遺言書の破棄は刑事上・民事上の責任を負う|破棄への対応策を解説
- 遺言書を破棄したらどうなる?
- 破棄されないためにできる対策はある?
- 破棄された場合相続人はどう対応する?
遺言書を自宅で保管しておく場合、相続人に見つかり破棄や偽造されるリスクがあります。遺言書の破棄は罪に問われますが、事前にリスクヘッジするためにも遺言書の作成・保管方法を理解しておくことが大切です。
この記事では、遺言書作成者や相続人の方向けに、遺言書の破棄を防ぐための対策や破棄された場合の相続人への影響を解説しています。記事を読み終わった頃には、遺言書の正当な扱い方がわかるでしょう。
「遺言書を破棄したらバレる?」「相続人はどう対応すればいいの?」と気になる方も参考にしてください。
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遺言書を破棄・偽造した場合に科せられるペナルティ
遺言書を破棄・偽造した場合は刑事所・民事上双方において責任が問われるリスクがあります。「破棄」と「偽造」には次の行為が該当します。
- 遺言書の破棄:遺言書を燃やす、捨てる、隠すなど、遺言書の効力を阻害すること
- 遺言書の偽造:作成権限のない者が勝手に被相続人の名前を使って遺言書を作成すること
自分に不利となる内容が記載された遺言書を見つけた相続人が、遺言書を破棄する、または自分に都合のいい内容に書き換えて偽造するケースが多いです。
遺言書の破棄や偽造は見つかる可能性があります。見つかったときの罪や負う責任は大きく、絶対にしてはならない行為です。具体的には刑事上と民事上の双方において責任を負うことになります。
刑事上におけるペナルティ
遺言書を破棄または偽造した場合の刑事上におけるペナルティには次の2つがあります。
- 遺言書を破棄した場合に科せられる「私文書毀棄罪」
- 遺言書を偽造した場合に科せられる「私文書偽造罪」
下記で詳しく解説します。
遺言書を破棄した場合に科せられる「私文書毀棄罪」
遺言書を破棄すると、私用文書毀棄罪(刑法259条)が成立する可能性があります。罪が科せられた場合の法定刑は「5年以下の懲役」に問われることに留意が必要です。
他人の文書を勝手に破棄してはいけないことはモラルとして当たり前ですが、一時的の感情だけで遺言書を破棄してはいけません。他の相続人にも迷惑がかかり、後々大きなトラブルにつながりかねます。
遺言書を偽造した場合に科せられる「私文書偽造罪」
遺言書を偽造した場合、有印私文書偽造罪(同法159条1項)が成立する可能性があります。有印私文書偽造罪の法定刑は「3カ月以上5年以下の懲役」に問われることに留意しましょう。
破棄と同様、他の相続人に多大なる迷惑がかかる行為です。
民事上におけるペナルティ
遺言書を破棄または偽造した場合の民事上におけるペナルティには次の2つがあります。
- 遺言書を破棄・偽造した者は相続欠格者になる
- 損害賠償の責任を負う
下記で詳しく解説します。
遺言書を破棄・偽造した者は相続欠格者になる
遺言書を破棄・偽装した者は、相続欠格者に該当し相続人から除外されます。民法891条5号に遺言書の偽造、変造、破棄、隠匿をした場合は相続欠格者となることが定められています。
相続欠格者は、相続と遺贈は受けられません。相続欠格者に子がいる場合、子が相続人となる形で代襲相続することは可能です。
損害賠償の責任を負う
遺言書を破棄・偽造した者は、損害賠償の責任を負う可能性があります。遺言の破棄や偽造行為は、故意に他人の権利を侵害しているため、不法行為に基づく損害賠償請求をされる場合があることに留意が必要です。
遺言書が破棄・偽造された場合に必要な相続人の対応
同じ相続の権利を有する自分以外の相続人が遺言書を破棄・偽造した場合、訴訟を提起することが可能です。具体的な対応内容を、破棄された場合と偽造された場合にわけて紹介します。
遺言書が破棄された場合
遺言書が破棄された場合、他の相続人は「破棄した者が相続欠格事由に該当し、相続人としての地位を有しないことを確認」するために訴訟を提起します。
