人事評価制度の種類とは?目的や意義・注意点・多様化する人事評価の手法を解説

最終更新日:2023年08月18日
人事評価制度の種類とは?目的や意義・注意点・多様化する人事評価の手法を解説
この記事で解決できるお悩み
  • 人事評価制度の種類とは?
  • 人事評価制度の主な評価方法とは?
  • 人事評価制度の目的とは?

「人事評価制度を見直したい」とお悩みの人事担当者の方、必見です。適切な人事評価制度を導入することにより、会社の士気を高めることにつながります。人事・採用の目的や意義を再確認し、人事評価制度の方向性を決めましょう。

この記事では、人事評価制度の改善・採用を検討する人事担当者の方に向けて、広く運用されている人事評価制度の仕組み・種類を紹介します。失敗しない人事評価のポイントも解説するため、ぜひ参考にしてください。

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人事評価制度は2種類

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人事評価制度とは、業務における従業員のパフォーマンス、業績、能力などをある一定の基準で評価し、賃金の決定をはじめ人事上の重要な社員への待遇を決定するにあたり有効に用いることが出来る仕組み・システムのことです。

一般的に6カ月〜1年のスパンで定期的に実施され、従業員数300名以上の企業での採用率が90%に迫る、中堅企業や大企業での運用が定着しているシステムです。

日本で幅広く導入される人事評価制度は、以下の2つの種類で構成されています。内容は企業によって異なりますが、まずはそれぞれの要素を理解することが重要です。

  • 成果主義|成果・成績を軸とした評価制度
  • 等級主義|社員の能力・役割などを軸とした評価制度

成果主義|成果・成績を軸とした評価制度

成果主義は、社員の仕事の成果や成績などに応じて待遇を決める評価制度です。「等級主義」では年功序列で人件費が増加する問題がありますが「成果主義」では人件費の高騰を抑え適正化を図れます。

成果に比例して評価が高まるため「成果を出すために何をすればよいか」と社員自ら考える風土を醸成しやすいメリットもあります。

等級主義|社員の能力・役割などを軸とした評価制度

社員の能力・役割・職務内容に応じて待遇を決めるのが等級主義です。等級主義のなかにも「職能資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」の3種類あります。

日本で最も主流なのは「職能資格制度」といわれていました。社員に求める業務遂行能力を指標化し、その能力に応じて部署配置や人事評価、昇給などを決めます。

一定期間働けば上位資格に昇格しやすく、働き手としては安心感のある制度ですが、企業側は、年功序列になりがちで人件費が高騰するデメリットがあります。

人事評価制度の評価対象項目

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人事評価制度の根幹を成すのは、従業員のパフォーマンスをある一定の基準で評価する「評価制度」です。公平性の高い評価制度を全社的に共有していくためには、まず評価制度の対象となる「評価項目」を明らかにする必要があります。

評価項目として挙げられるのは、主に「業績評価」「情意評価」「能力評価」の3つです。それぞれを詳しく解説します。

  • 業績評価
  • 情意評価
  • 能力評価

業績評価

業績評価とは、従業員1人ひとりが課せられた目標に対してどれくらい達成できたのかを数値化して評価する定量評価のことです。具体的には、定められた期間の売上金額、契約数などの目標達成率を目安にする場合が多くなるでしょう。

業績だけを評価するのではなく、そこにいたるまでのプロセスも評価対象にする企業がほとんどです。この評価方法を「プロセス評価」と呼びます。定量的に判断できる業績評価と異なり、数値化の難しいプロセス評価は、定性評価で数値化していくのが一般的です。

情意評価

情意評価とは、勤務態度、仕事に対する意欲・行動など、主に従業員の行動を評価する定性評価のことです。仕事への意欲欠如は必ず行動に現れるものではありますが、もっとも評価者の主観が入りやすいものである点に注意が必要です。

