相続税の納税義務者は誰になる?相続税を納めなくていいパターンや控除6つ

小西裕也税理士事務所
監修者
小西裕也税理士事務所 税理士 小西裕也
最終更新日:2023年07月11日
相続税の納税義務者は誰になる?相続税を納めなくていいパターンや控除6つ
この記事で解決できるお悩み
  • 相続税の納税義務者は誰になる?
  • 納税義務者でも相続税を納めなくていいパターンは?
  • 納税義務者が使える相続税の控除は?

「相続や贈与を受ける予定だが、納税義務者は誰になるのかわからない…」という方必見!

この記事では相続や贈与を受ける予定の方に向けて、 相続税の納税義務者は誰になるのかや相続税を納めなくていいパターンについて解説します。最後まで読めば、納税義務者が使える相続税の控除もわかります。

相続税を納税することは、法的な義務の履行であり、納税義務者の責任とされています。相続税に使える節税対策も紹介しているため、遺産相続や贈与に関与する家族の方はぜひ参考にしてください。

相続・事業承継対策の依頼にお困りではありませんか?

もしも今現在、

  • 相続・事業承継に詳しい専門家が見つからない
  • 税制度の変更に対応した対策がわからない
  • 税理士・公認会計士の費用相場がわからない

上記のようなお困りがありましたら、比較ビズへお気軽にご相談ください。比較ビズでは、複数の税理士・公認会計士に一括で見積もりができ、相場感や各社の特色を把握したうえで業者を選定できます。見積もりしたからといって、必ずしも契約する必要はありません。まずはお気軽にご利用ください。

相続・事業承継対策に対応できる業者を一覧から探す

相続税の納税義務者は誰になる?

名称未設定のデザイン - 2023-07-11T122018.828

相続税の納税義務者は、相続人となった方が納税の責任を負うことになります。つまり、相続した財産を受け継いだ人が相続税を納付する義務があります。

相続人には、直系の子供や配偶者、兄弟姉妹などが含まれるでしょう。法人が相続人となった場合は、法人が相続税を納付する責任があります。

相続人が海外在住の場合2つの課税パターンがある

通常、相続税は国内外を問わず、相続財産全体に課税されます。相続人が海外在住の場合、2つの課税パターンが存在します。

無制限納税義務者:納税の範囲は国内外の財産に適用

無制限納税義務者は、相続や遺贈により財産を受け継いだ人で、日本と海外の両方で相続税の納税義務がある個人のことです。具体的には、被相続人または相続人のいずれかが相続前10年以内に日本に住んでいる場合に該当します。

たとえば、アメリカに10年以上滞在している息子と日本に住んでいる父親のパターンを考えてみましょう。父親が日本で亡くなり、アメリカ在住している息子に相続がされた場合は、日本へ相続税を納税します。この場合は、被相続人(父親)が日本の住所を有しているため、日本の相続税が課税される仕組みです。

制限納税義務者:納税の範囲は日本国内の財産に限定

制限納税義務者は、相続や遺贈により財産を受け継いだ人で、日本国内に保有する財産に対して相続税の納税義務が生じる個人のことです。納税の対象となるのは日本の財産のみであり、海外の財産には相続税が課されません。

アメリカに10年以上滞在している日本人の息子と父親のパターンが、制限納税義務者の例です。アメリカで父親が亡くなったとしても、双方は10年以上日本に住所を有していません。アメリカで所有している父親の財産を息子が相続しても、日本へ相続税の納付義務はありません。日本に残っている父親の財産のみに課税されます。

納税義務者でも相続税を納めなくていいパターン2つ

ここからは、納税義務者でも相続税を納めなくていいパターンを2つ紹介します。

  1. 相続税の非課税枠内である場合
  2. 特例措置が適用される場合

1. 相続税の非課税枠内である場合

納税義務者であっても、相続税を納めなくていいパターンの1つは、相続税の非課税枠内に相続財産が収まる場合です。相続税には非課税枠があり、この枠内の相続財産は相続税の対象外となります。

60歳以上の直系尊属(祖父母や父母)が18歳以上の直系卑属(子供や孫)に対して贈与を行う場合、最大で2,500万円まで非課税となります。特別控除額を超える部分に課税されますが、税率は一律20%となり、贈与額に応じて税率が上昇する累進課税方式ではありません。