訴訟では、訴訟の相手が本当に遺言書を破棄したのかを事実にもとづいて立証することが必要です。実際は証拠が残っていないことが多く、立証は難しいとされています。
訴訟を起こして相続欠格者として認められた場合、相続欠格者を除いた相続人全員で遺産分割協議をおこなうだけでは、遺産分割協議に従った登記はできません。以下の書類を揃えることで、登記の手続きが進められます。
- 相続欠格者以外の相続人全員で作成した「遺産分割協議書」
- 相続欠格者が作成した「相続欠格証明書」
- 印鑑証明書
遺言書が偽造された場合
遺言書が偽造された場合、他の相続人は破棄された際と同様に訴訟を提起し、遺産分割調停を申し立てて遺言書の無効化を主張できます。
偽造においても、訴訟相手が遺言書を偽造したことを立証することが必要です。偽造の事実を証明するには、筆跡鑑定を用いる方法や、被相続人に手の震えがあったことを根拠に別人が書いていることを証明する方法などがあります。
いずれにしても破棄のときと同様、偽造の事実に関する直接的かつ客観的な証拠がないケースのほうが圧倒的に多いです。
訴訟を起こして相続欠格者として認められ、欠格者以外で遺産分割協議を進める場合は、破棄された場合と同様に書類の作成が求められます。
遺言書の破棄を防ぐための対策【遺言書の作成方法は3種類】
遺言書の作成方法は以下の3種類あり、それぞれ破棄や偽造されるリスクの大きさが異なります。
- 自筆証書遺言書
- 公正証書遺言書
- 秘密証書遺言書
3つの作成方法の内容を踏まえながら、遺言書を他人に破棄・偽造されないような対策を各方法にわけて紹介します。
「自筆証書遺言書」は保管制度を利用する
自筆証書遺言書は、遺言者本人がすべての遺言を自筆で作成し、自分で保管する方法で、自宅に現物を置いておくことが多いです。遺言書を作成していることを誰にも打ち明けていない場合、誰にも見つからずに遺言書としての効力が果たせないリスクがあります。
他にも、遺言書が誰かに見つかった場合、破棄されたり偽造されたりする危険性が高いのが自筆証書遺言書の特徴です。
自宅で保管することはリスクがあるため、自筆証書遺言書で作成する場合は法務局で保管してもらえる制度を利用できます。破棄や偽造を防ぐために、自筆証書遺言書と保管制度はセットで検討しましょう。
遺言書の保管制度
自筆証書遺言書を法務局で保管してもらえる制度が令和2年7月10日から採用されました。法務局で保管してもらえるため、相続人の誰かが破棄することは考えにくく、遺言書を守る適切な方法です。
自筆証言遺言の場合は、相続人が内容を見るにあたって裁判所における検認手続きが原則必要です。保管制度を利用することで検認手続を省略でき、家族の負担も軽減できます。
ただし法務局はあくまでも遺言書を保管するのみです。内容の確認はしないため、記載内容に問題があれば遺言書が無効になるおそれがあります。
遺言書を作成する際は、内容に問題ないか弁護士に確認してもらってから、法務局に保管をお願いしましょう。
「公正証書遺言書」を利用する
公正証書遺言書は、公証役場において2人の証人が立ち会い、公証人が遺言作成者本人から遺言内容を聞いて作成する遺言書です。作成後は公益役場にて遺言書が保管されます。
遺言書が見つからないままとなるリスクを防ぎ、公証役場に保管されるため他の誰かに見られたり、破棄されたりする心配もありません。
遺言書を作成する公証人は、法律実務に従事してきた裁判官や検察官である場合が多いため、遺言書の内容が無効となるリスクも防げます。
3つのなかでもっとも信頼できる方法であるため、遺言書の作成方法に迷っている場合は公正証書遺言書での作成がおすすめです。
「秘密証書遺言書」は破棄・偽造のリスクが残るため極力避ける
秘密証書遺言は、作成者が遺言書に封をして、公証役場において公証人1人と証人2人以上に、遺言書の存在を確認してもらうものを指します。証人には遺言書の存在のみを知らせ、内容までは開示しないため文字どおり「秘密」の遺言書です。
