人事労務の仕事とは?役割・業務内容の紹介や仕事に向いている人の特徴を解説

社会保険労務士法人 ルーティング
監修者
最終更新日:2023年10月03日
人事労務の仕事とは?役割・業務内容の紹介や仕事に向いている人の特徴を解説
この記事で解決できるお悩み
  • 人事労務の違いとは?
  • 人事労務の仕事内容は?
  • 人事労務に向いている人の特徴は?

「人事」と「労務」は仕事内容が混同されがちです。どちらも社内の「ヒト」に関わる業務を行いますが、業務内容や求められる能力は異なります。

この記事では、人事と労務の仕事内容を把握して組織のパフォーマンスを上げたい経営者・人事担当の方に向けて、人事労務の違いを紹介します。

人事と労務の役割や業務内容、仕事のやりがいや向いている人の特徴も解説するため、ぜひ参考にしてください。

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人事労務の役割の違い

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人事と労務は担っている業務が違います。人事部が労務の役割を担うことも多いため、違いがあいまいな企業もあるでしょう。人事と労務の業務の違いは、大きく「従業員に直接関わる業務かどうか」です。

人事業務は採用活動・異動をともなう配属先の決定などで、一部の社員の仕事に直接関わります。 労務は入社退職手続き・給与計算などで、一部の社員を対象に実施されることが多く直接的に従業員の仕事と関わりがありません。

人事の役割

人事は、社員が最も力を発揮できる部署に配属し、会社の利益につなげる役割があります。

人事の仕事内容は、人材採用・人材育成・人材評価など、従業員と直接的にかかわる業務を行います。人事は社員に対して仕事を与えて育成する「コーチ」のような存在です。

労務の役割

労務の役割は、働きやすい職場環境づくり・社員のモチベーション向上・労働生産効率を高めるなど、企業の業績につなげる役割を果たすことです。

労務は、給与計算・入社退職手続き・社員健康管理など、従業員と間接的にかかわる業務を担います。労務は社員が働きやすい環境を整える「マネージャー」のような存在です。

人事の代表的な4つの仕事内容

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人事の代表的な仕事内容を4つ紹介します。

  • 採用活動
  • 社内研修
  • 人事評価制度
  • 配属先決定

以下からくわしく解説します。

採用活動

採用活動は新卒採用と中途採用があります。新卒採用は学生を対象としており、中途採用は社会人を対象とした活動です。

新卒採用は毎年定期的に行われます。企業の経営戦略とあわせて綿密な計画を立てることが必要です。中途採用は、入社後のミスマッチを防ぐための対策が重要となります。

採用活動は、企業PRを応募者へ効果的に行うことが肝心です。採用担当者は、企業説明会・面接などを行うことで高度なコミュニケーション能力が養われるでしょう。

社内研修

従業員への社内研修の準備・実施も人事の仕事です。社内研修は、従業員の啓発を推進・法令遵守を促すなど重要な役割をもちます。

社内研修の規模が大きくなるほど準備が大変になりますが、社内研修の知識・経験は別の社内セミナー開催・会議・委員会などの運営にも役立ちます。

人事評価制度

人事評価制度とは、従業員の生産性向上を促すための管理制度です。企業が設定する目標に対して、従業員の行動・結果からの貢献度を適切な基準で評価し、昇格・降格・役職・等級・報酬などに反映します。

企業によって評価方法は異なりますが、目標に対する達成度を数値化し、客観的に判断することが一般的です。評価結果は給与・賞与の額に反映されるため、公平な評価が必要になります。

目標・評価基準・評価・フィードバック方法を明確にすることは容易ではありません。評価制度を正しく運用することで、従業員のモチベーションが上がるため、企業全体の成長を促すことができます。

配属先決定

企業の人員計画に沿って従業員の配属先を決定することも人事の仕事です。新入社員の配属先・人事異動などがあります。

人事異動の実施は、企業の効率性・生産性を上げるために欠かせません。従業員の個別の事情によっては、不利益が生じることもあります。

労務の代表的な6つの仕事内容

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労務の代表的な仕事内容を6つ紹介します。

  • 給与計算
  • 入社・退職手続き
  • 労務トラブル対応
  • 就業規則作成
  • 社員健康管理
  • 福利厚生管理

以下から詳細を解説します。

給与計算

従業員への給与は、基本給・通勤手当・家族手当・諸手当・時間外手当などから、社会保険料・所得税・住民税などを控除して算出します。給与計算は、間違いのないように適切なチェックが必要なため、緻密さや正確さが求められます。

税金や社会保険料の算出の知識が必要になるため、税や保険への理解が深まるでしょう。

従業員分は、給与計算で保険料を計算し給与から控除するため、社会保険料の手続きを行う担当者は、従業員の個別の事情に対応できる能力が必要です。

入社・退職手続き

入社手続きは、以下の内容が挙げられます。

  • 雇用保険・健康保険・厚生年金の資格取得手続き
  • 雇用契約書作成
  • 健康診断実施・管理
  • 給与振込口座登録
  • 通勤経路確認
  • 法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)整備