近年では、評価ミスが起こらないようにするためにも、上司と部下の「1 on 1ミーティング」を頻繁に実施する企業もあります。

能力評価

能力評価とは、知識・スキル・資格など、従業員の持つ能力を評価するものです。評価の対象は、業務を遂行する際に求められる能力で業界・業種・企業により判断基準は異なります。等級に応じて必要な能力をあらかじめ設定し、その能力を満たしているかを評価するケースが一般的です。

数値化が容易な業績評価と異なり、判断が難しくなるのが能力評価ですが、保有する資格で評価する、証明テストなどを実施するという方法もあります。

人事評価制度の主な評価方法

人事評価制度の主な評価方法

評価項目としての「業績評価」「能力評価」「情意評価」を正当に評価するためには、対象となる評価項目に応じて適切な評価方法を選択することが肝心です。それぞれ解説します。

目標管理制度(MBO)

目標管理制度(Management By Objectives)とは、従業員1人ひとりもしくはチームごとに自主的目標を定め、会社と認識を共有しながら達成率を管理していく手法です。

目標管理制度のメリットは、企業目標との関連を見ながら自分自身の目標を設定できるため、結果的に全体目標を達成しやすい点です。

自主目標であるが故に容易に達成できてしまう目標、あるいは現実的でない目標を掲げてしまうリスクもあります。チーム・上司・部署などとの連携をしっかり取り、それぞれがバランスの取れた目標を設定できる環境構築が重要です。

重要業績評価指標(OKR)

重要業績評価指標(Objectives and Key Result)とは、1カ月〜3カ月の短いスパンで、従業員1人ひとりあるいはチームの目標達成率を管理していく手法です。

目標管理制度(MBO)との違い

達成率を定量的に評価するという点では目標管理制度と同じですが、MBOが比較的長いスパンで「目標達成率100%」を成功とするのに対し、OKRでは「目標達成率60〜70%」を成功とします。

グローバル企業や製品ライフサイクルの短い業界など、市場の変化に素早い対応が求められる企業で有効な人事評価制度がOKRです。企業全体の目標を設定したうえで、部署・チーム・個人などの順に数値を割り振っていくのもOKRの特徴といえます。

360°評価

多面評価・周囲評価ともいわれる「360°評価」とは、上司・同僚・部下あるいは他部署の従業員が評価者となり、多面的に1人の従業員を評価していく手法です。評価者の主観のみではなく、立場の異なる他者からの評価も加味できるため、評価に客観性が増すことがメリットです。たとえば、勤務態度や行動などの情意評価に最適でしょう。

普段評価する機会のない従業員が評価者となるため、主観とは異なったバイアスが評価に加わってしまう可能性もあります。絶対的な人事評価とするのではなく、主評価者が参考にする形であることが一般的です。

コンピテンシー評価制度

コンピテンシー評価とは、組織のなかでも特に高い業績を誇る人材の行動特性(コンピテンシー)を評価基準に設定し、従業員を評価する方法です。高い業績を上げている人材がどのような知識・スキル・行動パターン・資格を持つかをモデル化できるため、能力評価の手法として活かすのにも有効です。

目指すべき姿が明確になるため、人材育成にも役立ちます。配置の決定についてコンピテンシー評価での適正とスキルレベルを判断し、最適な部署や役職に配置を行います。

ノーレイティング

ノーレイティングとは、従来の人事評価制度のような等級評価(レイティング=Rating)をしない人事評価制度のことです。業績評価やプロセス評価は実施しますが等級・報酬評価とは結びつかず週・月単位あるいはプロジェクトごとの短いスパンで評価とフィードバックを繰り返します。

ノーレイティングのねらいは、上司・部下間でコミュニケーションを頻繁に取り、個人のパフォーマンス向上を促すことです。チームあるいは部署のパフォーマンスに応じて予算が配分され、上司が部下の評価に応じて報酬を割り振られます。

