遺産相続の手続き期限を時系列で徹底解説!

突然やってくる相続ですが、意外と期限のある処理が多いものです。あらかじめ知っておかないとすべて期限切れで、選ぶ余地なしという事にもなりかねません。3日から5日以内にやることや、1週間以内にやること、1か月、3か月など順を追って片づけなくてはいけないことが多くあります。知っていると知らないでは、実際に相続が起きたときの対応の動き方が違います。簡単に時系列にまとめてみましたので参考にしてみてください。
遺産相続とは
馴染みがないのでそもそも、遺産相続のことをあまり知らない人も少なくないのではないでしょうか。遺産相続は、亡くなった方が所有していた財産を受け継ぐことを言いますが、何を受け継げるのか、誰が相続できるのか、相続できる順位、相続できる割合、など皆さんご存知でしょうか。相続手続きの期限の前に、まずはこの辺りからお話ししていきましょう。
受け継ぐことができる物
遺産相続の際に受け継ぐことができるものは、主に以下のようなものがあります。
- 所有していた財産や全ての権利義務
- 土地・建物の不動産
- 有価証券、現金、預貯金などの金銭
- 自動車等の動産
- 借金や負債、損害賠償責任などのマイナスの財産
基本的に、亡くなった方が所有していた不動産や動産、金銭など全てを受け継ぐことができますが、借金や債務などのすべてのマイナスの財産も受け継がなくてはいけません。
相続できる人間と順位
相続できる人間は基本的に配偶者、子、両親、兄弟姉妹などに限られます。また相続できる順位は、民法で以下のように定められています。
- 常相続人
配偶者
- 第一順位
子またはその代襲相続人
- 第二順位
直系尊属(父母、祖父母等)
- 第三順位
兄弟姉妹またはその代襲相続人
相続できる割合
相続できる順位が民法で定められているように、相続できる割合に関しても同様です。具体的には以下のような割合になります。
- 相続人が配偶者と子
配偶者1/2、子(全員)1/2
- 相続人が配偶者と親の場合
配偶者2/3、親1/3
- 相続人が配偶者と亡くなった人の兄弟姉妹の場合
配偶者3/4、兄弟姉妹(全員)1/4
基本的には上記のような割合になりますが、相続人全員の同意で違う割合にする場合や、遺言がある場合はこの割合に従う必要はありません。
また、公正証書の遺言書と自筆との違いや、遺言書の認められる書き方と無効になる書き方など、まとめた記事もありますので参考にしていただければと思います。
遺言書の効力はどこまで?認められる書き方と無効になる書き方
公正証書の遺言書とは?自筆との違いや料金相場をまとめてみた
遺産相続3日以内にすることは?
スケジュールの全体像としてはまず、相続が起こる=亡くなることなので一般的には、葬儀や手続きをすることが多く出てきます。3日以内ですることとしては、葬儀の準備(葬儀屋を決めておいてもいいでしょう。)や遺言の有無を確認するなどです。
翌日にお通夜、その翌日にお葬式がおこなわれますが、葬祭場の空き具合でも異なります。火葬場の空き状況、暦などを加味した結果、日程がどんどん遅くなることもあり得ますので、まずは抑えてしまうべきものを抑えることが大切です。また埋葬許可証ももらわないといけないなど、役所関連の手続きがありますが、葬儀屋によってはすべて代行してくれることもありますので、あらかじめ確認しておきましょう。
そのあとは相続の手続きチェックにかかります。相続は、相続をされる人が亡くなったその時点から開始されます。死亡を知った日から、相続手続きの期限が決められています。期限を過ぎると罰則規定があるものもありますので十分にご注意下さい。落ち着く暇もない状態で慌ただしく過ぎてゆきますので、ついうっかりという事も少なくないようです。
忘れていたりすると、思わぬ不利益を被ることにもなりかねません。相続は一生に何度もあるものではありません。生前対策である程度準備は可能ですが、不安なことだらけでしょう。しかし知識を持っておけばいざというときに慌てずに済みます。
遺産相続1週間以内にすることは?
亡くなった時の初めの手続きとして、7日以内に死亡届の提出を行うこと必要があります。医師の診断書と一緒に死亡届を提出し、期限は死亡を知った日を含めて7日以内ですので注意しましょう。バタバタしている間になりますので覚えておきましょう。
もしどうしても忙しいようなときには、代理で葬儀会社が代行してくれる場合もありますので、そのことも覚えておくといいでしょう。 届け先は、市区町村役場で故人の死亡地、本籍地、届出人の所在地のいずれかになります。死亡診断書を添付し、役所では死亡届の提出をすると死体埋葬許可証の交付があります。これも代理で葬儀屋にやってもらってもよいです。
市区町村の許可がなければ、火葬も埋葬も出来ないので注意してください。勝手に許可が下りる前に埋葬したら法律違反となります。
相続以外では、名義変更など相続の前にしなければならないことも出てきます。これらの期限は、7日から14日以内となっておりますので、優先順位をつけて行っていきましょう。
遺産相続1か月以内にすることは?