退職手続きは、退職者ごとに個別に対応する必要があり、以下が挙げられます。

  • 雇用保険・健康保険・厚生年金の資格喪失手続き
  • 退職金計算
  • 退職証明書交付(従業員から求められた場合)

入社・退職の手続きには、法律や制度への知識と理解が必要です。

労務トラブル対応

労務に関する相談やトラブルの事例は以下のとおりです。

  • 労働時間や休暇に関するトラブル
  • 賃金に関するトラブル
  • ハラスメントに関するトラブル
  • 解雇に関するトラブル
  • 労災に関するトラブル

労務トラブルを起こさないための予防対策も労務担当者の仕事となります。雇用契約書や就業規則の整備・労災防止の徹底・証拠の改ざんや隠ぺいをしないなど、リスクマネジメントの能力も必要といえるでしょう。

就業規則作成

就業規則作成も労務の仕事で、常時10名以上の従業員を雇用する企業は就業規則の作成・届出の義務があります。就業規則を変更する際も届出が必要です。

就業規則や人事規程は、必ず定めなければならない事項として、労働基準法第89条には以下が列挙されています。

  • 始業終業時刻・休憩時間・休日・休暇・終業時転換に関する事項
  • 賃金の決定・計算および支払方法・賃金の締切に関する事項
  • 賃金の支払時期並びに昇給に関する事項
  • 退職に関する事項

参照:e-Gov法令検索|労働基準法

規程は企業によって異なりますが、そのほかには人事評価規程・育児介護休業規程・出張旅費規程・慶弔見舞金規程などがあります。

労使協定(企業と労働者の過半数を代表する従業員との間で締結される協定)の作成・届出も労務の仕事となります。

社員健康管理

事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して医師による健康診断を実施しなければなりません。常時50名以上の従業員を有する企業は、定期健康診断結果報告書の届出・衛生委員会の設置の義務が課されます。

従業員の健康管理は、毎年定期的に実施される定期健康診断・ストレスチェック・産業医による面接指導などです。労務はストレスチェックのシステム導入・産業医との面談フローなども担当します。

福利厚生管理

福利厚生とは、企業が従業員へ支給する非給与型の報酬のことです。

企業が法的に義務を負う法定福利厚生と、企業が独自に用意する法定外福利厚生があります。法定外福利費は、社宅の提供・育児支援・慶弔金の支出などが挙げられますが、従業員の多様なニーズに対応していくべきものだといえるでしょう。

福利厚生は、労働力の獲得・定着・モチベーションアップ・生産性の向上などが目的で、企業成長において重要な役割を担っています。

人事労務の仕事のやりがい

人事と労務の仕事は、企業の課題を解決して会社の成長・拡大に貢献しています。「組織づくり」に直接、影響を与えられることにやりがいを感じることができるでしょう。

求められる能力は「ヒト」に関わるさまざまなトラブル対応力です。センシティブな問題も多いため、対応の難易度が高いケースもあります。

以下から、人事と労務の仕事のやりがい・面白さ・難しさをくわしく解説します。

人事の仕事のやりがい・面白さ・難しさ

人事の仕事は、採用・異動・昇給など、従業員の人生に大きく影響する仕事です。従業員個人と深くかかわり、従業員の目標をサポートできることが、やりがい・面白さといえるでしょう。

人事の難しい点は、企業に大きくかかわり会社の方針が理解できていないと、正しい判断ができないところです。経営的な視点も必要とされるため、知識よりも経験が重要となる仕事になります。

労務の仕事のやりがい・面白さ・難しさ

労務は、法律を理解する必要があり、専門的な知識が必要です。自身で身につけた知識が、仕事で直接的に役立つところがやりがいになります。給与計算・勤怠管理などにおいては、細かく正確なオペレーションも必要なため、几帳面な方は面白さを感じられるでしょう。

難しさにおいては、労働トラブルの際、企業と従業員の間に立ってトラブルを解決しなければならないところです。労務は従業員のプライバシー情報を目にする機会も多いため、機密保持の意識や姿勢も必要でしょう。

人事労務に向いている人の特徴

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人事と労務に必要な資質を考えることで、適性の判断につながります。責任ある立場で、会社全体をよりよくする取り組みに関われることが、人事と労務のやりがいのひとつです。

以下から、人事と労務に向いている人の特徴をくわしく解説します。

人事に向いている人の特徴

人事は、知識やスキルがある方がいいですが、とくに明るい人が向いています。企業応募者とのかかわりが多いことが理由です。会社の顔となって、採用活動・面接などを行う機会が多いです。

