推進助成金の活用におけるメリット・注意点がつかめるでしょう。
「65歳超雇用推進助成金で65歳以上への定年引上げ・高年齢者を雇用る管理の整備がしたい」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
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65歳超雇用推進助成金とは:高齢者の雇用環境改善への助成金
65歳超雇用推進助成金とは、高齢者の雇用を推進する制度を整備する事業者に対して支援を行う制度です。高齢者の雇用促進を目的としており、65歳以上への定年の引き上げ・高齢者を雇用る管理規定を整備するなどが支給要件として挙げられます。
65歳以上への定年引き上げ・管理規定の整備は、具体的に高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換です。
65歳超雇用推進助成金における3つのコース
65歳超雇用推進助成金における3つのコースを紹介します。
- 65歳超継続雇用促進コース
- 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
- 高年齢者無期雇用転換コース
65歳超継続雇用促進コース
65歳超継続雇用促進コースは、以下のいずれかを採用した際に事業主が助成金を受けることができるコースです。
- 65歳以上への定年引上げ
- 定年の定めの廃止
- 希望者全員を該当とする66歳以上の持続雇用規定の採用
- 他社による継続雇用制度の導入
助成を受ける要件
助成金を受ける主な要件は以下のとおりです。
- 制度を規定した際に費用を要した事業主であること
- 制度を規定した労働協約・就業規則を整備している事業主であること
上記の他にも以下の要件があります。
- 処置施行の6カ月前の日から給付申請日の前日までの間に 高年齢者雇用安定法第8条・第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと※1
- 給付申請日の前日において1年以上持続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること
- 高年齢者雇用等推進者の選任および高年齢者雇用管理においての処置を1つ以上施行している事業主であること
※1 同法第10条の3第2項に基づく勧告を受けていないこと
助成を受ける手続き
助成金を受け取るためには、処置の施行日が属する月の翌月から起算して4カ月以内の各月はじめから5開庁日までに、必要書類を提出します。提出期間は、行政機関の休日・土曜日・日曜日・国民の祝日に関する法律に規定する休日、および12月29日から翌年1月3日までは除きます。
助成の支給額
支援給付額は以下のとおりです。
【65歳以上への定年引上げ】
対象者数 | 65歳以上への引き上げ | 66〜69歳への引き上げ | 70歳以上 | |
---|---|---|---|---|
引き上げ幅5歳未満 | 引き上げ幅5歳以上 | |||
1〜3人 | 15万円 | 20万円 | 30万円 | 30万円 |
4〜6人 | 20万円 | 25万円 | 50万円 | 50万円 |
7〜9人 | 25万円 | 30万円 | 85万円 | 85万円 |
10人以上 | 30万円 | 35万円 | 105万円 | 105万円 |
【定年の定めの廃止】
対象者数 | 支給額 |
---|---|
1〜3人 | 40万円 |
4〜6人 | 80万円 |
7〜9人 | 120万円 |
10人以上 | 160万円 |
【希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入】
対象者数 | 66〜69歳までの継続 | 70歳以上までの継続 |
---|---|---|
1〜3人 | 15万円 | 30万円 |
4〜6人 | 25万円 | 50万円 |
7〜9人 | 40万円 | 80万円 |
10人以上 | 60万円 | 100万円 |
【他社による継続雇用制度の導入】
他社による継続雇用の年齢 | 66〜69歳 | 70歳未満から70歳以上 |
---|---|---|
支給の上限額 | 10万円 | 15万円 |
各処置を施行する場合、施行前の定年・持続雇用年齢が70歳未満である場合に受給できます。他社による継続雇用制度の導入の場合、他の事業主における持続雇用年齢も同様です。
他社による継続雇用制度の導入は、給付額を上限に、他社における規定の採用に要した経費の1/2の額を受給できます。
高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
