退職所得は確定申告が必要?申告すべきケースや注意点を解説!

税理士
監修者
税理士 佐藤 憲亮
最終更新日:2024年02月05日
退職所得は確定申告が必要?申告すべきケースや注意点を解説!
この記事で解決できるお悩み
  • 退職所得は確定申告が必要?
  • 退職所得で確定申告するべきケースは?
  • 退職所得があった場合の注意点は?

「退職所得の確定申告は必要?」とお悩みの会社員、必見です。退職所得は源泉徴収によってすでに所得税が課税されているため、確定申告は原則不要ですが、場合によっては必要です。

この記事では、退職所得を確定申告するべきケースや退職所得にかかる税金の計算方法を解説します。最後まで読むことで、適切な確定申告を行えるでしょう。

申告時の注意点も紹介するため、退職金を受けとる予定の方はぜひ参考にしてください。

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退職所得の確定申告は原則不要

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退職所得は源泉徴収によってすでに所得税が課税されているため、原則として確定申告は不要です。以下の条件に当てはまる場合は、会社員の方でも退職所得を受け取ったあと確定申告が必要です。

  • 年間の給与が2,000万円を超える方
  • 2カ所以上の会社から給与所得を得ている方
  • 給与所得・退職所得以外に20万円を超える所得のある方

年収2,000万円未満で副業を持たない会社員の方の場合、退職金の額に関わらず確定申告は不要と考えていいでしょう。

退職金受給後に再就職しても確定申告は不要

ある会社で退職金所得を得て、その後別の会社に再就職した場合でも、原則として確定申告は不要です。再就職した会社で年末調整を受けられるのであれば、確定申告をしなくても定められた所得税を納められます。

退職所得を受け取ったあとに再就職する場合、退職した会社が発行した源泉徴収票を、再就職した会社に渡すことを忘れないようにしましょう。転職先の会社が年末調整を行い、所得税の納付手続きを行ってくれます。

退職所得で確定申告が必要なケース4つ

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退職所得で確定申告すべきなのは、以下の4つのケースです。

  • 給与所得・退職所得以外に20万円を超える所得がある
  • 年末調整をせずに退社し所得控除を受けたい
  • 年間の給与が2,000万円を超える
  • 2カ所以上の会社から給与を得ている

内容をひとつずつ解説します。

給与所得・退職所得以外に20万円を超える所得がある

給与所得・退職所得以外に20万円を超える所得があるケースでは、確定申告が必要です。給与所得や退職所得のみであれば、源泉徴収されているため確定申告が不要な場合もありますが、その他の所得があると確定申告が必要な場合があります。

現在では、本業以外に副業を行うことも一般的になっています。たとえば、本業以外にWebライターやFXをしており、収入から経費を引いた所得が20万円を超える方は、確定申告しましょう。

年末調整をせずに退社し所得控除を受けたい

年末調整をせずに退職し、所得控除を受けたいケースでは、確定申告が必要です。退職所得の有無にかかわりなく、所得控除を受ける場合には確定申告しなければなりません。

確定申告の際に利用できる所得控除の例は以下のとおりです。

  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 寄附金控除
  • 配偶者控除
  • 扶養控除

年間の給与が2,000万円を超える

年間の給与が2,000万円を超えるケースでも、確定申告が必須です。年間の給与が2,000万円を超える会社員の場合、勤務先で年末調整が行われません。

退職所得があり、年間の給与が2,000万円を超えた場合、確定申告が必要です。このケースでは配偶者特別控除や住宅ローン控除などの控除が受けられないため注意が必要です。

2カ所以上の会社から給与を得ている

2カ所以上の会社から給与を得ている会社員の方は、確定申告が必要です。2カ所以上から収入があるケースでは、主たる給与を得ている会社で年末調整が行えても、その他の会社では年末調整が行えません。

退職所得を含め、すべての所得を合算して正確な所得税額を計算する必要があります。片方の会社からの給与所得が20万円以下であれば確定申告不要です。

退職所得で確定申告した方がいいケース3つ

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退職所得で確定申告をした方がいいケースは、主に以下の3つです。

