遺産相続の遺留分とは?割合や計算方法・もらえない人を徹底解説

竹中啓倫税理士事務所
監修者
竹中啓倫税理士事務所 税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫
最終更新日:2024年09月11日
遺産相続の遺留分とは?割合や計算方法・もらえない人を徹底解説
この記事で解決できるお悩み
  • 遺留分が認められる人・認められない人は?
  • 遺留分の計算方法は?
  • 遺留分が請求できる財産は?

遺留分とは、法定相続人に最低限保障される遺産の取り分のことです。不公平な遺産分割の遺言が残されていても、一定範囲の法定相続人は遺留分を請求する権利があります。

この記事では遺留分の対象者や計算方法、請求方法などを解説します。記事を読めば、時効を迎える前に正しい手順で遺留分を請求できるでしょう。「自分は遺留分を請求できる?」とお悩みの方はぜひ参考にしてください。

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遺留分とは

遺留分とは、被相続人の法定相続人に最低限保障される遺産の取り分のことです。配偶者や子どもの相続権は、遺言によって奪うことはできません。

遺言に「財産をすべて愛人に相続させる」と記載されていても、被相続人の配偶者や子どもは遺留分を愛人に請求できます。

遺留分が認められている相続人

遺留分が認められる人は以下のとおりです。

  • 配偶者
  • 子どもや孫(直系卑属)
  • 親や祖父母(直系尊属)

被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められません。

遺留分は放棄可能

遺留分はあくまで権利のため、請求するかしないかは自由です。遺言に「財産をすべて愛人に相続させる」と記載されていても、配偶者が内容に納得していれば遺留分を請求する義務はありません。

遺留分の権利は、自ら手放すことも可能です。被相続人の死後に遺留分放棄をする場合は、遺留分を侵害した相続人に対し「遺留分を請求しない」と意思表示することで事足ります。

被相続人の生前に遺留分放棄をする場合は、家庭裁判所からの許可が必要なため、必ずしも放棄が認められるわけではありません。遺留分放棄の撤回は難しく、慎重に検討したうえでの申請が望まれます。

遺留分をもらえない人

遺留分を請求する権利がない人は以下のとおりです。

  • 被相続人の兄弟姉妹
  • 相続欠格者
  • 相続廃除者
  • 相続放棄した人

被相続人の兄弟姉妹

被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められません。兄弟姉妹が亡くなっている場合に相続権を継承する、甥姪も同様に遺留分は認められません。

兄弟姉妹の相続の詳細は以下を参考にしてください。

相続欠格者

相続欠格とは、相続に関する不正や犯罪などを働いた人の相続権が法的に失われる制度のことです。相続欠格の事由は、民法891条で以下のように定められています。

  • 故意に被相続人や他の相続人を死亡させた、あるいは死亡させようとして刑罰を受けた
  • 被相続人が殺害されたことを知っていながら告発・告訴しなかった
  • 詐欺や強迫によって被相続人による遺言書の作成・撤回・取消・変更を操作した、あるいはわざと妨げた

相続欠格事由に該当する人は、遺留分を含めた相続に関するすべての権利を失います。

相続廃除者

相続廃除とは、財産を相続したくない推定相続人(遺産を相続する予定の人)の相続権を、被相続人の意志にもとづいて剥奪できる制度です。廃除が認められる要件は、民法892条により以下のように定められています。

  • 被相続人に対する虐待や重大な侮辱がある場合
  • 推定相続人にその他の著しい非行がある場合

裁判所により相続廃除が認められた場合、廃除された相続人は遺留分を含むすべての相続権を失い、戸籍に廃除された旨が記載されます。

相続廃除の詳細は以下を参考にしてください。

4. 相続放棄した人

相続放棄をすると、その相続人は「最初から相続権がなかった」と見なされます。相続放棄は「すべての財産」の相続権を手放す手続きのため、遺留分も認められません。

相続を知った日から3カ月以内に家庭裁判所で手続きを行うと、相続放棄が認められます。1度手続きを行うと原則撤回できないため、相続放棄しても損にならないのか、失う遺留分の内容もふまえて慎重に判断しましょう。

遺留分の割合と計算方法

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遺留分は、全体で認められる「総体的遺留分」と、相続人1人ひとりの「個別的遺留分」の2段階で計算します。総体的遺留分は、誰が相続人になるのかによって以下のように定められています。

直系尊属(父母や祖父母)のみが相続人となる場合 遺産全体の3分の1
上記以外の場合 遺産全体の2分の1

個別的遺留分は、以下の計算式で算出します。

  • 個別的遺留分=総体的遺留分×該当する相続人の法定相続分

ケース別の遺留分の一覧は以下のとおりです。

  総体的遺留分(〇) 法定相続分(△) 個別的遺留分(〇×△)
配偶者のみ 2分の1 配偶者1 配偶者2分の1
配偶者と子 2分の1 ・配偶者2分の1
・子2分の1
・配偶者4分の1
・子4分の1
配偶者と父母 2分の1 ・配偶者3分の2
・父母3分の1
・配偶者6分の2
・父母6分の1
配偶者と兄弟姉妹 2分の1 ・配偶者1
・兄弟姉妹(権利なし)
配偶者2分の1
子のみ 2分の1 ・子1 子2分の1
父母のみ 3分の1 ・父母1 父母3分の1
兄弟姉妹のみ なし 権利なし