遺族は未支給年金を受け取ることが出来ます。年金の種類により少し変わりますがおおむね、死亡から10日から14日以内に手続きが必要となります。最寄りの年金事務所、または年金相談センターへ出向いてください。難しければ代理でも依頼してみましょう。
亡くなった方が、一定の条件を満たした場合の公的年金であれば、一定の範囲の遺族に対して遺族年金が支給されます。これも期限がありますので、年金の種類により確認をしましょう。保険では、故人が亡くなった場合は、保険証を返還し脱退手続きをしなければなりません。会社員や公務員の方は勤め先へ確認します。自営業、ご高齢の場合は死亡から14日以内に市区町村に健康保険を返還しなければなりません。
加入しているのが健康保険であれば、家族埋葬料を支給してくれる場合があります。加入の健康保険組合に確認をしてみましょう。世帯主が死亡した場合は、死亡から14日以内に世帯主変更届も必要になります。ローンがあっても、世帯主が自宅のローンに関する保険(団体保険など)に入っていればローンはすべて清算されます。
遺産相続半年以内にすることは?
「相続放棄」「限定承認」は「相続人が相続開始を知った時から3か月以内」に行わなければなりません。期限内に「相続放棄」「限定承認」を行わなかった場合は、単純承認したとみなされ、すべての相続財産を受け継ぐことになります。
たとえ負債があったとしても受け継がなければならず、相続拒否ができなくなるので注意しましょう。相続人との連絡が取れないなど、相続内容が決められないようなときには、期限を延ばすことも可能です。
また遺言がある場合なども、公正証書遺言以外なら家庭裁判所の検認が必要ですので注意しましょう。遺言書は勝手に開封してはいけません。開封しまったとしても、遺言書効力には影響はありませんが裁判所に事情説明をしないと5万円以下の罰金をとられることになります。
それ以外では、4か月以内には純確定申告が必要になったり、遺産分割が必要な場合には、10か月以内に終わらせなくてはいけません。公正証書以外の遺言書が見つかった場合、裁判所に提出し検認を受けます。 封印がある場合、勝手に開封してはいけません、相続人の立ち合いのもと裁判所にて開封する事になります
検認は遺言書の効力を決めるのではなく、遺言書の存在を証明するための手続きです。遺言書の内容が有効・無効かという決定はしませんので、間違えないようにしてください。
全体的な流れ
相続が発生してから相続放棄・限定承認、4ヶ月以内の準確定申告がありますので
期限に注意しましょう。「相続開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」に相続税の申告・納付をしなければなりません。
最後に相続の簡単な時系列をまとめて書きたいと思います。
- 1.死亡の確定、死亡届け(7日以内)
- 2.通夜と葬儀の準備(代行可能)
- 3.生命保険等の請求
- 4.健康保険や年金の手続き
- 5.遺言書の確認(このあたりまで1週間以内)
- 6.財産の内容把握
- 7.法要
- 7.3か月以内に相続放棄・限定承認
- 8.4か月以内に純確定申告
- 9.相続財産を確認調査する(代行可能。司法書士や行政書士など)
- 10.遺産分割協議
- 11.名義の変更
- 12.相続税申告及び納税(10カ月以内)
- 13.遺留分減殺請求(1年以内に行う)
- 14.分割財産の分割(3年以内に行う)
というスケジュールが基本です。これ以外でも職業や、入っている保険によって、 先にすることが出てくるかもしれません。
まとめ
遺産相続に関する各手続の締め切りや、全体的な流れは簡単に理解できましたでしょうか。あらかじめなんとなくイメージをして、葬儀屋はここに相談しよう、など前向きな準備を今からしておこう、という気持ちが大事になると思います。是非、ゆったりとしているときに骨組みをイメージしてみてください。相続が発生しまってからでは、何かとやることも多くバタバタしてしまいますので。

株式会社Writing work代表取締役。1986年熊本県荒尾市出身。文章能力検定準2級・相続診断士。結婚式場やBarでのマネジメント業務や印刷会社での営業アシスタントなどを経て、独立後は楽器カホン製作兼Webライターとして就活・転職記事や相続関連記事を月に50本程手掛ける。現在では数十名のライターやディレクター、クリエイターと共にメディア関連事業やWebコンサルティング、商品の製造・販売などを行っている。
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相続に関する手続きには、それぞれ期限が設けられています。身近な人が亡くなり、大きな悲しみや戸惑いの中で手続きを行うことは容易ではありません。
「相続放棄」「限定承認」は「相続人が相続開始を知った時から3か月以内」、「相続税の申告・納付」は「相続開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」など期限が決められています。また、「相続放棄」「限定承認」「相続税の申告・納付」を行うためには遺産を正確に調査しなければなりません。
これらの手続きは、相続人のその後の人生を左右する大きなものです。そのため、身近な人が亡くなった場合は、まずは相続の専門家に相談するようにしましょう。どうすれば亡くなった方の財産をしっかりと受け継ぐことができるのか、適切なアドバイスを貰うことが重要です。