臨機応変な対応が求められる現代ビジネスでは、今後注目の高まる人事評価制度でしょう。

人事評価制度の3つの目的

人事評価の3つの目的

ミッション・ビジョンの実現

あらゆる企業が、社会的存在意義であるミッション・ビジョンを実現させることを最終目標としています。そのためには、経営資源をフル活用して効率的に業績を上げていかなければなりません。人事評価制度の1つめの目的は、重要な経営資源である「ヒト=従業員」とミッション・ビジョンを共有し、実現に向けて生産性を向上させていくことにあります。

従業員1人ひとりの能力・職種に応じ、ミッション・ビジョンを反映させた目標を課すことで、自社が向かうべき方向性を全社的に共有できます。生産性向上、業績アップにつなげるためにも、ミッション・ビジョンを取り入れた人事評価制度を設計することが重要です。

従業員の配置・待遇の決定

人事評価制度は、賃金・待遇を決定するだけではなく、適合性・スキルを基に適材適所へ人材を配置させるという目的があります。

人事評価制度では、評価基準の要素や評価の手法も重要なポイントでしょう。例として報酬制度というものがあります。

報酬制度とは

評価制度・等級制度を基に、従業員1人ひとりの報酬額を決定する制度です。評価制度・等級制度の結果を反映させるための制度でもあり、従業員のモチベーションを高めて人材育成・生産性向上に役立てるという人事評価制度の目的を達成するための制度でもあります。

従業員の育成

企業が継続的に成長していくためには、組織を構成する1人ひとりの従業員が成長していかなければなりません。会社とのエンゲージメント・モチベーションを高め、従業員の成長を促して育成していくことも人事評価制度の目的です。

そのためには、業績・成果が評価に結びつく公平性のある人事評価制度が必要です。従業員を育成していくため、成長を促すヒントとなる的確なフィードバックを与える仕組みも必要でしょう。

失敗しない人事評価制度の注意点

失敗しない人事評価制度の注意点

主要な目的である「ミッション・ビジョンの実現」「従業員の配置・待遇の決定」「従業員の育成」を達成するためには、押さえるべきポイントがあります。人事評価制度を設計・改善する前に、押さえておきましょう。

評価が明確であること

評価の対象となる項目、方法、時期、基準などが明確であること、かつ全社的に共有されていることがポイントです。明確な基準が定められた人事評価制度が全社的に共有されていれば、従業員が目標のために行動する際の指針となります。

評価基準が曖昧な人事評価制度では、従業員の不信感を招きます。ミッション・ビジョンの共有不足はもちろん、会社に対するエンゲージメントも低下します。

公平性があること

従業員のモチベーションを高め、人材育成・生産性向上を図るためにも、頑張れば評価につながる公平性を人事評価制度に持たせることが重要です。公平性を失った人事評価制度では、企業の成長に貢献するという従業員の意欲も失われてしまいます。

絶対評価であること

公平性を確保するための人事評価制度として、従業員1人ひとりに課した目標を基準とする「絶対評価」を採用することが重要です。

ほかの社員との兼ね合いを重視する「相対評価」を採用する企業も少なくありませんが、働き方が多様化する現代では従業員の賛同や納得感を得られにくいのが現実です。成果主義の考え方が広まるにつれ、絶対評価を採用する企業が主流になりつつあります。

フィードバックを適切におこなう

正しく評価するだけでは、人事評価制度の目的である「人材育成」を達成できません。「業務のどのような部分が評価されたのか」「何が足りなくて評価されなかったのか」を従業員に具体的なフィードバックをおこなうことが重要です。

評価の理由とともに、努力の方向性を指し示すフィードバックが必要です。

人事評価エラーを極力無くす

意図的、もしくは無意識のうちに評価者の感情や心理が反映され、正しいとはいえない評価を下してしまうことを「人事評価エラー」といいます。情意評価で特に発生しやすい人事評価エラーですが、代表的なものを紹介しましょう。

