エンジェル税制を活用した確定申告のやり方は?必要書類4つや優遇措置を解説

税理士
監修者
税理士 佐藤 憲亮
最終更新日:2023年02月22日
エンジェル税制を活用した確定申告のやり方は?必要書類4つや優遇措置を解説
この記事で解決できるお悩み
  • エンジェル税制を活用する際の確定申告の方法は?
  • エンジェル税制を活用した確定申告の必要書類・事前準備はなに?
  • エンジェル税制のメリット・デメリット・注意点は?

「エンジェル税制を活用して確定申告をしたいけどよくわからない…」という方必見!

この記事では、エンジェル税制を活用して確定申告したい方に向けて、ベンチャー企業・個人投資家の手順を解説します。最後まで読めば、エンジェル税制の理解が深まり、スムーズに確定申告ができるようになります。

エンジェル税制を活用する際のポイントも解説するため、事前準備に不安がある方はぜひ参考にしてください。

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エンジェル税制の概要

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エンジェル税制とは、ベンチャー企業の成長を促進する目的で設けられた、ベンチャー企業へ投資をおこなった個人投資家に適応される税制上の特例措置です。

対象となるベンチャー企業は「特定中小会社」「特定新規中小会社」の2つで、投資のタイミングだけではなく株式売却時でも特例措置を受けられます。特定中小会社・特定新規中小会社に該当する条件は以下のとおりです。

  特定中小会社 特定新規中小会社
条件1 中小企業等経営強化法第6条に規定する特定新規中小企業者に該当する株式会社 中小企業等経営強化法第6条に規定する特定新規中小企業者に該当する株式会社
条件2 内国法人のうちその設立の日以後10年を経過していない株式会社 内国法人のうちその設立の日以後5年を経過していない株式会社
条件3 内国法人のうち、沖縄振興特別措置法第57条の2第1項に規定する指定会社で平成26年4月1日から令和7年3月31日までの間に同項の規定による指定を受けたもの 内国法人のうち、沖縄振興特別措置法第57条の2第1項に規定する指定会社で平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に同項に規定による指定を受けたもの
条件4   国家戦略特別区域法第27条の5に規定する株式会社
条件5   内国法人のうち地域再生法第16条に規定する事業をおこなう同条に規定する株式会社

ベンチャー企業が必要書類を個人投資家に送付し、個人投資家が確定申告の際に書類を添付することで税制の優遇措置を受けることができます。

エンジェル税制を活用する際の確定申告の流れ

エンジェル税制-確定申告-流れ

エンジェル税制を活用する際の確定申告の流れは、以下のとおりです。

  • エンジェル税制の対象か確認する
  • ベンチャー企業が個人投資家に必要書類を送付する
  • 出資の手続きを進める
  • 個人投資家が確定申告する

エンジェル税制は通常の確定申告とは異なり、手続きの流れや必要書類がやや複雑になります。事前に流れを把握しておくことで、適切な準備を進められるようにしましょう。

1. エンジェル税制の対象か確認する

「特定中小会社」「特定新規中小会社」に該当するかを条件と照らしあわせて、投資するベンチャー企業がエンジェル税制の対象であることを必ず確認しましょう。

エンジェル税制の対象企業であることが確認できれば、都道府県知事名の確認書が交付され手続きを進められます。

エンジェル税制の対象に含まれているかを確認するのはベンチャー企業であり、個人投資家がおこなうものではありません。ベンチャー企業側が投資を受けたいと考えている場合、自社がエンジェル税制の対象であることを確認したのち、個人投資家にアピールしましょう。

2. ベンチャー企業が個人投資家に必要書類を送付する

エンジェル税制の優遇措置を受けるために必要な書類は、以下の4点です。

  • 都道府県知事名の確認書
  • 一定の株主に該当しない旨の確認書
  • 株式異動状況明細書
  • 投資契約書の写し

詳細は「エンジェル税制を活用した確定申告の必要書類4つ」にて解説しているので、そちらをご覧ください。

ここまでの作業はすべてベンチャー企業の作業範囲であるため、個人投資家の方は必要書類が届くまで待つだけで大丈夫です。万が一書類の到着が遅れてしまった場合は、先に確定申告をすませ、後日必要書類を税務署に郵送しましょう。

