遺産相続の期限、過ぎると大変なことに【知らないとリスク】
相続には財産の名義変更などの法的な手続きが関係してきます。相続トラブルの原因とならないように、適切に処理していくことが欠かせません。しかし、財産が思っていたよりも多かった場合や、相続人同士でなかなか分割方法が決まらない時、時間だけが過ぎてしまうこともあります。とは言え、いくつかの手続きには期限が定められています。もしこうした期限を守れなかったらどうなるのでしょうか。今回は遺産相続手続きの期限について注意点などを解説します。
遺産相続の手続きの簡単な流れ
被相続人が亡くなったら、死亡証明書などの書類を作成、病院や役所で必要な手続きを行います。その後火葬を済ませて、葬儀を完了します。
すぐに銀行に死亡の通知をして、口座の凍結をしてもらいます。同時に保険会社にも連絡して、生命保険の支払いを請求します。
故人が遺言書の保管場所を言い残していないのであれば、家の中を探してみましょう。遺言書を発見したら、必ず裁判所に持って行って検認という作業を行ってもらいます。
これは遺言書の中身は真正であるということを証明するためのもので、検認がないと不動産名義の書き換えができないなどが起こります。
遺言の中身が分ったら、相続人を確定し財産の分割を始めます。相続には必ず相続税がかかりますので、税務署とも話し合いながら税額の決定と納付も行います。
相続放棄、限定承認
故人に大きな負債があった場合など、財産をすべて放棄する相続放棄という行為を行います。また、財産のうちマイナス分を差し引いて、プラスとなった分それを受け取ることができる制度のことを限定承認と呼びます。
この手続は自己のために相続の開始があった時から3ヶ月(民法915条1項本文)のため、不安があれば、至急対応が求められます。
借金や負債も相続の対象になる
相続放棄や限定承認は、相続人が相続によって不利な状況に陥らないようにするためのものです。というのも、相続はプラスの財産もマイナスの財産も継ぐことになるからです。
故人に借金があった場合、相続人がそれを支払うことになります。プラスの遺産だけを受けて、借金は拒否するということはできないのです。
そのため、プラスの財産よりも借金の額の方が大きいという時は、相続放棄という形ですべてを放棄します。一方でプラスの方が上回ることもあります。
その場合は、借金を支払ったうえで残ったものを受け取る限定承認を行います。
相続放棄、限定承認の方法
こうした行為の申し立ては、故人の住んでいた住所を管轄する家庭裁判所で行います。申述と呼ばれる形で申し立てを行いますが、いくつかの書類が必要となります。
故人の戸籍謄本や死亡したことを確認するための除票、申し立てをする人の戸籍謄本などが必要です。書類作成には役所に行く必要がありますので、ゆとりを持って準備をしましょう。
他にも、申し立てをするための申し立て書も提出します。しかし、これらは家庭裁判所で受け取ることができますので、記入の仕方を聞きながら作成することができます。
相続放棄、限定承認の期限
これらの行為を行うためには、申し立てを相続が発生してから3か月以内に行わないといけません。3か月が過ぎると放棄も限定承認もできなくなります。
故人の負債が大きい場合は、相続放棄をしないと相続人が借金を抱えてしまうことになります。相続によって損をしないためにも、早めに手続きをしましょう。
この3か月という期間は「熟慮期間」と呼ばれています。この間に、財産の内訳を確認して放棄や限定承認をした方がいいのかどうかを判断することになります。
しかし、時には財産や負債の中身が複雑ですぐには判断できないこともあります。その場合は、熟慮期間の延長ができます。
これも家庭裁判所に申し立てをすることが必要です。3か月のうちにしないといけませんので、もし決定まで時間がかかりそうだと思ったら、早めに申請した方が良いでしょう。
準確定申告
故人が事業をしていた、不動産収入や投資による収入があったなどの場合は、所得税について確定申告をする必要があります。しかし、当然故人はできませんので代わりに相続人が「準確定申告」という形で行います。
通常の確定申告は毎年1月1日から3月15日までにすることになっています。しかし、準確定申告は死亡してから4か月以内と定められています。
もしこの期間内にしないと、延滞税が課せられる可能性もありますので、早めに行うことが肝心です。準確定申告には、単に申告をするだけでなく所得税を代わりに納めることも含まれます。
相続税の申告
相続税も相続人が申告をしないといけません。これは死亡から10か月以内と決められています。単に申告をすればいいだけでなく、税の納付も含めて10か月となりますので注意が必要です。
しかも、遺産の分割がスムーズに決まらないケースもあります。
協議が進まないとしても、10か月以内という期間は延長することはできません。誰が相続するかは分からなくても、財産の評価額は決まっていますので税額は計算できるからです。
誰かがとりあえず相続税を納付することになりますが、法定相続人が支払うというケースが多い傾向にあります。
遺産相続手続きは、早めに進めることが重要
今まで見てきたように、相続に関する手続きは期限付きのものがほとんどです。過去にさかのぼって請求をすることはできません。
また、決定によって相続人にメリットとなることもありますし、逆に不利を被ることもあります。じっくりと調査と検討をするためにも、できるだけ早く手を着けるのは大事です。
遅くなることへのデメリット
手続きが遅くなると、取るべき措置が講じられなくなります。特に相続放棄や限定承認の期間を逃してしまうと大変です。負債を無駄に抱えることになりますので、相続によってマイナスの影響を受けるのです。
また、準確定申告や相続税申告が遅れると、延滞税が課されるというのもデメリットです。余計な支払いが増えるため、経済的な負担を抱えないためにもすぐに開始しましょう。
まとめ
相続にかかる手続きはどれも申し立てが必要で、書類などの準備も手間がかかります。また、葬儀や親族での話し合いなど、やることが多々あり忙しさに追われることになります。
あっという間に時間が過ぎて、すべき措置が取れなかったということがあると大変です。
不利な状況にならないように、最初期からやるべきことをリストにまとめ早めにとりかかるようにしましょう。
とはいえ、相続に関する仕組みは分かりづらいため、思うように対応が進まないケースもあります。その場合は専門家の力を借りることも視野に入れましょう。
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葬式も終わり、少しゆっくりしたい、と思っているうちに相続税の申告期限がすぐに訪れてしまいがちです。相続税申告においては、各種届け、書面の入手等の手間暇もかかりますが、申告において漏れが生じやすい税目となっています。
ただ、漏れ、評価間違いは、大半が、名義預金と土地の評価。これが全体の7割を占めるでしょうか。
孫のために孫の名前で口座を作っていた。というのが名義預金の典型例となりますが、生前の贈与は、贈与契約であることが必要であり、当事者が合意していること、その上で、受贈者(贈与を受けたもの)が実際に管理、使用等していることが求められます。
何かあったら、贈与するかしないか、宙ぶらりんのものは契約したものではありませんので。これらは専門家からの説明を聞くと、漏れなくなりますが、ご自身ですると、孫名義の口座のものは相続の対象ではない、と判断されがちです。
そういった評価にばらつきが出るもう一つが。土地。これも財産評価通達といったものがあるのですが、慣れないとペイしませんし、間違いが起きがちです。名義預金の有無等の確認、また、土地の評価があれば税理士への相談も十分価値があるでしょう。