就業規則を作成する流れとは?注意点や法律違反になるケースを紹介

社会保険労務士法人TSC
監修者
社会保険労務士法人TSC コンサルティンググループ
最終更新日:2023年06月19日
就業規則を作成する流れとは?注意点や法律違反になるケースを紹介
この記事で解決できるお悩み
  • 就業規則を作成する方法とは?
  • 作成の際に注意すべき点は?
  • 法律違反になるケースとは?

「就業規則が法律違反になっていないか心配」「就業規則は作成するべき?」とお悩みの方必見。

就業規則作成は、素案を作成、リーガルチェック、労働基準監督署に提出するというのが主な流れです。

この記事では、就業規則を作成する企業担当者へ向けて就業規則の作成の流れや就業規則を作成しないデメリットを解説します。この記事を読み終わった頃には、作成時の注意点や法律違反になるケースがわかります。

就業規則を作成するか迷っている方もぜひ参考にしてください。

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就業規則を作成する流れ

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就業規則を作成するために必要なステップは、主に次の5つです。

  1. 就業規則の素案を作成する
  2. 作成した素案のリーガルチェックを行う
  3. 修正や変更を行う
  4. 労働者代表からの意見書にまとめる
  5. 労働基準監督署に提出する

1. 就業規則の素案を作成する

就業規則を作成するためには、まず素案を作ります。素案とは、就業規則に記載しなければならない、記載したい内容に漏れがないように決める大枠です。

いきなり就業規則の素案を作るのは簡単ではありません。厚生労働省の就業規則フォーマットを利用すると、比較的簡単に方向性が決められます。

企業に労働組合があれば、労働協約の内容を矛盾しないよう注意が必要です。法改正にともない修正が必要なケースもあるため、事前に現行法を確認するとスムーズに作業が進みます。

2. 作成した素案のリーガルチェックを行う

素案が完成したら、リーガルチェックを行います。リーガルチェックとは、正式な書類を作成する際、法的な観点から問題がないか確認する作業です。

就業規則の主な構成要素は、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」と各事業所内で定めるルールを示す「相対的必要記載事項」です。

ほかの項目は「任意的記載事項」とみなされます。絶対的必要事項には「労働時間」「賃金」「退職」に関する事項が含まれ、法律に則る必要があります。

3. 修正や変更を行う

素案が完成したら、内容をチェックして修正や変更を加えます。誤りがないか確認するだけではなく、企業が健全に運営していくためにふさわしい内容であることが大切です。就業規則を1度決めて提出すると変更に手間がかかるため、この段階で不備がないか慎重に確認しましょう。

4. 労働者代表からの意見書にまとめる

就業規則を完成するためには、労働者代表の意見書が必要です。労働者代表とは、労働者の過半数で組織される労働組合から選出された代表者を指します。役員や管理監督者の立場にある人は、労働代表者にはなれません。

労働組合の意見を踏まえて作成された就業規則であると示すために必要なステップで、意見書がなければ労働基準監督署で受け付けられません。

5. 労働基準監督署に提出する

就業規則の作成が完了し労働者代表の意見書を添えたら、労働基準監督署に提出します。企業内に複数の事業所がある場合でも、本社で一括で就業規則を作成・提出できます。

就業規則は提出が完了したら従業員に周知しなければなりません。周知をとおして、従業員と雇用者の双方が就業規則に記載された内容を理解し、合意しているとみなされます。

就業規則作成の目的

就業規則の作成は、企業が健全な経営を続けるために重要な役割があります。なかでも主に重要な要素は「法令順守」と「労使トラブルの防止」です。

1. 法令順守

常時10名以上の従業員を抱える企業には、就業規則の作成が義務付けられています。就業規則を作成していない、もしくは提出していない場合は30万円未満の罰金の対象です。

従業員が10名以下の企業は法律で義務づけられていないものの、トラブルを未然に防げるため作成が推奨されます。就業規則を作成することで、法律に則した企業の体制を整えることができます。