3. 出資の手続きを進める

個人投資家の方に必要な出資手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 株式の申込みをおこなう
  2. 投資契約の締結
  3. 払込期間内または払込期日までに払込取扱金融機関に払込みをおこなう

株式の申込みは「企業から直接取得」「投資事業有限責任組合を経由し取得」の2パターンがあります。投資事業有限責任組合とは、ベンチャー企業への投資やベンチャー企業の成長を目的とした、ベンチャーキャピタルを中心に金融機関などが組織する「投資事業組合」の一種です。

4. 個人投資家が確定申告する

ベンチャー企業から必要書類が届いたら、個人投資家の方が通常の確定申告をおこない必要書類を税務署に送付しましょう。

エンジェル税制が利用できる投資では、優遇措置Aと優遇措置Bがあり、記載する箇所が異なるため注意が必要です。「エンジェル税制における2つの優遇措置」にて、優遇措置の種類を解説しているため、詳しくはそちらをご覧ください。

初めてエンジェル税制を利用した確定申告をする際は、手続きに間違いがないように税務署の職員に相談しながら手続きを進めるようにしましょう。

エンジェル税制を活用した確定申告の必要書類4つ

エンジェル税制-確定申告-必要書類

エンジェル税制を活用した確定申告の必要書類は、以下の4点です。

  • 都道府県知事名の確認書
  • 一定の株主に該当しない旨の確認書
  • 株式異動状況明細書
  • 投資契約書の写し

投資を受けるエンジェル税制を活用できるベンチャー企業は、確定申告に必要な書類を迅速に用意しましょう。書類によっては用意に時間がかかるものもあるため、早めに準備を進めることが大切です。

1. 都道府県知事名の確認書

都道府県知事名の確認書は、企業がエンジェル税制の対象であり、その企業への投資が税制上の優遇を受けられることを証明する確認書です。

確認書は投資先のベンチャー企業から送られてくるため、個人投資家の方が何かの手続きをする必要はありません。

都道府県への確認は比較的時間がかかるため、ベンチャー企業側は個人投資家が確定申告の期間に遅れないように、早めに確認書の申請を行う必要があります。

2. 一定の株主に該当しない旨の確認書

エンジェル税制の確定申告では、ベンチャー企業が発行する「一定の株主に該当しない旨の確認書」が必要です。「一定の株主に該当しない」に当てはまる条件は、以下の2点です。

  • 個人事業主の法人成りにおける個人事業主であった者、その親族、その使用人等に該当しないこと
  • 同族会社判定の基礎となる株主ないし株主グループに属さないこと

同族会社かどうかを判定するためには、持株割合もしくは議決権割合が用いられます。エンジェル税制の対象外と判定される2つのケースは、以下のとおりです。

  • 持株割合と議決権割合のどちらか一方で同族会社と判定された場合
  • 持株割合と議決権割合のどちらで判定しても同族会社となった場合

個人投資家の方が確定申告するためには、エンジェル税制の対象外となる株主に該当しないことをベンチャー企業に証明してもらいましょう。

3. 株式異動状況明細書

「株式異動状況明細書」とは、ベンチャー企業の株主名簿に登録された日から、明細書が発行された日までの持株数の増減を記載した証明書です。

エンジェル税制による優遇措置では、投資により取得したベンチャー企業の株式のうち、同年の12月末時点に保有している株式の取得に要した金額を控除できます。そのため、取得後の株式数の変遷状況および、現在の保有株式数がわかる明細書が必要になります。

4. 投資契約書の写し

エンジェル税制の確定申告をするためには、投資契約書の写しを提出する必要があります。税制の優遇措置を受けるため、ベンチャー企業と個人投資家はエンジェル税制に関する契約書を作成し、契約の証明を提出しなければなりません。