2. 特例措置が適用される場合

相続税には、特定の条件を満たす場合に特例が設けられており、該当すると相続税を免除されることがあります。

たとえば、農地や林地に関する特例措置です。農地や林地を相続した場合、その使用や継続的な経営が確保されている場合は、相続税の一部または全額が免除される仕組みです。農地や林地の保全や農業・林業の継続を促進するために設けられています。

具体的な状況に応じて該当する特例措置を確認し、手続きや条件を適切に満たす必要があります。

納税義務者が使える相続税の控除6つ

名称未設定のデザイン - 2023-07-11T134125.780

ここからは、納税義務者が使える相続税の控除を6つ解説します。

  1. 基礎控除
  2. 未成年控除
  3. 障害者控除
  4. 相次相続控除
  5. 配偶者控除
  6. 外国税額控除

1. 基礎控除

相続税は、遺産の総額(課税価格の合計額)から基礎控除額を差し引いた金額に課税されます。

遺産総額は、亡くなった人のプラスの財産(預貯金や土地など)からマイナスの財産(債務や葬儀費用など)を差し引いた金額です。基礎控除額は、遺産総額から差し引かれる金額であり、相続税の計算で使用される非課税枠となります。

基礎控除額の計算式は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。たとえば、夫が亡くなり、妻と子2人が残された場合、法定相続人は3人で基礎控除額は4,800万円となります。この場合、遺産総額が4,800万円以下であれば、相続税は免除され、申告も不要です。

2. 未成年控除

相続人が未成年の場合、相続税の金額を軽減できます。相続時の年齢から18歳を引いた数値に10万円を掛けた金額を、相続税から差し引けます。

未成年者控除は相続人が未成年の場合に限られるため、相続人の年齢に応じた計算が必要です。未成年者控除が受けられる人の要件は以下の3つです。

  • 財産の取得時に日本国内に住所があること
  • 財産の取得時に18歳未満であること
  • 財産を取得した人が法定相続人であること

3. 障害者控除

障害者控除は、相続により財産を受け継ぐ場合、相続税の負担を軽減するための控除です。障害者控除では、相続人の年齢に基づいて控除額を計算します。

障がい者自身の税金から控除額を差し引き、余った控除額があれば他の相続人でかつ扶養義務者の税金からも控除できます。一般障害者と特別障害者の場合で計算式が異なりますが、どちらも障がい者の年齢を用いて控除額を求めることができます。

  • 一般障害者の場合の計算式
    控除額=(85歳−相続開始時の年齢)×10万円
  • 特別障害者の場合の計算式
    控除額=(85歳−相続開始時の年齢)×20万円

4. 相次相続控除

相次相続控除は、短期間に相続が相次いで発生した場合に、相続税の負担を軽減するための控除です。相続が連続して発生すると、同一の財産に対して二重に相続税が課税される可能性があります。

前回の相続時に課税された相続税の一部を、今回の相続における相続税から控除する仕組みが設けられています。相次相続控除が受けられるのは、以下の要件に当てはまる場合です。

  • この控除の適用を受ける人が被相続人の相続人であること
  • 前回の相続開始から今回の相続の開始まで10年以内であること
  • 前回の相続で今回の相続の被相続人が相続財産を取得し、相続税が課税されていること

5. 配偶者控除

配偶者控除は、配偶者が相続する遺産に対して特定の金額まで非課税となる仕組みです。配偶者が相続した遺産のうち、課税対象となる遺産が1億6千万円以下であれば相続税は課税されません。

1億6千万円を超えても、配偶者の法定相続分までであれば相続税は課税されません。配偶者控除が受けられるのは、以下の要件に当てはまる場合です。

  • 戸籍上の配偶者であること
  • 相続税の申告期限までに遺産分割が完了していること
  • 相続税の申告書を税務署に提出すること

6. 外国税額控除

外国税額控除は、日本と外国の両方で相続税が課されている場合に、外国で支払った相続税に相当する金額を、日本の相続税から差し引く制度です。外国における相続税と日本の相続税の二重課税を避けるために設けられています。外国税額控除が受けられるのは、以下の要件に当てはまる場合です。