  • 「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかったケース
  • 源泉徴収票を提出せず還付金があるケース
  • 年度の途中で退職したケース

退職所得を得た人は、必ずチェックすべきケースです。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかったケース

「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合、確定申告するのが賢明です。退職所得に対して退職所得控除が適用されるためには、退職金を受け取るまでに「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出しなければなりません。

「退職所得の受給に関する申告書」は通常勤務先の経理部から渡されるためあまり意識することはありませんが、提出は必須です。未提出の場合、一律20.42%の所得税・復興特別所得税に加え、10%の住民税が課税されます。

所得税や住民税が課税された場合、退職所得に関する確定申告を行うことで、還付金を受け取れる場合もあるでしょう。

源泉徴収票を提出せず還付金があるケース

退職所得を得たあとに転職し、新しい勤務先に前職の源泉徴収票を提出しなかったケースでも確定申告が必要です。転職先の会社は年末調整してくれますが、前職の所得や所得税額がわからなければ正確な年末調整は行えません。

前職の源泉徴収票がない場合、納めすぎた所得税の還付は受けられないでしょう。源泉徴収票は退職時に経理部からもらい、転職先に提出することが重要です。

年度の途中で退職したケース

年度の途中で退職した場合、退職金以外の給与所得に対する年末調整が行われないため確定申告した方がいいでしょう。各種の保険料控除も、年度の途中に退職すると適用されないおそれがあります。

退職所得のみであれば、給与所得や副業の所得を含めた確定申告を行うことで正確な所得額と所得税額の把握が可能です。還付金を受け取れる可能性もあるため、確定申告できるかどうか検討すべきです。

退職金は税金がかからないわけではない

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退職所得を得た場合に原則確定申告は不要ですが、税金がかからないわけではありません。通常の給与所得よりも控除額が大きいため、納税者に有利な所得ですが、所得税や復興特別所得税、住民税が源泉徴収もしくは特別徴収されます。

退職所得にかかる税金の計算方法を解説します。どの程度の税金がかかるかを確認し、確定申告に活かしましょう。

退職所得にかかる税金の計算方法

退職所得にかかる税金の計算方法は、退職所得控除額と課税対象の退職所得を計算します。それぞれの計算方法を解説していきます。

退職所得控除額の計算

退職所得控除額は下記のとおり、勤続年数により異なります。

勤続年数20年以下 40万円×勤続年数
勤続年数20年超 800万円+70万円×(勤続年数−20年)

参照:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)

たとえば、勤続年数が25年の場合、退職所得控除額は「800万円+70万円×(25年−20年)=1,150万円」となります。

課税対象の退職所得額

課税対象の退職所得額は「退職金(源泉徴収される前の金額 − 退職所得控除額)× 1/2」で算出されます。前述の例で退職金が3,000万円の場合、課税退職所得額は「(3,000万円−1,150万円)× 1/2=925万円」です。

課税退職所得額に、所得税率をかけて税額を計算します。「925万円×33%−1,536,000円=1,516,500円」となります。勤続年数が25年の場合、退職所得控除額は「800万円+70万円×(25年−20年)=1,150万円」となります。

退職所得と確定申告の注意点4つ

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退職所得と確定申告で注意すべき点は以下の4つです。

  • 退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)の提出が必要
  • 例外的な退職所得がある
  • 退職所得がある人が亡くなった場合は相続税が発生する場合がある
  • 複数回退職金を受けとる場合「退職所得の受給に関する申告書」に明記

いずれも確定申告する際に必要な知識であるため、必ず把握しましょう。

退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)の提出が必要

退職所得を受け取る際「退職所得の受給に関する申告書」の提出が必須です。別名退職所得申告書といいます。退職所得申告書を提出することにより、会社側が正確な源泉徴収を行えるため、非常に重要な書類といえるでしょう。