評価エラーの名称 概要
ハロー効果 学歴をはじめとする被評価者の優れた一面に影響され、ほかの面を実際よりも高く評価してしまうこと
中心化傾向 「嫌われたくない」というおそれから、全員の評価が中心値に集まってしまうこと
期末効果 直前にあったいいこと・悪いことに影響された評価をしてしまうこと
寛大化・厳格化 被評価者への私的な感情に左右され、全体的に甘い、もしくは厳しい評価をしてしまうこと
対比誤差 被評価者の能力・知識などを、評価者自身と比較して評価してしまうこと
論理誤差 1つの事実から推論して評価してしまうこと。結果と過程が異なるなど

人事評価エラーが発生する要因は、ほとんどの場合が「評価者の適正の問題」です。もちろん、評価者としての適正に問題がなくても「評価基準を正しく理解していない」「評価すること自体に経験がない」場合、正しい評価は下せません。公正な判断を下せる適正を持つ人物かを見極めたうえで、評価者をしっかりとトレーニングしていくことが重要です。

まとめ

この記事では、人事評価制度の目的や種類を解説しました。日本では「成果主義」と「等級主義」の2種類が広く導入されています。主な評価項目は「業績評価」「情意評価」「能力評価」です。評価が明確であること、公平であること、絶対評価であることを重要視しましょう。

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よくある質問とその回答

  • 人事評価と人事考課の違いは?

    「人事考課」は従業員の賃金・待遇に反映させるという意味で使われることが多いです。考課の過程が公開されないクローズドな人事考課は、よりオープンで幅広い目的を持つ人事評価の一部に含まれるという見方も可能ですが、一般的には同義語として使われます。企業ごとに制度・システムをどう呼ぶかという判断の違いだといえるでしょう。

  • 人事評価制度は変化し続けている?

    1990年代以降、年功序列重視から成果主義へとシフトさせる企業が増え、多くの企業で人事評価制度が定着してきました。

    2009年には国家公務員の「勤務評定制度」が「人事評価制度」へと変更されました。年功序列から能力・実績を重視する方向へと公務員の評価を転換させるためです。目的・意義は変わりなくても、人事評価の手法は変遷するものだということは覚えておくべきです。

監修者のコメント
Long Lasting Line (ロングラスティングライン)
代表者 福住 和久

実践戦略経営コンサルティングロング ロングラスティングライン代表。同志社大学商学部出身。大手米国系企業“P&Gジャパン”および“リーバイスジャパン”にて営業・マーケティング・戦略構築・組織構築の実務担当・責任者を経てフランスのフレグランスブランド “ディプティック ジャパン”にて日本法人社長。その後日本の企業アルファネット(株)にてCEO。それらの実践経験を基にビジネスコンサルティングファーム“ロング ラスティング ライン”を東京にて起業。経営・マーケティング・営業・評価制度・組織構築などの企業成長の要パートを専門に主に日本全国の中小企業・個人企業を支援。B to B およびB to B to Cモデルの企業を中心に支援。

評価制度は会社組織の根幹をなす大変重要な制度です。業績が継続して伸びている企業の社員には活気があり、その背景には必ず良い評価制度が存在します。

記事に書かれている様に評価が明確・公平・絶対評価であることを社員が認識していれば社員は自分の目標が立てれますし、その達成に迷いなく尽力できます。また結果を正しく評価されることから自分の貢献や存在価値を感じることが出来やりがいが出ます。

その結果モチベーションが高まり良い結果を出すために自助努力を行う自走組織が生まれます。当然のごとく企業は成長して行くことになります。

この様に人事評価制度は企業にとって非常に重要な制度であるにもかかわらず後回しにしている企業が多々あります。もしまだ人事評価制度を作っていないのであれば何を置いても大至急作ることが今後の企業の成長を左右すると認識してください。

実際、多くの転職支援サービス会社の調査によると社員が会社を”高く”評価する際に一番重要視するのは”公平な評価制度があること”です。これは”高い賃金”よりも重要視されています。

最後に忘れてはならない事が、評価者は部下を正しく評価すると言う仕事の優先順位を高く位置付けることです。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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