公証役場には遺言書の控えのみ提出し、原本は自分で保管する必要があります。原本が手元にある以上、自筆証書遺言書の場合と同様に破棄される可能性があることに注意しましょう。
秘密証書遺言書を選択した場合は自筆証書遺言書と違って保管制度を利用できません。遺言書は自分で保管する方法しかなく、破棄や偽造のリスクヘッジができないため注意が必要です。
作成者本人が遺言書を破棄することは自由
遺言書は3つのうちどの方法で作成していたとしても、作成者本人であれば自由に破棄することが可能です。自筆証書遺言書か公正証書遺言書により破棄する方法が異なるため、各方法を紹介します。
自筆証書遺言書を破棄する場合の手続き方法
自筆遺言書を破棄する場合は、自宅で保管している場合と保管制度を利用している場合で異なります。各手続き内容を下記で紹介します。
自宅で遺言書を保管しているケース
自筆証書遺言書を自宅で保管している場合は、特に手続きは必要ありません。遺言書を作成者本人が破棄した時点で遺言書の効力は失われ、撤回されます。
保管制度を利用しているケース
自筆証書遺言書の保管制度を利用している場合は、撤回書を作成し、法務局に提出する必要があります。必ず作成者本人が手続きしなければならないことに留意しましょう。
法務局へ手続きしただけでは返却された遺言書の効力は続いているため、必ず自分で破棄する必要があります。
公正証書遺言を破棄・変更するの際の注意点
公正証書遺言を破棄・変更する場合は公証役場を仲介しているため、自筆証書遺言書よりも多少の手間がかかります。下記で紹介する注意点2つをおさえることが重要です。
破棄する場合は公証役場へ申し出る必要がある
公正証書遺言書の撤回でよく勘違いされやすいのが、手元にある遺言書を破棄するだけでいいと認識しているケースです。公正証書遺言書の場合、手元にある遺言書は控えであるため、公証役場へ申し出て撤回してもらわないと遺言書の効力は失われません。
公証役場への申し出を忘れないようにしましょう。
撤回の撤回はできないため再度作成する必要がある
公正証書遺言書の場合、1度撤回を申し出た遺言書を再度復活してもらうことはできないことに注意しましょう。再度遺言書を作成する場合は、新しい内容で作り直す必要があります。
すべての相続人の同意があれば遺言書の破棄は可能
すべての相続人の同意がある場合に限り、遺言書を破棄して遺産分割協議を進めることが可能です。もし遺言書を破棄して遺産分割協議を進める際には、細心の注意を払って進めていきましょう。
各相続人の立場も考えて十分に配慮し、全員が納得できる内容にしておかないと、後々遺恨を残す可能性があります。
まとめ
遺言書を破棄・偽造すると罪に問われ、相続権を失う可能性があります。本記事では、遺言書を破棄・偽造した場合に問われる罪や、作成者本人の対策方法、他の相続人の対応内容などを紹介しました。
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遺言書を破棄してはいけないということは皆様ご理解されたことと思います。なお、自筆証書遺言は、家庭裁判所以外では開封できないこととなっていますので、われ先に自筆証書遺言を読もうとすることが余計なトラブルを生む可能性がありますのでお気を付けください。
相続でトラブルが発生するのは、相続人間の不信感から発生します。親族であっても、不信感をもつと本当に些細なところから疑いをもち口論がはじまり、遺言書通りに相続が進まないこともございます。
自筆証書遺言の内容に特定の相続人が強く関与したのではないか、強迫による遺言だから無効だ。亡くなった被相続人は既に認知症であったから無効だなどと様々な主張がなされるものです。
公正証書遺言であれば、公証人が内容を確認して被相続人の意思確認を行って、さらに、利害関係のない証人2人が立ち会って作成されるものです。
亡くなった後の親族間の争いを避けたいと思われるなら、公正証書遺言を残しておくことをおススメいたします。さらに、遺言の内容を実行する遺言執行者もあらかじめ遺言書に定めておくことが、被相続人のご遺志を遂行するために必要不可欠であると思います。