遺留分の計算例

遺産総額が5,000万円、被相続人の配偶者と子(長女と次女)が相続人となるケースで遺留分を算出してみましょう。

遺言で「配偶者に全財産を相続させる」と記載されていても長女と次女は納得できない場合、長女と次女の遺留分は以下のように算出します。

  • 5,000万円×2分の1(総体的遺留分)×2分の1(子の法定相続分)=1,250万円
  • 1,250万円÷2=625万円

したがって、長女と次女は配偶者(子の母)に対してそれぞれ625万円ずつ請求できます。

遺留分請求の対象となる3つの財産

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遺留分請求の対象となる財産は以下のとおりです。

  1. 遺贈する財産
  2. 死因贈与する財産
  3. 生前贈与する財産

仏壇や墓地など先祖をまつるために必要な財産(祭祀財産)は対象外となります。

1. 遺贈する財産

遺贈とは、遺言で指定した人へ財産を引き継ぐことです。不公平な遺言書によって遺留分が侵害された場合、法定相続人は侵害者に対して遺留分を請求できます。

2. 死因贈与する財産

死因贈与とは、贈与者(被相続人)が死亡したときに財産を渡す贈与契約のことです。財産をあげる側ともらう側の合意が必要になる点が遺贈と異なります。

死因贈与する財産によって遺留分が侵害された場合、法定相続人は贈与を受けた人に対して遺留分を請求できます。

3. 生前贈与する財産

遺留分の対象となる生前贈与は、基本的に「相続開始前1年間」に行われたものに限られます。贈与者(被相続人)と贈与を受けた人の双方が「贈与により法定相続人の遺留分を侵害する」と認識していた場合は、対象期間の定めはありません。

生前贈与が「特別受益」に該当する場合は、相続開始前10年以内の贈与が遺留分請求の対象となります。

特別受益とは?

特別受益とは、特定の法定相続人のみが被相続人から受けた利益のことです。「結婚のための贈与」や「生計の資本としての贈与」が該当します。

遺留分を請求する3つの方法

遺留分が侵害された際に相手にお金を請求する「遺留分侵害額請求」の方法は、以下の3種類があります。

  1. 協議により解決する
  2. 調停を申し立てる
  3. 訴訟を起こす

原則として、遺留分は不動産や株式「そのもの」ではなく「お金」で精算します。

1. 協議により解決する

遺留分侵害額請求を行う際は、原則として相手との話し合いから始めます。相続人同士で合意できたら「遺留分侵害額についての合意書」を作成のうえ、内容にしたがって支払いを受けましょう。

2. 調停を申し立てる

話し合いで合意できない場合は、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に「遺留分侵害額の請求調停」を申し立てます。相手が支払いを渋った場合、調停委員が間に入り調整を進めてくれます。

金額や支払い方法の合意ができれば調停成立となり、支払いを受けることが可能です。

3. 訴訟を起こす

調停で合意できない場合は、遺留分侵害額請求訴訟を行います。裁判所が遺産を評価のうえ遺留分を計算し、相手に支払いを命じます。

裁判で主張が認められるためには、法的な根拠と資料の提出が必要です。訴訟を起こす場合は事前に弁護士を選任しましょう。

遺留分を請求する際の注意点

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遺留分を請求する際は、以下の注意点を十分に認識したうえで行動しましょう。

遺留分を請求する権利には時効がある

遺留分の請求は「相続開始と遺留分侵害の事実」を知ってから1年以内に行わなければなりません。被相続人の死亡と不公平な遺産分割を知りながら1年間放置すると、遺留分を請求できなくなるため注意が必要です。

上記の事実を知らない場合でも、相続開始から10年が経過すると「除籍期間」により遺留分の請求権が失われます。

時効は「遺留分を請求した事実」があれば止められる

遺留分請求権の時効は、期限内に遺留分を請求した事実があれば止められます。請求方法の決まりはないものの、証拠を残すために「内容証明郵便」を使うのが有効です。

口頭やメール、普通郵便などで請求すると証拠が残らないため、相手に時効の成立を主張されるおそれがあります。

遺留分の請求には順序がある

遺留分侵害額請求の対象となるのは「遺言」「贈与」ですが、請求する順序は法律によって以下のように定められています。

  1. 遺言
  2. 死因贈与
  3. 生前贈与(日付の新しい順)

遺言によって遺産を引き継いだ相手に遺留分を請求し、それでも足りない場合は贈与を受けた相手に支払いを請求します。

まとめ

本記事では、遺留分の対象者や計算方法、請求方法などを解説しました。遺留分の請求には期限があるため「遺留分が侵害されているか否か」の調査は相続開始を知ったら早めに着手しましょう。

相続人同士の話し合いで円満に決着できないことが想定される場合は、早めに専門家へ相談することがリスクを最小限に抑えるポイントです。

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監修者のコメント
竹中啓倫税理士事務所
税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫

岐阜県出身。上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。

遺留分については、なんとなく思い出される事例としては、おじいさんが水商売の若いお姉さんに入れあげ、夢中になったおじいさんは、若いお姉さんに財産を全額譲る、という遺言状を書いてしまい、おじいさんが亡くなったのちに揉める、みたいな内容の話が、ドラマでも見たことあるような気がします。

おじいさんは、優しくしてくれて話し相手にもなってくれた若いお姉さんに財産を譲ろうと考えるのも分からなくはありませんし、若いお姉さんも財産目当てで優しくした訳ではないと思いますので、罪はないでしょう。

ただ、互いに助け合ってきたであろう、長年連れ添ってきた奥様や生活を共にしてきたご子息やご令嬢が、無一文で放り出されしまうのは、忍びないのではないでしょうか?一定額は、長年生活を共にしたことに、何らかの恩恵は与えるべきなのではないか?だから、遺留分があるのかな、と一人納得してしまっています。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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