高年齢者評価制度等雇用管理改善コースは、一部費用の助成金を受け取ることができるコースです。高年齢者向けの持続雇用管理規定の整備にかかる処置を施行した事業主が受給できます。
助成を受ける主な要件
助成金を受け取る主な要件は以下のとおりです。
- 「雇用管理整備計画書」を提出しており計画内容において認定を受けていること
- 計画に基づき高年齢者雇用管理整備の処置を施行していること
- 処置の施行状況・雇用管理整備計画の終了日の翌日から6カ月間の運用状況を明示する書類を整備している事業主であること
- 雇用管理整備の処置の施行に要した給付該当費用を給付申請日までに支払ったこと
助成を受ける他の要件
助成金を受け取る他の要件は以下のとおりです。
- 提出日から起算して6カ月前から給付申請日の前日までの間に高年齢者雇用安定法第8条・第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと※1
- 給付申請日の前日において1年以上持続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いる事業主であること※2
※1 同法第10条の3第2項に基づく勧告を受けていないこと
※2 講じられた高年齢者雇用管理整備の処置により雇用管理整備計画の終了日の翌日から6カ月以上持続して雇用されている者
助成を受ける手続き
助成金を受け取るためには、2回の手続きが必須です。計画開始の3カ月前の日までに、雇用管理整備計画の認定申請をします。計画期間内に給付該当処置を行ったあと、計画期間終了日の翌日から6ヵ月後の日の翌日から2ヵ月以内に給付申請を行います。
助成対象となる経費
支援該当となる費用は以下のとおりです。
- 雇用管理規定の採用に必須な専門家に対する委託費・コンサルタントとの相談に要した費用
- 処置の施行にともない必須となる機器・システム・ソフトウェアなどの採用に要した費用
上記の給付該当経費の額に以下の助成率を乗じた額を受給できます。
中小企業事業主 | 中小企業事業主以外 |
---|---|
60% | 45% |
助成対象となる経費
施行期間は1年以内で、該当となる処置は以下のとおりです。
- 高年齢者の職業能力を評する仕組みと賃金・人事処遇規定の導入または改善
- 高年齢者の希望に応じた短時間勤務規定・隔日勤務規定などの導入または改善
- 高年齢者の負担を軽減するための在宅勤務規定の導入または改善
- 高年齢者が意欲・能力を発揮して働けるために必須な知識を付与するための研修規定の導入または改善
- 高年齢者に適切な役割を付与する規定の導入または改善
- 法定外の健康管理規定(胃がん検診・生活習慣病予防検診など)の導入
高年齢者無期雇用転換コース
高年齢者無期雇用転換コースは、50歳以上・定年年齢未満の有期契約就業者を、無期雇用に移行させた事業主が助成金を受け取ることができます。該当就業者1人につき、以下の金額が支払われます。
中小企業 | 中小企業以外 |
---|---|
48万円 | 38万円 |
※生産性要件を満たす場合は60万円(中小企業事業主以外は48万円)
※給付申請年度に1適用事業所あたり10人まで
助成を受ける主な要件
助成金を受け取る主な要件は以下のとおりです。
- 「無期雇用転換計画書」の計画内容において認定を受けていること
- 有期契約就業者を無期雇用就業者に移行する制度を労働協約・就業規則などに準ずるものに規定していること
- 雇用する50歳以上・定年年齢未満の有期契約就業者を無期雇用就業者に移行すること
- 移行された就業者を移行後6カ月以上の期間持続して雇用すること※1
- 高年齢者雇用安定法の規定に違反していないこと
※1 就業者に対して移行後6ヵ月分の賃金を支払うこと
助成を受ける他の要件
以下も助成を受ける要件となります。
- 高年齢者雇用安定法第8条・第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと
- 同法第10条の3第2項に基づく勧告を受けていない事業主であること
期間は、提出日から起算して6カ月前の日から給付申請日の前日までの間となります。
助成を受ける手続き
助成金を受け取るためには、計画開始から起算して6カ月前の日から3カ月前(※1)までに申請する必要があります。
※1 計画の実施期間の開始日が令和4年9月30日までのものは2カ月前
65歳超雇用推進助成金を受けるメリット
助成金を受け取るメリットは、高齢者の雇用状況改めの採用にかかった一部の費用が戻ってくることです。労働力を確保して人材不足を解消できるだけではなく助成金も受け取れます。
「高年齢者が年齢に影響を受けることなく働ける職場づくり」に取り組む企業として、消費者へのアピールにもなります。
65歳超雇用推進助成金申請における就業規則整備の3つの注意点