  • 相続(又は遺贈)により、日本国外の財産を相続(取得)した者
  • 日本国外の財産について、その外国において“相続税に相当する税”が課税された者

相続税に使える節税対策3つ

ここからは、相続税に使える節税対策を3つ紹介します。

  • 生前贈与を行う
  • 財産の評価方法を選択する
  • 生命保険に加入する

1. 生前贈与を行う

被相続人が生前に一定の財産を相続人に贈与することで、将来の相続財産を減らし税金負担を軽減できます。一定の条件を満たす場合に贈与税がかからない「無料贈与制度」があります。

贈与により財産を移転させることで、相続税の課税財産を減らせるでしょう。贈与には贈与税の他に贈与の制約や手続きがあるため、税理士や専門家の助言を受けることが重要です。

2. 財産の評価方法を選択する

相続財産の評価には、課税評価額と市場評価額のいずれかを選択可能です。
課税評価額は法律で定められた評価基準に基づいて算定されます。財産の評価額が一定の基準に従って決められ、節税効果が期待できる場合があります。

市場評価額は現実の市場価値を反映した評価方法です。市場評価額が課税評価額より低い場合、相続税の負担が軽減される可能性があります。市場評価額を選択する場合には、評価の根拠や証拠を明確にする必要があります。

どちらの評価方法を選択するかは、相続財産の性質や状況により異なるため、税理士や専門家へ相談すると安心です。

3. 生命保険に加入する

生命保険金は「500万円×法定相続人の数」が非課税になります。たとえば、法定相続人が2人いる場合、生命保険金が1,000万円までは相続税の対象外となります。

生命保険により受け取る保険金が非課税枠内に収まるよう計画することで、相続税負担を軽減できるでしょう。生命保険契約の内容や保険料の支払いは複雑なため、個別の状況に応じた専門家の助言を受けることが重要です。

まとめ

納税義務者は、相続税法に基づき相続税を支払う義務を負っています。相続税を納税することは、法的な義務の履行であり、納税義務者の責任です。

比較ビズには、相続税に関して相談できる税理士が数多く在籍しています。最新の税法変更や制度に通じており、個別の状況に基づいた最適なアドバイスを提供してくれるでしょう。比較ビズの利用は無料で比較検討が可能なため、ぜひ活用してみてください。

監修者のコメント
小西裕也税理士事務所
税理士 小西裕也

1990年生 大阪府出身 大阪大学経済学部卒業。個人事務所、200人規模の税理士法人で実務経験を積み、2021年に独立。「お客様との対話を大事にする」をモットーに、クラウド会計を活用し、顧客に合わせた節税策や資金繰り対策を積極的に提案。ZOOMを使ったオンライン顧問サービスを行い、クライアントは全国に。

相続税には、所得税と同じように、基礎控除額(「遺産に係る基礎控除額」=非課税枠)があるため、財産の金額が一定の金額以下であれば、相続税はかかりません。また、基礎控除額を超えて税金が計算されても、「税額控除」によって、相続税がゼロ円になることもあります。

税額控除のうち、最もメジャーなのは「配偶者の税額軽減」です。全財産が1億6,000万円以下で、それを配偶者が全部取得した場合には、相続税はゼロ円になるという制度です。この特例を適用するためには、「申告することが要件」となっていますので、相続税がゼロでも申告書を提出する必要があります。

基礎控除額の金額が従来より下がったため、相続税の申告を行う方が増えているのは事実ですが、制度を上手く利用することで、納税は回避できる場合もあります。まず税理士や弁護士などの専門家に相談してみましょう。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

相続・事業承継対策の依頼にお困りではありませんか?

もしも今現在、

  • 相続・事業承継に詳しい専門家が見つからない
  • 税制度の変更に対応した対策がわからない
  • 税理士・公認会計士の費用相場がわからない

上記のようなお困りがありましたら、比較ビズへお気軽にご相談ください。比較ビズでは、複数の税理士・公認会計士に一括で見積もりができ、相場感や各社の特色を把握したうえで業者を選定できます。見積もりしたからといって、必ずしも契約する必要はありません。まずはお気軽にご利用ください。

相続・事業承継対策に対応できる業者を一覧から探す

比較ビズでお仕事を受注したい方へ

資料請求はこちら