たとえば、面接の内定者は、面接官の印象が悪ければ他企業で働くことを選んでしまう可能性があります。人事は、人間性が重視される大切な仕事といえるでしょう。

労務に向いている人の特徴

労務に向いている人の特徴は、コツコツと仕事を積み上げていくのが好きな人でしょう。たとえば、給与計算は締め日から支給日までの短い期間で、決められた時間の中で正確な計算をする必要があります。長時間、同じ作業を繰り返しできる人が向いているでしょう。

労働基準法・派遣法などは法律の改定もあるため、法改定やニュースに敏感になる必要があります。新しい知識を身につけることが好きな人も向いているでしょう。

人事と労務の担当者に必要なスキル

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人事と労務に必要なスキルにおいての情報収集を行うことで、より正確な業務対応を目指しましょう。以下から、人事と労務の担当者に必要なスキルをくわしく解説します。

人事に必要なスキル

人事は経営的な視点での知識が必要です。各部署の仕事内容の把握・会社の方向性などを理解して、幅広い知識が必要となります。

具体的には以下のスキルが必要です。

  • プレゼン力
  • コミュニケーション能力
  • スケジュール管理
  • モラル
  • ライティングスキル
  • 法律の知識

人事の業務を通じて、各スキルを高められます。人材育成・モチベーション管理などができる人事が求められているため、コミュニケーションを大切にしながら仕事を進めていく必要があります。

労務に必要なスキル

労務に必要な知識は、給与計算の仕方から社会保険に関する法律など、労務の法律をひととおり理解するスキルです。

具体的には以下のスキルが必要です。

  • 都度変化する法律の知識を取り入れ実務に対応する
  • 細やかな配慮・秘密厳守・法令がきちんと守れる

絶えず最新の情報を知っていないと、目の前の新しい事象に対処できません。柔軟かつ向学心が必要でしょう。

従業員に啓発活動・安全衛生研修などを行う場面もあるため、率先して法令遵守の意識を持ち、お手本となるような行動ができることが必須です。

人事と労務の担当者が必要な資格

人事労務管理では、人材のキャリア形成や労働基準法をはじめとする法律を扱う場面が多いです。資格を取得して、人事と労務のスペシャリストを目指すのもよいでしょう。

以下から、人事と労務の担当者が必要な資格をくわしく解説します。

人事に必要な資格

専門的な資格は、国家資格のキャリアコンサルタントがあります。2016年4月より創設された比較的新しい国家資格です。

人事担当者に必須ではありませんが、キャリア形成を支援する専門家の資格です。企業の人事職だけではなく、人材派遣会社や大学のキャリアセンターなど幅広い場所でニーズがあります。

労務に必要な資格

労務担当者に必須の資格ではないですが、スキルアップするために社会保険労務士があります。社会保険労務士は国家資格です。

合格率は毎年6%前後なため簡単な試験ではありませんが、取得することで人事・労務管理などの専門家として認められます。キャリアアップも期待できる資格です。

まとめ

人事労務の違いと、人事労務の役割・業務内容・仕事のやりがいや向いている人の特徴を解説しました。

人事と労務はどちらも「ヒト」に関わる仕事です。どちらも企業の財産である「人材」に関わる仕事であるため、企業成長の要だといえるでしょう。

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人事と労務の業務内容を把握して組織のパフォーマンスを上げたいと考えている経営者・人事担当の方は、ぜひ比較ビズを利用してください。

監修者のコメント
社会保険労務士法人 ルーティング
代表社員 阪井 亮太

社会保険労務士法人ルーティング代表社員阪井亮太。1988年三重県伊勢市出身。趣味は将棋。慶應義塾大学経済学部卒業。ベアリング製造工場の工場長、社労士法人、上場企業の労務担当などを経て2021年1月社会保険労務士として独立。新宿(新宿御苑駅徒歩3分)でスタートアップ企業を中心にを支援を行う。顧問契約40社、助成金申請実績90件、セミナー、研修会講師年間30回。

「人事」と「労務」は一緒くたにされがちですが全く異なるものです。人事は担当者の裁量が出しやすい分野である一方、労務はとても専門的で法律の知識が必須になります。給与計算・各種申請・就業規則の作成など法律の知識がないとどうしても対処できない場面が発生します。

また近年労使間のトラブルが急増しており、これは会社が知らず知らずのうちに法令違反を犯していることが大きな要因の1つです。例えばフルタイムの労働者ではなくても年次有給休暇は発生しますし、36協定を締結せずに時間外労働をさせるのは違法です。

こういった知識を事業主や社員が身に着けるには膨大な時間が必要です。そこで社会保険労務士にこういった業務を依頼することで、本業に影響を与えることなくトラブルを事前に防ぎ、労務的なリスクを軽減することができます。まずは社会保険労務士にご相談頂き何から始めればよいか、診断を依頼してみるのが良いでしょう。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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