2. 労使トラブルの防止

就業規則を作成すると、書面で労働に関する取り決めを示せるため、労使トラブルの防止につながります。残業時間や給料の支払いに関してなど、就業規則を軸に従業員と雇用主が合意を持って働ける環境を作れます。

万が一トラブルに発展した場合、記載内容を軸にして対応が決定するため就業規則の内容把握は必須です。

就業規則作成の注意点

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就業規則作成の注意点は、次の2つです。

  1. 記載事項に決まりがある
  2. 従業員の周知義務がある

1. 記載事項に決まりがある

就業規則の記載事項には「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」の2つがあります。

1. 絶対的必要記載事項

絶対的必要記載事項とは、就業規則内に必ず記載しなければならい事項です。労働時間や賃金、休日など就業に必要な事項は、会社と労働者が共通の認識をもつ必要があります。

絶対的必要記載事項は以下の3つです。

  • 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
  • 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

引用:【リーフレットシリーズ労基法89条】

2. 相対的必要記載事項

相対的必要記載事項は、特別な取り決めがある場合に就業規則に記載できる事項です。絶対的必要記載事項のように必ず必要なわけではありませんが、認識の相違からトラブルへの発展を未然に防ぐ効果があります。

記載される内容の例は、次のとおりです。

  • 退職手当に関する事項
  • 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
  • 食費、作業用品などの負担に関する事項
  • 安全衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰、制裁に関する事項
  • その他全労働者に適用される事項

引用:【リーフレットシリーズ労基法89条】

2. 従業員の周知義務がある

就業規則は届け出れば終わりではなく、従業員への周知義務があります。労基法106条で定められており、怠ると周知義務違反として罰金が科され、就業規則は無効になります。

周知方法は、社内で誰もが見えるところに掲示する、社内のポータルに掲載する、社員1人ひとりに冊子を配布するなどがあります。共通認識をもちトラブルをできるだけ減らすためにも、入社時に内容を説明するとスムーズでしょう。

就業規則を作成・提出しないと法律違反になるケース

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就業規則を作成していない会社は、労働基準法89条の「就業規則の作成及び届出の義務」に違反し30万円の罰金を科される可能性があります。次のことを踏まえ、早急な就業規則の作成を検討しましょう。

  1. 従業員が10名以上の場合は義務
  2. 作成した就業規則は届け出が必要

1. 従業員が10名以上の場合は義務

労働基準法では常時10名以上の労働者を雇用している場合、就業規則を作成し行政長官(労働基準監督署)への提出が義務付けられています。

「常時10名以上」とは、同じ日に10名以上の労働者が勤務する場合ではなく、会社が10名以上雇用している場合です。企業全体の雇用数ではなく、事業所や店舗ごとの人数で判断をします。従業員数は、正社員以外にアルバイトや契約社員など雇用を結んでいるすべての労働者が対象です。

2. 作成した就業規則は届け出が必要

就業規則には作成だけではなく、労働基準監督署への届出も義務付けられています。就業規則を提出せずにいると法律に違反するため、作成後はすみやかに届け出ましょう。

就業規則を変更した場合にも、同様に提出する必要があります。違反になり罰金を科される可能性がありますが、従業員に周知をしていれば就業規則は無効にならず効力が発生します。

就業規則を作成しないデメリット7つ

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従業員が10名以上の企業は就業規則を作成する義務がありますが、10名以下であれば必要がないわけではありません。就業規則を作成しないデメリットは、主に次の7つです。

1. 懲戒解雇・減給ができない

就業規則がないと、会社都合の懲戒解雇や減給ができません。明らかに従業員に落ち度がある場合でも、就業規則に明記されていなければ「不当な」解雇・減給とみなされます。

従業員の機密情報の漏洩やSNSへの不適切投稿を発見しても、就業規則に明記していなければ解雇や減給は認められません。トラブル発生時に適切な対応ができるよう、就業規則に解雇・減給対応を明記しましょう。