投資契約書はベンチャー企業が用意するのではなく、原本を保有している個人投資家がコピーして税務署に提出しましょう。

エンジェル税制における2つの優遇措置

エンジェル税制-メリット

エンジェル税制における優遇措置は「優遇措置A」「優遇措置B」の2パターンがあります。どちらの優遇措置を受けるのかは、ベンチャー企業側ではなく個人投資家が決められます。

AとBで受けられる措置の特徴に違いがあるため、個人投資家の方は、自分にあった優遇措置を選びましょう。

優遇措置A

優遇措置Aは「設立5年未満の企業への投資」をおこなう個人投資家が対象者です。投資時点において税制上の優遇措置を得られ、対象企業への投資額から2,000円を引いた金額が、その年の総所得金額から控除される特徴があります。

優遇措置Aにおける控除対象となる投資額の上限は、総所得金額×40%の金額もしくは1,000万円のいずれか低い方になります。

総所得金額1,000万円・ベンチャー企業への投資額が500万円の個人投資家の場合の控除金額は、以下の表のとおりです。

  総所得金額 投資額 控除の金額
通常の場合 1,000万円 500万円 499万8,000円(500万円〜2,000円)
優遇措置Aの場合 400万円(1,000万円の40%) 399万8,000円(400万円ー2,000円)

優遇措置B

優遇措置Aは「設立10年未満の企業への投資」をおこなう個人投資家が対象者です。株式を売却した時点で優遇措置を得られ、投資した金額すべてをその年の他の株式等譲渡益から控除できる特徴があります。

優遇措置Aとは異なり、優遇措置Bには控除の上限がありませんが、エンジェル税制の確定申告において、他の株式等譲渡益の金額より多く控除を受けられないため注意しましょう。

投資額・株式等譲渡益・控除額の具体的な金額例は、以下の表のとおりです。

  投資額 株式譲渡益の金額 控除額
パターン1 500万円 600万円 500万円
パターン2 500万円 300万円 300万円

エンジェル税制を活用する3つのメリット

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エンジェル税制を活用するメリットは、以下の3つです。

  • 個人投資家は節税できる
  • ハイリターンの可能性を狙える
  • ベンチャー企業が出資を募りすい

エンジェル税制は、ベンチャー企業の成長促進を図るための制度であり、ベンチャー企業・個人投資家どちらにもメリットがあります。メリットを理解して、エンジェル税制を最大限に活用しましょう。

1. 個人投資家は節税できる

エンジェル税制を活用する個人投資家の最大のメリットは「節税できる」点です。ベンチャー企業への投資時点と株式の売却時点の2つのタイミングのどちらかで、自分に有利になる方を選んで確定申告できます。

優遇措置Bの場合、他の株式等譲渡益からの控除は投資額のすべてを含められるため、個人投資家にとってとても有利な制度です。

もしベンチャー企業の株式を売却して損失が出てしまった場合でも、エンジェル税制を活用することで、他の株式等譲渡益と相殺できるため損が出にくい点も特徴です。

2. ハイリターンの可能性を狙える

個人投資家にとってのもう1つのメリットは、ハイリターンの可能性を狙える点です。企業規模が大きくなれば株式も高騰し、投資家に大きな利益をもたらします。

ベンチャー企業は規模の小さい会社ですが、開発している製品やサービスがヒットすることで一気に事業規模を拡大する可能性があります。

エンジェル税制を活用することで、節税しながらハイリターンを狙えるため、近年個人投資家の間で人気の制度です。

3. ベンチャー企業が出資を募りやすい

ベンチャー企業にとってエンジェル税制の活用はより多くの出資を募りやすくなるメリットがあります。エンジェル税制は、ベンチャー企業の成長促進をはかるための資金集めをしやすい環境を整える制度です。