65歳超雇用推進助成金申請における就業規則整備の注意点は3つあります。
- 取り組み施行前に就業規則を整備する
- 社労士へ相談する
- 高齢者雇用継続安定法を遵守する
取り組み実施前に就業規則を整備する
各助成金の申請に必須な取り組みは、就業規則で規定化を行ったうえで施行することが大切です。高齢従業員の雇用契約の延長・定年の定めの廃止などの取り組みを行う前に、社労士・専門のコンサルタントへ相談・依頼するのがおすすめです。
助成金の申請は、企業が相談に要した報酬の全額を、経費として負担している必要があります。社労士・専門のコンサルタントに相談・依頼することでスムーズな申請が可能です。
社労士へ相談する
就業規則の相談・依頼をする場合は社労士がおすすめです。就業規則の作成・整備などを有償で行うことは社労士の独占業務であるためです
助成金は、弁護士・一部の行政書士などへの相談でも給付該当になりますが、知識・最新情報などの面でも社労士が適任といえるでしょう。
労働協約の場合、コンサルタントへの依頼も助成金の給付該当となります。注意点は、過去に同様の業務実績があり、事業の実態が確認できる人(法人)に限られることです。つまり、助成金の対象にはなりません。
無資格者による助成金の不正受給が多発しているため、問題視されています。依頼先選びは慎重に行うようにしましょう。
高齢者雇用継続安定法を遵守する
助成金の受給に対して整備・制定する就業規則の内容は、最新の高齢者雇用継続安定法を遵守しなければいけません。定年規定廃止の取り組み施行日の6カ月前から給付申請日の前日までの期間は、高年齢者雇用安定法第8条・第9条第1項を満たす必要があります。
高年齢者雇用安定法第8条では、定年の年齢を60歳以上としています。第9条第1項は、65歳までの雇用を確保するために定年の引き上げの措置を講じる義務を課すものです。
上記法律の規定内容となっている場合、就業規則を変えて取り組みを再開が必要になります。取り組みの再開から再度6カ月の期間を要することになるため、注意しておきたいところです。
65歳超雇用推進助成金を申請する際の2つのポイント
65歳超雇用推進助成金を申請する際のポイントを2つ紹介します。
- 独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」に申請する
- 助成金の申請は早めにする
独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」に申請する
65歳超雇用推進助成金の申請は、各都道府県にある独立行政法人 高齢・障害・求職者支援機構の各都道府県支部に行います。雇用関連の助成金は、ほとんどが管轄の労働局・ハローワークが申請窓口ですが、65歳超雇用推進助成金の窓口は異なるため注意が必要です。
支部は、各地の職業能力開発促進センターに設置されており、高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)です。
助成金の申請は早めにする
65歳超雇用推進助成金の申請は、書類の不備を想定して早めに申請を行うと安心でしょう。他の雇用関連の助成金に比べて審査が厳しいとされています。
助成金の申請は、各月・四半期ごとの予算上限を超える見込みの時点で、申請を締め切る場合があります。助成金は、国の予算によって施行されているためです。
まとめ
65歳超の就業者を積極的に雇用する事業主は、65歳超雇用推進助成金による支援が受けられます。助成金を受け取るためには、事業計画書の作成・必要書類・就業規則や労使協定の見直しが必須で、時間と労力がかかるでしょう。
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社会保険労務士法人ルーティング代表社員阪井亮太。1988年三重県伊勢市出身。趣味は将棋。慶應義塾大学経済学部卒業。ベアリング製造工場の工場長、社労士法人、上場企業の労務担当などを経て2021年1月社会保険労務士として独立。新宿(新宿御苑駅徒歩3分)でスタートアップ企業を中心にを支援を行う。顧問契約40社、助成金申請実績90件、セミナー、研修会講師年間30回。
また、特定求職者雇用開発助成金と併給することも可能で、60歳以上65歳未満の労働者を雇用することでさらに60万円を受給できます。能力はあるが年齢的なところで雇用を躊躇している会社にとっては、非常に嬉しい助成金だと思います。
但し、本文にもある通り審査は厳しく、自ら申請することは非常は難しいでしょう。申請時には社会保険労務士の手を借りることをお勧めします。
※令和3年度の申請は9/27ですでに締め切っています。
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