退職所得申告書のA欄には、勤務先情報と退職する本人の情報、退職日、退職の区分、勤続期間を記入しなければなりません。

同じ年に別の勤務先から退職金を受け取っている、前年以前から4年以内に退職所得を得ているなどのケースでは、その旨を下部に記載する必要があります。

例外的な退職所得がある

退職所得は基本的に控除を考慮した金額の50%を課税対象にしますが、例外的な退職所得があります。勤続年数が5年以下の役員の場合は「退職所得を1/2に減ずる措置」が適用されません。この例外的な退職金を「特定役職退職手当等」と呼びます。

退職所得は、退職後の生活を保護するために税制面で優遇されているため、この制度が悪用されるおそれがありました。役員として短い期間勤務し、複数法人から退職金を受け取って節税する手法が見られるようになり「退職所得を1/2に減ずる措置」の対象外とされています。

退職所得がある人が亡くなった場合には相続税が発生するケースがある

退職所得を受け取る予定であった方が亡くなった場合、相続人に対して相続税が課されるケースがあります。本人が亡くなってから3年以内に退職金や功労金などが支払われると、資産が相続もしくは遺贈されたと見なされ、相続税を納めなければなりません。

非課税限度額は500万円×法定相続人の数です。法定相続人の数であるため、相続放棄が発生しても、放棄がなかったものとして人数を数えます。養子も法定相続人になり得ますが、被相続人に実子がいる場合は最大1人、実子がいない場合は最大2人まで数えましょう。

複数回退職金を受けとる場合「退職所得の受給に関する申告書」に明記

同一年内に複数回退職金を受けとるケースでは「退職所得の受給に関する申告書」でその旨を明記しなければなりません。とくにB欄で、勤続期間を記載する際に注意しましょう。

B欄にはすでに退職金を支給された企業への勤続期間を記載します。通算勤続期間を記入する欄もあるため、複数の企業で勤続期間が重複しないように注意しましょう。

まとめ

退職所得を得た場合、原則として確定申告は不要です。退職所得の受給に関する申告書が未提出、複数回退職所得を得ているなどのケースでは確定申告した方がいいケースもあります。退職金が支給されたあと、自分の状況を整理して確定申告が必要かどうか判断しましょう。

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監修者のコメント
税理士
佐藤 憲亮

京都市出身。 医療系特化事務所、税理士法人の社員税理士(役員)を経て、気軽に相談できる専門家として税務顧問業務をメインに活動。実務で得た知識や経験を活かし、税務記事や税務論文の執筆、ブログの運営をしている書くことが好きな税理士。大学卒業後、税理士事務所で14年の実務経験を積みながら、大学院で税法を学ぶ。2020年に税理士登録。2023年6月に京都市中京区にて独立。また、顧客企業の利益最大化を実現するため、バックオフィスの効率化や改善に力を入れており、経理代行及びコンサルの事業会社を設立。経理、財務、税務の支援を得意としている。

退職所得とは、退職という事実に起因して受け取る退職手当、その他一時に受け取る給与の性質を有するものを言い、退職した場合にのみ支払いがされるもののことを言います。

なお、退職後に支給される賞与などについて、勤務している者に対して支払われる賞与等と同じ基準で計算されているものである場合は、退職所得ではなく給与所得となるので注意しましょう。

また、退職手当は実際に退職していなくても、使用人から役員になった場合、使用人であった期間に基づいて計算して支給された一時金は退職手当となりますし、外部に積み立てた共済等を、退職を理由に解約した場合に受取る解約返戻金等も退職所得となります。

国の機関である中小機構が運営している小規模企業共済制度は、掛金の支払い時に所得控除を受けることができ、退職を理由に解約した場合は退職所得となるため、税効果が高い商品として知られています。

ただし、退職を理由に解約するのではなく、任意解約で解約返戻金を受け取った場合は、退職所得ではなく一時所得となるため、この場合は退職所得よりも税負担が重くなります。また、解約返戻金は毎月少しづつ年金方式で受取ることもできますが、この場合の所得区分は雑所得となります。

解約のタイミングや受け取り方によって所得区分が変わり、トータルの税負担も変わりますので、ご自身所得状況などを踏まえて、事前に検討しておくことが重要です。

比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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