エンジェル税制の対象であることを個人投資家にアピールできれば、投資と節税の観点から自社への出資を検討してくれる可能性があります。

エンジェル税制の対象企業であることを確認できれば、ホームページに個人投資家にむけて対象企業であることをアピールしましょう。

エンジェル税制を活用する2つのデメリット

エンジェル税制を活用するデメリットは、以下の2つです。

  • 通常の確定申告に比べて準備が複雑
  • ハイリスクな投資になる

エンジェル税制には、メリットだけではなくデメリットもあります。デメリットを先に把握しておくことで、事前に適切な対策・準備をおこないましょう。

1. 通常の確定申告に比べて準備が複雑

エンジェル税制を利用した場合、確定申告に個人投資家とベンチャー企業双方の準備が必要となるため、通常に比べて準備が複雑になります。

ベンチャー企業は書類の準備・送付、個人投資家は書類の確認が必要になります。個人投資家は、エンジェル税制を利用していることを税務署職員に説明して、確定申告を進める必要もあります。

通常の確定申告に比べて手間と時間がかかるため、早めに確定申告の準備を進めましょう。自身でエンジェル税制を活用した確定申告が難しいと判断した場合は、税理士に依頼することをおすすめします。

エンジェル税制につよい税理士選びには比較ビズを活用

個人投資家の方がエンジェル税制を活用した場合、複数の書類や注意事項を管理しなければならないため、不備や思わぬミスが起きる可能性があります。税理士に依頼することで、書類の確認から確定申告の手続きまで代行してもらえます。

税理士によって作業スピードや費用が異なるため、自身のニーズに最適な税理士を選んでエンジェル税制を活用した確定申告の手続きを依頼しましょう。

弊社が運営しているマッチングサイト『比較ビズ』では、どのようなサービスを受けたいか、費用はどれくらいで考えているかなどをWeb上の相談フォームに入力することで一括で複数の税理士に相談することが可能です。

2. ハイリスクな投資になる

ベンチャー企業への投資は安定した投資にはなりづらく、ほとんどの場合がハイリスクハイリターンです。

ハイリターンは魅力的ですが、投資したベンチャー企業がまったく利益を出さないことも十分に考えられます。

エンジェル税制の優遇措置によりある程度のリスクは軽減できますが、大企業とは異なり、資金調達が難しいベンチャー企業に対する投資は常にリスクが伴うことを覚えておきましょう。

まとめ

エンジェル税制を活用した際の確定申告の手順や優遇措置の具体的な内容を解説してきました。

エンジェル税制を活用した際の確定申告は、通常の確定申告に比べて準備が複雑で多くなってしまうため、前もって税務署や税理士に相談しながら準備を進めることがおすすめです。

「比較ビズ」の場合、必要事項を入力する2分程度で、エンジェル税制に強い税理士をスピーディに探せます。複数の会社に無料で相談できる点もポイントです。税理士の選定に迷うことがあれば、ぜひ利用してみてください。

監修者のコメント
税理士
佐藤 憲亮

京都市出身。 医療系特化事務所、税理士法人の社員税理士(役員)を経て、気軽に相談できる専門家として税務顧問業務をメインに活動。実務で得た知識や経験を活かし、税務記事や税務論文の執筆、ブログの運営をしている書くことが好きな税理士。大学卒業後、税理士事務所で14年の実務経験を積みながら、大学院で税法を学ぶ。2020年に税理士登録。2023年6月に京都市中京区にて独立。また、顧客企業の利益最大化を実現するため、バックオフィスの効率化や改善に力を入れており、経理代行及びコンサルの事業会社を設立。経理、財務、税務の支援を得意としている。

エンジェル税制は、ベンチャー企業に対する投資促進のために、ベンチャー企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度です。

ベンチャー企業に対し、投資家が投資を行った場合、投資を行ったタイミングと、株式を売却したタイミングの両方において税制上の優遇措置を受けることが可能です。

なお、令和2年度の税制改正において、エンジェル税制の要件等が下記のように緩和されていますので、こちらも参考にしてください。

仝朕佑ベンチャー企業に投資を行う場合、ベンチャー企業の要件が改正され、設立後5年未満の企業が優遇措置Aを利用することが可能になりました。

▲戰鵐船磧軸覿箸都道府県に行う申請書類の一部が削減され、定款、事業報告書、組織図、法人税確定申告書別表二、の提出が原則不要となりました。

G定事業者として新たに一定の要件を満たした株式投資型クラウドファンディング事業者が追加されました。なお、優遇措置Aについても認定事業者で確認書の発行が可能となりました。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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