2. 助成金が申請できない

就業規則を作成していないと助成金の申請ができません。厚生労働省は、雇用の安定や労働の改善を図るため、指定する助成金は20種類ほどあります。

助成金の支給を受けると法令違反のない、信用できる会社とみられます。就業規則を作成していないと申請ができず、事業拡大のチャンスを逃す可能性があります。

3. 欠勤・早退・遅刻に対応できない

就業規則がないと、欠勤や早退、遅刻にも対処できなくなります。従業員が30分遅刻した場合、就業規則を作成していなければ欠勤・早退・遅刻への対応に根拠がないとみなされ、満額支給する必要があります。

4. 有給休暇を付与できない

就業規則がないと有給休暇の計画付与ができなくなります。2019年4月から労働基準法(労基法39条)の改正により、会社は従業員に対して有給休暇の付与が義務付けられました。

5日間までは従業員が自由に有給休暇を取得できますが、労使協定を結んでいると5日を超える日数はタイミングを会社が決められます。就業規則に有給休暇の計画的付与に関して明示がなければ、付与できません。

5. 定年制を適用できない

定年制を設ける場合、就業規則にその旨を記載しなければならないと労働基準法に記載されています。65歳になっても会社側から退職させることができず、再雇用もできません。賃金の調整もできないため、企業にとってデメリットになります。

6. 退職金の支給がうまくいかない

就業規則が作成されていないと退職金の支給ができません。退職金を支給する際は、対象となる要件や金額を就業規則に記載する必要があるためです。就業規則がなければ退職する従業員に支給ができず、トラブルに発展する可能性があります。

就業規則作成の目的は、従業員との認識の相違を減らし、トラブルの芽を未然に摘んでおくことです。とくに賃金に関する事項は漏れがないよう確実に記載しましょう。

7. 労働裁判に不利になる

就業規則がないと労働裁判で会社が不利になります。トラブルが労働裁判に発展した際、会社側が被害を被っていても就業規則がないため根拠を示せないためです。書面による明確な取り決めが成立していないとみなされ、会社が不利な立場になる可能性があります。

就業規則でルールを明記し、業務上の注意点や必要なポイントを従業員に伝えた証拠が示すことが大切です。根拠がなく十分な説明ができなければ、企業が不利になる可能性が高まります。

まとめ

就業規則がないと違法になる理由とデメリット、作成方法や注意点を解説しました。就業規則を作成していない会社は、トラブルが起こる前に早めの作成をおすすめします。

就業規則の作成が不安な方も多いでしょう。作成ミスをなくすためにも専門家に依頼する方が安全です。専門家に依頼する場合、複数社からの見積もりをとって価格やサービス内容を比較するとよりいい条件の依頼先が見つかります。

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監修者のコメント
社会保険労務士法人TSC
コンサルティンググループ

人事労務経理のトータルアウトソーサーであるCACグループの社会保険労務士法人として、1965年のグループ創業以来、全国55,000件の契約実績を基盤に労働保険・社会保険各種手続きや、労務相談、就業規則作成、助成金アドバイスなど、幅広く手伝いできることを強みとする。

就業規則は常時10人以上の労働者を使用する使用者に対して、作成・届け出義務が発生致します。しかし昨今は、労働者側もインターネットを使って労働条件について調べたり、法律の内容を知ることができる為、企業はこれまで以上にコンプライアンスの遵守が求められ、10人未満でも就業規則を作成する会社が増えてきています。

労働者とのトラブルを回避する為、明確なルール作り(特に法律に定めのない休職や懲戒規定)は、どの規模の企業であっても必要不可欠なものとなっています。就業規則以外にも、パート用の就業規則・育児介護休業規程など様々な種類の規則もありますので、これを機に就業規則の作成・見直しを検討してはいかがでしょうか。
比較ビズ編集部
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比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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